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遅れてきたドラ1、阪神・馬場皐輔と葛西稔に通じる「東北人の粘り腰」

阪神・馬場皐輔ⒸSPAIA
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スアレス、岩崎優と「勝利の方程式」担う

阪神・馬場皐輔が7月14日のヤクルト戦でプロ初ホールドをマークした。3点リードの7回に登板し、山崎晃大朗、雄平、西田明央を3者凡退に打ち取り無失点。150キロ前後のストレートとフォーク、カットボールが冴えた。

それまではリードされている場面か大差で勝っている場面で登板していたが、守護神・藤川球児が登録抹消されたためロベルト・スアレスが代役に座り、左腕・岩崎優とともに「勝利の方程式」の一角に入った。ジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之で最強のリリーフ陣を形成した往年の「JFK」になぞらえて、早くも一部報道では馬場、岩崎、スアレスで「BIS」と命名されている。

馬場は2017年ドラフト1位で入団。宮城県で生まれ、仙台育英時代は春夏連続で甲子園に出場した。チームメートには阪神に同期入団した熊谷敬宥やソフトバンクの上林誠知がいた。仙台大では1年春からリーグ戦に登板し、通算15勝をマークしている。

2017年ドラフトは早稲田実の清宮幸太郎(現日本ハム)が目玉で、阪神が清宮と履正社・安田尚憲(現ロッテ)を抽選で外した後の「ハズレハズレ1位」だった。背番号は18。過去に池田親興、野田浩司、藪恵壹、杉山直久、二神一人ら本格派右腕が背負ってきた番号だ。

しかし、これまでドラ1としては物足りない成績に終わっていた。過去2年間で1軍では4試合に登板したのみで、勝ち星なし。DeNA・東克樹、中日・鈴木博志、巨人・鍬原拓也、オリックス・田嶋大樹ら他球団のドラフト1位投手に後れを取っていることは否めなかった。

フォーク多投して高い奪三振率

2019年は2軍でチーム最多イニングの102.1回を投げ、防御率3.17と地道に経験を積んだ。オフに結婚したことも発奮材料になっただろう。3年目にようやく飛躍のきっかけをつかんだ。

SPAIA集計では2020年の投球割合は約半分がフォーク。平均で140キロ近い、鋭く落ちるスプリットだ。特に左打者に対して多投しており、三振の約7割はフォークで奪っている。ヒートマップを見ても分かる通り、ボールが低めに集まっており、セットアッパーとして必要な高い奪三振率を誇る。

阪神で東北出身のドラ1右腕と言えば、サブマリンの葛西稔が思い浮かぶ。東北高時代は後にメジャーでも活躍した佐々木主浩の控え、法政大で通算18勝を挙げて野茂英雄のハズレ1位で阪神に入団したが、1年目は即戦力の期待を裏切って4試合の登板で0勝1敗だった。

他球団を見渡すと、近鉄・野茂や大洋・佐々木以外にも中日・与田剛(現監督)、広島・佐々岡真司(現監督)、ヤクルト・西村龍次、西武・潮崎哲也、ロッテ・小宮山悟、日本ハム・酒井光次郎ら即戦力ルーキーが大活躍した年だっただけに、葛西の惨状は余計に際立った。

しかし、2年目に8勝を挙げると、1996年には63試合に登板するなど中継ぎとしてフル回転。野村克也監督時代には、遠山―葛西―遠山の「スペシャルリレー」で重用され、通算36勝29セーブをマークした。

馬場の歩む道のりは葛西とダブる。15日のヤクルト戦では今季初めて失点したが、つまずいても決してあきらめない「東北人の粘り腰」で本領を発揮するのはこれからだろう。「勝利の方程式」が確立された時、阪神はきっと浮上しているはずだ。

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