昨季3勝9敗も……髙橋遥人の実力は?
ようやく、開幕を迎えようとしている2020年代のプロ野球。これから10年間の戦いを見据えたうえで、各チームの命運を握ることになりそうな選手に注目していきたい。今回は阪神の左腕・髙橋遥人を取り上げる。
17年ドラフト2位指名。ルーキーイヤーは4月にプロ初登板初勝利を挙げるも左肩のコンディション不良で6月中旬にチームを離れ、昨季も開幕には間に合わず。しかし5月に復帰すると、以降は先発ローテーションの一角を最後まで守り抜き、19試合、109.2投球回を投げて3勝9敗、防御率3.78、125奪三振の成績を残した。
勝敗でいえば6つの負け越し。特筆すべきところはないようにも思えるプロ2年目の成績だが、もう少し詳しくデータを分析していくと違った評価も見えてくる。
髙橋の投球の生命線はストレートだ。平均球速144.9キロという球速は飛びぬけて速いわけではないものの、ギリギリまで腕を見せないフォームから糸を引くような軌道で放たれるボールに打者は差し込まれる。昨季奪った三振のうち、このストレートが半分近く(46.4%)を占めた。
変化球は左打者にはスライダーとカットボール、右打者には亜細亜大学出身投手がよく投げる縦に鋭く落ちるタイプのツーシーム、いわゆる「亜細亜ボール」が主となる。この3球種はいずれも決め球として十分といえる空振り率10%以上(スライダー17.5%、カットボール%、ツーシーム13.5%)を記録しており、打者の左右を問わない三振を奪う能力の高さが髙橋の武器である。
セイバーメトリクスのデータではエース投手たちと互角
奪三振能力を測る指標として、対戦打者数に対して三振を奪った割合である「K%」に注目すると、髙橋の26.4%は80投球回以上を投げた投手で12球団5位。球界全体でもトップクラスの奪三振能力を持っていることがわかる。
与四球の割合である「BB%」の8%は28位。こちらは特別優秀というわけではないが、三振でアウトを稼ぐタイプの投手としては低く、K%からBB%を引いた「K-BB%」の18.4%は4位。巨人・山口俊(現ブルージェイズ)、オリックス・山本由伸、中日・大野雄大といった他球団のエース投手たちをしのぐ数字を残していた。
奪三振の多さと与四球の少なさは味方の守備力や運に左右されない投手の絶対的な能力を表すものであり、K-BB%でそれを測ることができる。もうひとつ、守る野手が関与できないのが本塁打だ。
この3つの要素から、防御率のような形式で(低いほど良い)より純粋な投手の能力を表す「FIP」を見ると、髙橋の2.81は3位。K-BB%でトップ3だったソフトバンク・千賀滉大、DeNA・今永昇太、日本ハム・有原航平よりも髙橋は被本塁打率が低く、彼らよりも優秀なFIPを記録している。
味方打線の援護に恵まれず、また12球団ワーストの102失策を記録した守備のまずさもあり、なかなか成績は伸びなかったが、投球内容としてはエース級と互角のものを見せていたのである。
若手先発陣のリーダーとして虎の将来を担う存在
阪神の昨季のチーム防御率3.46はリーグトップ。ただ、救援防御率2.70と圧倒的だったリリーフ陣に比べ、先発防御率3.90の先発陣は全体の底上げが必要になってくる。そこで西勇輝と並ぶローテーションの「柱」として、今後の先発陣の鍵を握るのが昨季抜群のポテンシャルを示した髙橋だ。
2019年のドラフトでは、1位で西純矢(創志学園)、3位で及川雅貴(横浜)と甲子園で活躍し知名度も抜群の高卒投手が2人阪神入り。望月惇志、才木浩人、浜地真澄といった20代前半の有望株もいる。だが、まだまだ将来性は未知数という中では、彼らを引っ張っていくリーダー的な役割も含めて、現在25歳の髙橋にチームの将来を託したい。
ここまで見てきたセイバーメトリクスのデータからは、虎のエースのみならず、球界を代表するエースとなれるような期待まで抱かせてくれる。まずは、3年目の今季どのようなステップアップを遂げるのか楽しみにしたい。
2020年プロ野球・阪神タイガース記事まとめ