アメリカでは2010年のドラフトを「リドラフト」
アメリカのメディアCBS SPORTSで「今から10年前となる2010年のドラフトをやりなおしたら?」といった趣旨の企画があった。いわゆるリドラフト(Redraft)である。
実際のドラフトではブライス・ハーパー(現フィリーズ)が全体1位でナショナルズに指名され、その後ジェイムス・タイヨン(パイレーツ)、マニー・マチャド(現パドレス)と指名されている。
一方、リドラフトでは全体1位でナショナルズが指名したのは、通算109勝の左腕・クリス・セール(現レッドソックス)。以下、マチャド、ハーパーと続いた。4位は実際には23番目に指名されたクリスチャン・イエリッチ(現ブリュワーズ)、そして5位には全体272番目の指名だったジェイコブ・デグローム(現メッツ)と現実とは異なる結果となっている。
NPBではどうだろうか。2010年のドラフトで指名された選手たちは、今年が10年目。すでに球界を代表する存在となった選手もいれば、ユニフォームを脱いだ選手もいる。
アメリカの企画のようにやり直したいところだが、NPBのドラフトはMLBと異なり1位が入札制だ。入札のないMLBとは勝手が違うため、少し趣旨を変えて、2010年のドラフトで指名された選手たちでチームを組んでみた。
投手は先発、中継ぎ、抑えと3人、そして野手は指名打者含めて9人を選出し、合計12人でチームを組んだ。もちろん、すべて筆者の独断と偏見である。
投手は千賀滉大が育成からトップスターへ
まずは投手から見ていきたい。この年のドラフトは斎藤佑樹(早稲田大→日本ハム1位)、大石達也(早稲田大→西武1位)の早大勢に注目が集まっていた。
1位入札では、大石に6球団、斎藤に4球団と合計10球団が2人に集中した。だが、プロ入り後の結果は厳しいものとなっている。大石はすでに現役を引退し、斎藤は9年間で通算15勝。複数球団競合のドラフト1位指名選手としての物足りなさは否めない。
そんななか、先発に選んだのは千賀滉大(蒲郡高→ソフトバンク育成4位)。育成契約からのスタートだったが、またたく間に成長し、いまや球界を代表する投手となった。2010年ドラフトでプロ入りした選手のなかでは、現時点におけるナンバーワン投手と言っても過言ではない。
中継ぎでは牧田和久(日本通運→西武2位/現楽天)、抑えでは中崎翔太(日南学園高→広島6位)を選出した。牧田はMLBでは思うような結果を残すことができなかったものの、NPBでは先発、中継ぎ、抑えと各役割で結果を残している。
中崎は昨シーズンこそ苦しんだが、2016年からの3連覇に大きく貢献した。現役6位の通算115セーブをマークし、このドラフトで指名された選手の中では最多となっている。
その他には大野雄大(佛教大→中日1位)、澤村拓一(中央大→巨人1位)、塩見貴洋(八戸大→楽天1位)らが、このドラフトでプロ入りを果たしている。
山田哲人と柳田悠岐が同じチームに!
一方の野手はポジションにばらつきがでている。捕手は千賀と同じく育成から這い上がってきた甲斐拓也(楊志館高→ソフトバンク育成6位)で文句なし。その他には磯村嘉孝(中京大中京高→広島5位)、西田明央(北照高→ヤクルト3位)らもいるが、レギュラーを勝ち取るには至っていない。
一塁は捕手で選考漏れとなった西田を選出。捕手登録ながら、一塁での起用もあり急造ではない。二塁は「Mr.トリプルスリー」こと山田哲人(履正社高→ヤクルト1位)で文句なし。ケチのつけようがないだろう。
三塁はレギュラークラスの選手が不在だった。そのため吉川大幾(PL学園高→中日2位/現巨人)を選出。遊撃には育成出身の牧原大成(城北高→ソフトバンク育成5位)を選んでいる。その他の内野手ではや森越祐人(名城大→中日4位/現西武)や三ツ俣大樹(修徳高→オリックス2位/現中日)らも指名を受けているが、レギュラークラスとは言い難い。
外野手そして指名打者は豪華な顔ぶれとなった。秋山翔吾(八戸大→西武3位/現レッズ)、後藤駿太(前橋商→オリックス1位)、西川遥輝(智弁和歌山高→日本ハム2位)、そして柳田悠岐(広島経済大→ソフトバンク2位)である。
秋山、柳田、西川の3人は球界でもトップクラス。そこに守備に定評のある後藤を加え、柳田を指名打者に回している。
実際のドラフト順位を見ると、1位の選手は山田と後藤の高校生2人のみ。しかし柳田や西川、牧田、秋山などチームの核になる選手は2位、3位で指名されている。また、育成ドラフトからも千賀ら3人を選んでいる。
新たにドラフトをやり直したとして、今回選出した12人がドラフト1位でそのまま指名されるわけではないだろう。しかし、ドラフト前の評価からプロ入り後の活躍を読み取ることはいかに難しいかよくわかる。
さて、このようにドラフト別でチームを組んでみると、世代別や出身地別のベストナインでは交わることのない柳田と山田が同じチームになる。これもひとつの楽しみ方だろう。