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プロ野球スカウトの苦悩…新型コロナでドラフト補強も不透明

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在宅勤務で情報収集とデータ整理の日々

新型コロナウイルスの影響でいまだ日程すら決まらないプロ野球。困惑しているのはグラウンドに立つ選手や首脳陣だけではない。オフのドラフトに向けて、本来なら精力的に動いているはずのスカウトたちも同じだ。

ある球団のスカウトは、ここ1カ月は在宅勤務となっており、データ整理や電話で情報収集する日々を送っている。例年なら選抜高校野球が終わり、大学野球の春季リーグや社会人野球が活発になる時期。学校のグラウンドや球場に足繁く通って、有望選手をチェックしたり、金の卵を発掘する機会が失われている。

「担当地区の高校や大学の監督に電話しても、そもそも練習をしていないので何も動きがない」と打ち明ける。高校3年生なら最後の夏に向けて伸びる選手も少なくないだけに、スカウトとしてもどかしい時間が続いている。

ドラフト指名人数も減る?

プロ野球は交流戦の中止が決まり、シーズン開幕は早くても6月。状況によってはさらに延期される可能性もある。通常より大幅に少ない試合数では査定が難しくなり、戦力の入れ替えも少なくなるかも知れない。

例年なら各球団10人前後の選手に戦力外通告し、その分をドラフトによる新人獲得やFA、トレードなどによって補強する。しかし、今季は試合数が減るため、FA取得見込みだった選手が登録日数不足でFA権を取得できなかったり、少ない試合数による査定では戦力外通告もしにくくなる可能性がある。それだけ「血の入れ替え」が難しくなるのだ。

ということは、必然的にドラフトで指名する人数も抑えることになる。球団によってバラつきはあるとはいえ、多い場合は育成も含めて10人以上指名するが、今年はドラフト3位で打ち切りなどの対応が取られれば、その分プロ入りの夢を叶える選手も減ってしまう。

実際、ある高校の監督は「4年制の大学よりは3年でプロに行ける社会人か、2年制の専門学校に行かせることも考える」と話しているという。教え子がドラフト上位指名確実なレベルの選手ならともかく、中位以下、あるいは指名されるか微妙なレベルの場合は、様々な状況を想定して準備しておく必要が出てくるだろう。

現状では素質の見極め難しい

プロに引っ張ってくるのが仕事のスカウトとしても、そういった状況は悩ましい限りだ。練習ができない以上、コンディションが落ちるのは当然として、体力や筋力、さらに技術面にまで影響を及ぼさないとも限らない。仮に練習が再開されても、ベストの状態に戻すには時間がかかる。そんな状況でプロの戦力になるか、伸びる素材かどうかを見極めるのは不可能に近い。

「スカウト活動は、一人の選手の人生を左右するもの。仮にコロナウイルスが終息したからと言って、動きの悪い選手を見て意味があるのかどうか。そんな状況で進路を決めさせてしまうことに葛藤がある」

昨年のドラフトでは、大船渡・佐々木朗希(現ロッテ)や星稜・奥川恭伸(現ヤクルト)らの指名で大いに話題になった。今年は違う意味でも注目度の高いドラフトとなりそうだ。

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