「投手大谷」8勝1敗、防御率2.79と安定
MLBエンゼルス・大谷翔平の活躍が止まらない。打者としてリーグ一番乗りの40発を放ち、出塁すれば19個の盗塁を決める。今季は長期離脱もなく、メジャー4年目にして、彼の「完全系」を見せ始めている。
野手としての活躍に目を奪われがちだが、今季の大谷は投手としてもチームに貢献し続けている。
8月18日(日本時間19日)のタイガース戦に先発すると、8回無四球1失点で、8つの三振を奪った。これで、投手としての今季成績は18試合に先発し8勝1敗、防御率2.79、120奪三振。100イニングしか投げていないため規定投球回には達していないが、防御率1位のランス・リンが2.20(ホワイトソックス)、同2位のロビー・レイ(ブルージェイズ)が2.79であることを考えても、先発投手としてリーグでも優秀な存在であることは間違いない。
今季の「投手」大谷の活躍の要因。それはデータを紐解くことで見えてくる。
新球「カットボール」でゴロが増加
今季、大谷が安定した投球を続けている背景の一つに、2021年シーズンからメジャーで本格的に投げ始めた「カットボール」がある。2019年、2020年シーズンは怪我の影響で、満足にピッチングが出来ていなかったが、デビューの年である2018年、大谷は主に4つのボールを投げていた。直球、スライダー、カーブ、スプリット。それぞれ、割合は46.4%、24.6%、6.6%、22.4%だった。
今季はカットボールが持ち球に加わり、直球(48.7%)、スライダー(18.0%)、カットボール(13.1%)、カーブ(3.9%)、スプリット(16.4%)と、投球に占める割合が大きく変化した。
カットボールの特長は、打者の手元で微妙にスライドする点。打者にとっては、捉えたと思ったボールが微妙に動き、芯を外れゴロになってしまうケースが多い。
大谷のカットボールは、非常に有効に見える。その証拠に、今季対戦打者のバットに当たった打球の内(プレーが完結した場合のみ)、ゴロが占める割合は43.2%と、2018年の39.2%から大きく上昇しているからだ。
逆にフライ率は下がっている(2018年:36.8%→2021年:35.0%)。フライが少ない故に、9イニングあたりの被本塁打数であるHR/9は、2018年の1.05から、今季0.72と大きく改善した。
与四球が減り、ストライクゾーンで勝負できるように
2021年シーズンの大谷が、安定した活躍を続けている理由の2つ目に、与四球が減ったことが挙げられる。9イニングの内、四球をいくつ与えたかを表す指標であるBB/9は、2018年の3.83から、今季は3.51と減少している。
与四球が減った結果、球数も減り、長いイニングを投げられるようになった。2018年の先発平均投球回は5.12だったが、2021年は5.55である。
特に、7月1日以降の登板にそれは顕著に表れている。6試合に先発し、与えた四球はわずか5。全ての試合で6イニング以上を投げ、5勝を挙げている。
また、四球数が減ったことから分かるように、2021年の大谷は、打者のストライクゾーンで勝負ができるようになった。全投球に占めるストライクの割合は、2018年の61.5%から2021年の62.6%と増えているのがその証拠だろう。
このように新球カットボールを持ち球に加えたことが、様々な相乗効果を生み、今季の安定した投球につながっているのだ。
WHIP1.06と安定感抜群
大谷はメジャー1年目に右肘の靭帯再建手術を受け、2019年は登板なし、2020年も2試合の登板に終わるなど、メジャーリーグの舞台において、投手での実績は打者ほど評価されていなかった。
しかし、今季の大谷は、規定投球回には届いていないものの、先発投手としてリーグでも屈指の存在になった。投球の安定感を示す指標のWHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched)は1.06と、リーグ1位のゲリット・コール(ヤンキース)の0.97に匹敵する。「100マイル」を投げる投手、という評価以上の活躍を今季は見せつけている。
「投手大谷」がこのまま中6日でローテーションを回ることになれば、あと6試合で先発登板が可能だ。何勝まで白星を伸ばすことができるか、注目が集まる。
※成績は8月24日現在
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