MVP争いは2人の一騎打ち
MLBア・リーグで2人の若者が躍動している。27歳のエンゼルス・大谷翔平と、22歳のブルージェイズ・ブラディミール・ゲレーロ・ジュニアだ。今季のリーグMVP争いは、ほぼこの二人の一騎打ちとなったと言っても過言ではない。
大谷はこれまで打率.272、リーグトップの40本塁打を放ち、88打点、18盗塁をマーク。投手としても安定感を増しており、18試合に登板して8勝1敗の防御率2.79、100イニングで120三振を奪っている。
ゲレーロJr.は打率.313、35本塁打、88打点とMLBを代表するスラッガーに成長した。打率は現在4位で本塁打は2位、打点は3位。OPS1.013は大谷に次ぐリーグ2位、出塁率.409はリーグトップで、相手ピッチャーにとっての脅威となっている。
広角に打ち分ける技術が特長
ゲレーロJr.の代名詞は、大谷に次ぐリーグ2位のホームラン数を記録していることから分かるように、その圧倒的なパワーにある。2019年5月11日のホワイトソックス戦で放った安打は、190キロを超える打球速度を記録するなどファンを驚かせてきた。
そのパワーだけでなく、特筆すべき点は22歳という若さで広角に打ち分ける技術を体得していることだ。その証拠に今シーズン35本塁打の内、14本がレフト、11本がセンター、10本がライトと、どの方向にもホームランを打っている。
同僚で29本塁打と大活躍中の二塁手、マーカス・セミエンは米ワシントン・ポスト紙の取材に対して、ゲレーロJr.の打撃をこう分析している。
「バットの軌道がとにかくぶれないね。ストレートも変化球も同じように打てるのが、彼の強みだよ」
ぶれないバットスイングが、広角にホームランを放つ打撃を可能にしているのだ。
かつてのトッププロスペクト、昨オフに約20キロの減量に成功
2019年シーズンにメジャー初出場を果たしたゲレーロJr.。そのスケールの大きさからトッププロスペクトと呼ばれ、期待されてきた。それもそのはず、ルーキーイヤーの2019年から123試合に出場すると、打率.273、15本塁打、69打点とルーキーとしては抜群の成績を残した。同シーズンではオールスターのホームランダービーにも出場して準優勝に輝くなどファンの心を鷲掴みにした。
昨年は60試合の短縮シーズンで全試合に出場し、打率.262、9本塁打、33打点とまずまずの結果を残したが、彼は満足していなかった。
オフには肉体改造に取り組み、約20キロの減量に成功。その結果、2021年シーズンが始まるや否や、3、4月は打率.350、7本塁打、20打点、OPSは1.153と大爆発。オフの取り組みが功を奏した。
2012年のカブレラ以来の三冠王なるか
現在119試合を消化したブルージェイズだが、ゲレーロJr.にはまだ首位打者、本塁打王、打点王の三冠を獲得するチャンスが十分に残されている。
首位打者争いのトップはマイケル・ブラントリー(アストロズ)が.324で、ゲレーロは.313。本塁打王の大谷翔平を5本差で追いかけ、打点トップのホセ・アブレイユ(ホワイトソックス)、ラファエル・デバース(レッドソックス)との差はわずかに1だ。
残り43試合で彼らの成績を上回ることができれば、2012年にリーグMVPに輝いたミゲル・カブレラ(タイガース)以来の三冠王となる。22歳の三冠王となると、1942年のテッド・ウィリアムス(レッドソックス)の24歳を更新するMLB最年少記録となる。
かつてのトッププロスペクトであるゲレーロJr.が大ブレイクを果たした今季。大谷翔平とのMVP争いも含め、最後まで目が離せそうにない。
※成績は8月20日現在
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