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大谷翔平はMLB史上6度目の快挙なるか、単打より本塁打が多かった日米の打者は?

2021 7/1 06:00広尾晃
エンゼルスの大谷翔平Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

単打25本、本塁打は28本

エンゼルス・大谷翔平の猛打が止まらない。6月29日から始まったヤンキース戦では2試合で3本塁打。両リーグ最多の28本塁打とした。圧倒的な打棒に全米が驚愕している。

大谷の6月30日時点での安打は74本で、内訳は単打25本、二塁打17本、三塁打4本、本塁打28本。本塁打の方がシングルヒットよりも多い。安打数に占める本塁打数は37.8%、長打率は.688に達している。

これがどれだけすごい数字なのか、過去の日米のデータから比較してみよう。

1989年のデストラーデは31単打、32本塁打

まずはNPBから。下表はNPBで2020年までにシーズン20本塁打以上を記録した打者の、安打数に占める本塁打数の比率(HR/H)15傑だ。

日本の安打数に占める本塁打の比率15傑


シーズン20本塁打以上は昨年までに1434回記録されている。その中でHR/Hが一番高かったのは、1987年広島のランス(リック・ランセロッティ)の44.32%だ。ランスはこの年、本塁打王になっている。以下7位までが外国人選手だ。

日本人選手では1974年、阪神の田淵幸一が8位で最高。次いで1969年の阪急・矢野清だ。矢野は1960年代に阪急で活躍した外野手だが、一度も規定打席に到達したことはなく通算本塁打は64本に過ぎない。1969年は打率.194に終わり64本しか安打を打っていないが、このうち25本が本塁打。比率では王貞治を上回っていた。

2013年にヤクルトのヴラディミール・バレンティンは王貞治らが保持していたシーズン55本塁打のNPB記録を抜く60本塁打を記録したが、このときのHR/Hは、史上5位の41.38%だった。

NPBの本拠地球場は1988年に開場した東京ドームを皮切りに21世紀には両翼100m中堅120mがスタンダードサイズになった。それ以前は両翼90m中堅115mが標準だった。上位5位までに並ぶのはバレンティンを除いて「小さな球場」での記録だ。

長打率は、2013年のバレンティンの.779が史上1位、続いて1986年の阪神ランディ・バースの.777となっている。ただ長打率には「打率」の要素が占める比率が大きい。1986年のバースは三冠王であり、首位打者だった。長打率は打率も高くないと上がらないのだ。

単打数と本塁打数の記録では、NPBのシーズン20本塁打以上の打者で本塁打の方が単打よりも多かったのは、HR/Hでは2位の1989年の西武オレステス・デストラーデだけだ。この年32本塁打で31単打だった。次いでHR/H1位のランスの39本塁打、39単打で同数となっている。

安打に占める本塁打の割合は2001年のバリー・ボンズが1位

MLBではどうだろうか?1900年以降でシーズン20本塁打を記録した選手のHR/H15傑、参考までに今年の大谷翔平の記録(6月30日まで)も載せる。

メジャーの安打数に占める本塁打の比率15傑


20世紀以降昨年まで、20本塁打は3750例記録されている。

1位はMLB記録の73本塁打を記録した2001年のバリー・ボンズ。HR/Hは46.8%に達している。さらに2位から6位までのあいだにマーク・マグワイアが4回出てくる。

マグワイアとボンズは20世紀末から21世紀初頭の「本塁打ブーム」をけん引した打者だ。ただ残念なことに2人とも後に薬物使用が発覚している。

4位と7位には、レンジャーズの現役外野手、ジョーイ・ギャロが入っている。また9位には、大谷が2本塁打を打った6月30日の試合にも出場していたルーク・ボイトの昨年の記録が入っている。

このことからもわかるように、現在は「フライボール革命」によって、マグワイアやボンズの時代以来の「本塁打ブーム」が起こっているのだ。大谷翔平もその担い手の一人と言えよう。

なおベーブ・ルースのHR/Hは、1927年の31.3%(192安打60本塁打)が最高。あまり知られていないがルースの生涯打率は.342もあり、安打もたくさん打っていたのだ。

そのルースの本塁打記録を破った1961年のヤンキース、ロジャー・マリスがHR/Hでは38.4%で8位に入っている。

単打<本塁打はボンズ、マグワイア、ギャロのみ

単打よりも本塁打が多かった例は、2001年のボンズの+19(73本塁打49単打)を筆頭に、1998年+9(70本塁打61単打)、1999年+7(65本塁打58単打)のマグワイア、2017年+9(41本塁打32単打)、2018年+2(40本塁打38単打)のギャロの5例がある。大谷は現時点で+3(28本塁打25単打)で、記録すれば史上6例目になる。

MLBの長打率史上1位は、MLB公式サイトによると2001年のバリー・ボンズの.863、続いて1920年ベーブ・ルースの.847となっている。

前述のように長打率は打率の占める要素が大きい。打率が.270代の大谷翔平の数字はそれほど上がらない。それでも.688はアメリカン・リーグ1位、MLB全体でもパドレスのタティスJrの.692に次ぐ2位だ。

記録で見てもわかるように、今年の打者・大谷翔平は歴史的な猛打をふるっている。

そして驚くのは、大谷は投手としてもリーグ屈指の奪三振率を記録し、規定投球回には未達だがトップクラスの成績を挙げていることだ。その活躍ぶりにはあきれるしかない。

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