打率よりも得点との相関関係が高いOPS
2000年代前半に資金力が乏しいにもかかわらず高い勝率を誇ったアスレチックス。躍進の要因はそれまであまり評価されていなかったが、実は優秀な選手を低年俸で獲得することにあった。
その様子を描いた「マネーボール」で脚光を浴びたセイバーメトリクスは、野球を統計学の観点から分析する手法だ。日本でも徐々に浸透しつつあり、代表的な指標であるOPS(On–base plus slugging)などは目にする機会も増えている。
OPSは出塁率+長打力で計算され、目安は下記の通りとなっている。
.800が強打者
.900がリーグを代表する選手
1.000を超えればMVP級
この指標の利点は計算が簡単な割に得点との相関関係が非常に高いこと。打率で比較するよりもOPSを基準に打線を組んだ方が得点に結びつきやすい。
OPSセ1位は鈴木誠也、パ1位は森友哉
アマチュアでもこの考え方を導入しているチームがある。この秋勝ち点2を奪い史上初の4位となった京都大学はOPSの高い選手を上位に固め、打順を変更する際にも打率よりもOPSの数値を参考にしていた。
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今季のNPBでセ・リーグトップは鈴木(広島)の1.018、パ・リーグトップは森(西武)の.959。歴代1位は1974年に王(元巨人)が記録した1.293。世界の王は通算記録でさえ1.080と驚異の1.000超え、本塁打記録だけでなくおそらく抜かれることはない金字塔を打ち立てている。
防御率は結果を、WHIPは内容を示す
打者で最も有名な指標がOPSなら投手指標で有名なものがWHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched)だ。これは(被安打+与四球)÷投球回で計算され、1イニング当たり何人の走者を出したかを示す。目安は下記の通り。
1.2を切ればチームのエース級
1.0を切れば球界を代表するエース級
防御率が1試合で何点取られたかの結果を表すのに対し、WHIPは投球の安定感、内容を表す。今季は大野(中日)が0.98、有原(日本ハム)が0.92、山本(オリックス)が0.96と1.0を切っている。
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ダルビッシュ(カブス)は日本ハムでの最後の5年間に1点代の防御率だけでなくWHIPも0.83、0.90、0.90、1.01、0.83という圧倒的な数字を残し海を渡った。相手からすれば手も足も出ないといった感じだろう。
防御率は良いのにWHIPの高い投手はベンチやファンをハラハラさせることが多く、成績の割には信頼感を得られていない。劇場型と呼ばれる投手を見分けることもできる。
打率や防御率だけでなくセイバーメトリクスを知ればより客観的な評価、見方ができそうだ。