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西武、広島と大阪桐蔭に共通点。最強打線に「恐怖の7番打者」あり

2018 8/31 10:45青木スラッガー
バッター,ⒸShutterstock.com
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7番打者が6試合連続本塁打する西武「山賊打線」

プロ野球で両リーグをけん引する西武、広島、そして春夏連覇を達成した大阪桐蔭。このプロ野球2チームと大阪桐蔭には、相手投手から嫌がられるある共通点がある。それは、下位打線にいながらも主軸級の打力を持つ「恐怖の7番打者」の存在だ。

後半戦スタートから下位を突き放しはじめた西武は、若手の躍進で7番出場が多かった「元4番」の活躍が独走を加速させた。後半戦、猛烈なペースで本塁打を量産しているベテラン中村剛也だ。

今シーズンの中村は序盤不振でなかなか出場機会がなかった。しかし夏場から復調し、8月頭にはプロ野球記録へあと「1」に迫る6戦連続本塁打を放った。結果、8月は月間11本塁打(26日終了時点)と大爆発し、月間のOPS1.173(同)はクリーンナップどころか球界最強打者級。シーズン佳境を迎えたところ、中村の復活で最強の「山賊打線」がもう一段階パワーアップしたといえるだろう。

後半戦から打ちまくった中村は、8月25日ソフトバンク戦でようやく6番昇格となった。それでも、7番に入るのは、14本塁打の森友哉や、9本塁打ながら本塁打王の実績があるメヒア。変わらず、投手にプレッシャーのかかる強打者が下位まで続く。

広島も會澤・西川ら7番打者が強力

セ・リーグを打力でぶっちぎる広島も、1番から下位まで好打者がズラリと並ぶ。今シーズンはタナキクマルに鈴木誠也を加え、上位打線の後を打つ松山竜平やバティスタの活躍も目覚ましい。

相手投手は彼ら6番打者までを何とか片付け、一息つきたいところで迎える7番。広島の場合は固定された選手がいないものの、最近は主に捕手の會澤翼や売り出し中の西川龍馬が務め、好打を見せている。

同ポジションにライバルが多く、規定打席には届いていない會澤と西川。しかし、會澤は打率.325・12本塁打・35打点・OPS.942、西川は打率.309・5本塁打・36打点・OPS.819と、両者の打撃成績は上位打線を任されてもおかしくない。

さらに最近、降格という形になるが不動の1番打者だった田中も7番に入ることが多くなった。安定した出塁率と走力を持ち、ずっとリードオフマンを務めていた田中の存在は、投手に大きなプレッシャーを与えるだろう。彼らのような打者が7番を打っているころからも、広島の厚い選手層と強さが垣間見れる。

大阪桐蔭はドラフト候補が7番を打っていた

戦いの舞台は違うが、今年の高校野球を席捲した大阪桐蔭も7番打者の重要性を認識させてくれた。7番を打ったのは、プロ注目の二塁手・山田健太だ。

もともと山田は、1年秋で4番を任されたこともあるチーム屈指の長距離砲。中川卓也、藤原恭大、根尾昂のクリーンナップトリオに次ぐ打者として、1・2番、6番あたりを打たせるのがセオリーのように思えるが、甲子園100回大会では「7番山田」が見事にはまっていた。

接戦となった作新学院戦(1回戦)は、2回に先制犠牲フライ。プロ注目左腕・山田龍聖を前に手こずりを見せた高岡商業戦(3回戦)は1点リードの7回、試合を決定づけるタイムリー二塁打。先制を許した済美戦(準決勝)は4回に反撃の狼煙となる同点タイムリーと、僅差の状況で流れを変える一打を何度も放った。

今夏の大阪桐蔭「最大の危機」を救ったのも山田だった。北大阪大会準決勝の履正社戦。相手はこの試合、主将の浜内太陽を公式戦初登板させる一か八かの奇策を打ってきた。データがない浜内に大阪桐蔭打線は苦戦し、1点リードを許し9回の攻撃を迎える。そこで二死から4連続四球でなんとか同点に追いついた後、山田が2点タイムリーを放ち試合を決めた。

「恐怖の7番打者」が打線全体に与える影響

大阪桐蔭と甲子園決勝を戦った金足農業は、エース吉田輝星が「ギアチェンジ投法」でチームを決勝まで導いた。吉田ほど露骨にメリハリをつける投手は少ないが、先発投手としては多少力を抜き、ペース配分を考えたいのが「7番打者」を含む下位打線だ。それをさせないような強打者がいるとマークが分散し、打順上位陣もより力を発揮しやすくなる。

チーム打線全体にとって「恐怖の7番打者」がいるということは、打者が得点を挙げること以上に大きな意味を持つ。勿論、西武「浅村・山川」と広島「丸・鈴木」、そして大阪桐蔭「藤原・根尾」は、「最強」といえる上位打線を誇るチームだが、彼らの猛打も下位打線が投手に与えるプレッシャーがあってこそなのかもしれない。

甲子園では、圧倒的な強さで頂点まで駆け抜けた大阪桐蔭。プロ野球で、西武、広島は最後まで首位キープとなるか。主役の上位打線陣だけでなく、終盤戦も「恐怖の7番打者」の活躍に注目していきたい。