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泉谷駿介はハードル、走幅跳、リレーで活躍、マルチアスリートは日本で広まるか

2021 9/24 06:00富田明未
泉谷駿介,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

東京五輪出場の泉谷がインカレで有終の美

第90回日本学生陸上競技対校選手権大会が9月17日から19日に開催され、男子110mハードルの泉谷駿介(順天堂大学)が13秒29の大会新記録で優勝。大学生として最後の日本インカレで有終の美を飾った。

泉谷は東京オリンピックの男子110mハードルで準決勝に進出。決勝進出までわずか0.03秒だったことで注目を集めた選手だ。6月27日に行われた第105回日本陸上競技選手権大会では、13秒06の日本新記録を樹立している。泉谷が今年出場した主なレースを振り返ってみよう。

泉谷駿介の2021年主要大会成績


日本記録を出した後も13秒2台をキープしていることから、確実に実力を伸ばしていることが分かる。オリンピックの舞台を経験した泉谷への期待値は計り知れない。

ハードルだけでなく走幅跳、リレーまでマルチに活躍

泉谷の凄さはハードルだけにとどまらない。日本インカレ初日には走り幅跳びに出場し、7m73で3位。元々、2020年7月に開催された第83回東京陸上競技選手権大会で自己ベストタイの7m92の大会新記録で優勝するなどマルチな活躍を見せている。

走り幅跳びの1回目で7m70を出した後、3回目から5回目までをパスし、競技が行われている間に4×100mリレーの予選に出場。アンカーとして1位でフィニッシュして決勝進出を決めると、走り幅跳びに戻り最終6回目で7m73をマークした。

4×100mリレーの決勝でもアンカーとしてチームを引っ張り、見事3位でゴール。泉谷の活躍もあり、順天堂大学の男子は86点を獲得し、2年ぶり29回目の総合優勝を果たした。

泉谷は自身のTwitterアカウントで、以下のようなコメントを残している。

「最後の全カレ、幅、4×100mR、110mh、大会新記録 順大総合優勝で終わり!3日間動きっぱなしだったので混成より疲労感ありました。笑 足に不安もあったけど、周りの人のサポートで何とか持ちました。開催して下さりありがとうございました!最後のインカレはとても最高の思い出になりました」

泉谷は元々、三段跳をメイン種目にして順天堂大学に入学したが、走幅跳とハードルの練習にも並行して取り組み、見事実力を開花させた。

田中希実を筆頭にマルチアスリートへの期待が高まる

泉谷のように複数の種目に挑戦するマルチアスリートといえば、同じく東京オリンピックに出場した田中希実をイメージする人が多いのではないだろうか。これまで、種目を一つに絞るのが主流だった中で、マルチアスリートの活躍には目新しさを感じる。

田中は1500mと5000mをメイン種目にしながら、800m、3000m、10000m、クロスカントリーの合計6種目にチャレンジするマルチアスリートだ。東京オリンピックでは1500mと5000mの代表に選出された。

オリンピックの女子1500mに日本人が出場したのは田中と中距離選手の卜部蘭が初。1500mでは3分59秒19の日本新記録で決勝に進出し、8位に入賞する快挙を達成した。

田中の父でコーチを務める田中健智によると、日本陸上界の歴史を変えた田中の強さは、種目を絞らない練習スタイルによるものだという。

泉谷がオリンピックの110mハードルで活躍しているのも、短距離走で鍛えられたスピードや走り幅跳び、三段跳で培ったバネの強さが関係しているのではないだろうか。

日本の学校は部活を一つに絞り、専門性を高めることを是とする風潮がある。しかし、アメリカの学校では複数の部活を掛け持ちすることは決して珍しくない。

陸上の田中や泉谷だけでなく、野球ではピッチャー、及びバッターとして活躍する大谷翔平が「二刀流」として全米から注目を集めている。マルチな活躍を見せるトップアスリートの影響もあり、一つの競技に絞らない練習スタイルは将来的に普及しそうだ。

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