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混戦の陸上男子100メートル選考方法、東京五輪代表に近いのは誰だ?

2021 5/21 06:00鰐淵恭市
サニブラウン・ハキームと桐生祥秀Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

参加標準記録10秒05の突破が最優先

東京五輪開幕まで2カ月あまり。各競技の日本代表選考が進む中、注目を集めているのが、陸上の男子100メートルだ。夏季五輪の花形種目の代表は誰になるのか。選考方法と代表入りに挑む選手の「現在位置」をまとめた。

男子100メートルに限らず、陸上競技の種目ごとのエントリー人数は各国3人まで。ただ、無条件に3人出られるというわけではない。選手は国内の選考を勝ち抜く前に、五輪に参加する権利を得なければならない。これには、超えなければならないハードルが大きく分けて二つある。

一つは五輪参加標準記録。この記録を超えれば五輪の参加資格が得られる。最優先の参加基準になる。男子100メートルで言えば、10秒05になる。詳細は後述するが、5月20日時点で、日本の突破者は3人だ。

二つ目は各大会の順位やタイムで得られるポイントから算出されるワールドランキングになる。参加標準記録を突破していなくても、ランキング上位者には参加資格が得られることになる。

ただし、何位の選手までに資格が与えられるかは、参加標準記録突破者が五輪に何人エントリーするかに左右される。これは、種目ごとに出場できる選手数が決まっているからだ。だから、優先順位は参加標準記録よりも低い。不確定な要素が多いから、選手はまず参加標準記録の突破を目指すことになる。

6月の日本選手権で3位以内がカギ

これまで説明したのは、国際的な五輪の参加資格である。参加資格者の誰を五輪に派遣するかは、各国に任されている。

日本の陸上競技(長距離、競歩は除く)で言えば、6月24日に大阪・ヤンマースタジアム長居で開幕する日本選手権の結果が大きく影響する選考システムになっている。

最も優先順位の高い選考基準は、参加標準記録突破者が日本選手権で3位以内に入ること。これをクリアすれば代表に即内定する。次は3位以内の選手で、ワールドランキングで五輪参加資格を得た選手が選ばれる。ワールドランキングの出場枠は日本選手権時にはわからないが、ひとまず日本選手権で3位以内に入ることが重要であることは変わりない。

この二つの基準を当てはめても、なお出場枠が残っている場合、参加標準記録突破者、ワールドランキングで資格を得た選手の順に選ばれるが、最も考慮されるのは日本選手権の順位。記録もさることながら、大切なレースで結果を出す勝負強さが重要視されている。

参加標準記録突破者はサニブラウン、小池祐貴、桐生祥秀の3人

さて、前述の通り、男子100メートルの参加標準記録(10秒05)を突破している選手は3人いる。9秒97のサニブラウン・ハキーム(タンブルウィードTC)、9秒98の小池祐貴(住友電工)、10秒03の桐生祥秀(日本生命)だ。この3人は日本選手権で3位以内に入れば代表に内定するから、非常に有利な立場にいる。

ただ、この3人がそのまま日本選手権上位3位に入れるかというと、簡単ではない。ライバルの存在もあるが、本人たちの調子もいま一つだからだ。

米国を拠点にしているサニブラウンは2019年の秋以来、1年以上レースに出ていない。5月15日に米国のレースに出場予定だったが、左太もも裏の疲労感で欠場した。調子の良し悪しすらわからない状況である。

9秒98の自己ベストを持つ桐生は、今季初戦となった4月29日の織田記念で10秒30といま一つ。5月9日の五輪テスト大会ではフライングで予選失格となってしまった。小池は今季のベストは織田記念の10秒26。2020年以降は10秒0台をマークしていない。現状では2人とも本調子とは言いがたい。

3人を追う山県亮太、多田修平、ケンブリッジ飛鳥

むしろ、気になるのは参加標準記録を突破していない選手たちだ。

今季日本選手最速は、山県亮太(セイコー)だ。地元の織田記念で10秒14をマーク。10秒00の自己記録を持ち、3大会連続の五輪出場を目指す第一人者も過去2年はけがに泣かされてきた。復活の気配が漂うだけに、日本選手権までに参加標準記録突破を目指したい。

初出場を狙う多田修平(住友電工)は2017年に出した自己ベストが10秒07で、まずは自己ベストの更新が必要。2018年以降はいま一つ調子が上がらなかったが、今季は5月16日の関西実業団で10秒19をマーク。調子を上げてきている。

実は参加標準記録突破には「有効期間」がある。その期間内にクリアしないと、突破したことにはならない。100メートルで言えば、2019年5月1日~20年4月5日、20年12月1日~21年6月29日である。空白期間があるのは新型コロナウイルスの影響だ。

この空白期間のあおりを受けたのが、ケンブリッジ飛鳥(ナイキ)だ。2020年8月に自己ベストの10秒03をマークし、参加標準記録を上回ったが、有効期間外。今季は10秒28がベストで、五輪テスト大会の決勝は左足違和感で棄権した。ただ、ここ一番での勝負強さは折り紙付きで、昨季の調子が戻れば2大会連続の代表入りが見えてくる。

日本選手権まで1カ月あまり。それまでに参加標準記録突破者が増えるのか。代表入りをかけた争いは熾烈を極めていく。

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