1896年アテネ五輪から実施の「人類最古の格闘技」
東京五輪で金メダルラッシュに沸くレスリングは組み合いやタックルで相手を倒すスポーツで、近代五輪が幕を開けた第1回の1896年アテネ大会から実施されている。「人類最古の格闘技」とも呼ばれ、古代五輪でも主要競技の一つだった。
その魅力はシンプルさにある。何の道具も持たず、ウエアをつかむこともせず、体一つでぶつかりあい、技を掛け合う究極の競技だ。
直径9メートルの円形マットで戦い、上半身のみで攻防するグレコローマンスタイルと、全身を攻撃と防御に使えるフリースタイルがある。ダイナミックな技のグレコローマン、スピード感あふれる技が魅力のフリーというのが主な違いだ。
男子はフリー、グレコローマンの両スタイル、女子はフリーのみを実施。女子は2004年アテネ五輪から採用された。2013年に五輪実施競技から除外の危機に直面したが、国際統括団体の改革などで存続した。
相手の両肩を同時に1秒間マットにつけると勝ちになる「フォール」、相手を不利な状況に追い込むことで獲得できる「ポイント」を選手は狙う。
第1回アテネ大会は体重無制限のグレコローマン1階級のみの実施。グレコローマンの技には「立ち技(スタンドレスリング)」と「寝技(グラウンドレスリング)」の2種類がある。立ち技にはロックや背負い投げなど、寝技にはアームロックやリバーサルなどがある。
1912年に国際レスリング連盟(現世界レスリング連合)が設立され、両スタイルの階級が統一された。グレコローマンの最重量級で五輪3連覇、世界選手権9連覇を遂げているロシアのカレリンは「人類最強」の異名を持っている。
勝敗の決め方
レスリングはルール改正で観客への見せ方を探り、競技の公正さを欠くと不評だった抽選による攻撃権決定を廃止。1ピリオド(P)2分の3P制から、1P3分の計2Pで合計ポイントを争う方式に変更した。
フォール勝ちは、相手の両肩を1秒以上マットに付けて勝利すること。テクニカルフォール勝ちはフリースタイル10点、グレコローマン8点のポイント差がついた時点で勝利となる。もし6分の間に決着がつかない場合は、ポイントが多い方が勝利になる。
相手が警告を3つ受けた場合もその時点で勝ち。警告は消極的な姿勢や反則に対して与えられる。
ポイントは「技」に応じて1点、2点、4点、5点がある。例えば相手の足が円形マットの場外に出たら1点、グランド(相手が伏せた)状態で相手の背後に回り込んで頭部、両手両足のうち3つをマットにつけると2点、腹這いの相手に後ろから組みついて90度以上回転させると2点、立った状態からの投げ技は4点、寝技の状態からの投げ技は5点などがある。
女子は日本が最強、川井梨紗子と友香子が姉妹で金メダル
レスリングはロシア、米国、日本、トルコなどの国が伝統的に強い。女子は日本の強さが目立ち、2016年リオデジャネイロ五輪は女子4階級を日本が制した。
五輪4連覇の伊調馨、3連覇の吉田沙保里が一時代を築き、東京五輪では女子同57キロ級で川井梨紗子が2連覇、62キロ級の川井友香子が初優勝で姉妹での金メダルを達成。向田真優、開会式で旗手を務めた須崎優衣ら若手も台頭している。
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