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Vリーグ・ウルフドッグス名古屋、準優勝の先に見えた光

2022 4/27 06:00米虫紀子
準優勝のウルフドッグス名古屋,ⒸV.LEAGUE
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ⒸV.LEAGUE

サントリーに苦杯、悔しい準優勝

今シーズンのバレーボールV.LEAGUE DIVISION1男子は、サントリーサンバーズが2年連続9度目の優勝を果たし、幕を閉じた。

レギュラーラウンドを1位で通過し、ファイナル第1戦にも勝利していたウルフドッグス名古屋(WD名古屋)は、ファイナル第2戦を落とし、その直後に行われたゴールデンセットにも敗れて準優勝となった。優勝をつかみかけていただけに、WD名古屋の選手たちからは悔しさがありありと伝わってきた。

今季途中から正セッターを務めてきた永露元稀は、こみ上げる涙を止められなかった。「僕がしっかりとスパイカーに打たせることができなかった」と悔やんだ。

抜群の得点力とリーダーシップでチームを牽引した主将のクレク・バルトシュも、「シーズンの一番最後の試合が、もっとも悪い試合の一つになってしまった。私自身がやるべきことをやれなかったことが非常に悔しい」と語った。

マクガウン監督のバレーが浸透

昨シーズン3位で、今季は2位。だがその1つのステップ以上に、チームの変化と成長を示したシーズンだった。

今季就任したアメリカ出身のマクガウン・クリス監督はいつも、「成長し続けるチームであり続けることが目標」と語っていたが、その言葉通り、シーズンの中で大きな成長を遂げた。昨年12月の天皇杯で優勝して自信をつかむと、リーグの後半戦で飛躍。特に今季初めて先発に定着したセッターの永露やアウトサイドヒッターの山崎彰都が存在感を増していった。

マクガウン監督のバレーも着々と浸透していった。ブロックとディフェンスはデータに基づいてしっかりと組織化されている。リベロの小川智大はシーズン中、こう語っていた。

「クリスさんのバレーは、確率論というか、『ここに来るボールが多いからここに絶対いなさい』というふうにベースが決められていて、その約束事を守ることが、選手が一番やらなければいけないこと。でもそのベースに従うことって簡単なようで難しい。最初は選手が勝手に動いたりして取りこぼすことが多かったけど、今は、ここ1点欲しい、というところでの取りこぼしが少なくなってきました」

攻撃面では、スパイカーが高い打点からしっかりと打ち切れるようになった。昨季はどちらかというと速いトスで相手を振ろうとする攻撃だったが、「クリスさんには、シンプルに、まずスパイカーに100%で打たせることを求められる」と永露は言う。

その上で、攻撃の枚数をできる限り増やし数的有利を作るため、スパイカーには、ブロックや守備のあとでもすぐに開いて助走に入るよう口酸っぱく指導した。

「サボリを完全になくそうとしていた。そこを一番変えようとしてくれているように見えた」とリベロの小川は語っていた。

ミドルブロッカーの傳田亮太や近裕崇、オポジットのクレクも、体を投げ出して懸命にボールを拾い、そのあと素早く立ち上がって助走に入る。

パイプ攻撃に成長の跡

また、攻撃枚数を増やす上で、今季はアウトサイドヒッター(高梨健太、山崎)のパイプ攻撃を積極的に使った。

マクガウン監督は、「このチームに来て、最初に選手を見た時に、彼らはパイプを強みにできる、そういう能力を持っていると認識した」と振り返る。

山崎は、試合を重ねるにつれその重要性を痛感したと語った。

「パイプ攻撃はどんな状況でも入るようにと夏場から言われて、練習してきました。試合を重ねる中で、パイプが決まるかどうかが、試合の勝ち負けを大きく左右すると感じたので、自分が入れる状況の時はセッターにしっかり声かけをして、トスが上がってくるのを信じて、決めに行く、という気持ちです」

若手の成長やチームの今季の取り組みが終盤戦で噛み合い、熾烈な順位争いを制してレギュラーラウンド1位を勝ち取った。ファイナル第2戦では、昨季の優勝経験者が揃うサントリーに勝負強さを見せつけられ、敗れたが、その悔しさと経験は次への糧となる。

特に今季、同期入団の25歳の3人、セッターの永露、アウトサイドの高梨、リベロの小川がチームの軸としてたくましさを増した。3人は今年の日本代表での活躍も期待される。選手個々も、チームとしても、大きな伸びしろを感じさせたシーズンだった。

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