伝説のチームになるはずが、まさかの予選敗退
「伝説のチームを作る」。そう言って始まった中田久美監督が率いる日本女子バレー代表。あの時、誰もが「東洋の魔女」の再来を期待しただろう。
現役時代、天才セッターと呼ばれた中田久美は、監督としての評価も高かった。しかし、結果は1996年アトランタ大会以来25年ぶりのオリンピック予選ラウンド敗退。長年強いと言われ続け、2012年ロンドン五輪で銅メダルを獲得した日本女子バレー代表の強さの面影は見えないまま、東京五輪という大舞台はあっけなく終わった。
「伝説のチームを作る」。そう言って始まった中田久美監督が率いる日本女子バレー代表。あの時、誰もが「東洋の魔女」の再来を期待しただろう。
現役時代、天才セッターと呼ばれた中田久美は、監督としての評価も高かった。しかし、結果は1996年アトランタ大会以来25年ぶりのオリンピック予選ラウンド敗退。長年強いと言われ続け、2012年ロンドン五輪で銅メダルを獲得した日本女子バレー代表の強さの面影は見えないまま、東京五輪という大舞台はあっけなく終わった。
火の鳥NIPPONの敗因については各所で論争が行われている。最も多く挙げられているのはチーム力のなさだろう。
2017年に中田久美監督が就任した当初は、自身が直前まで監督を務めていた久光製薬の選手を中心に選出していた。その中には、キャプテンを任された岩坂名奈やロンドン五輪を経験した新鍋理沙、リオ五輪でチーム最多得点を挙げた長岡望悠の姿もあった。
しかし、この状況は五輪が1年伸びたことにより一変した。2020年6月には新鍋が東京五輪の延期が決まったことを期に引退を発表。岩坂も東京五輪直前に今季での引退を表明し、長岡望悠も怪我の調子がよくならず出場できなくなった。
その穴を埋めるために選ばれたのは、まだ経験の浅い若手選手ばかり。チームとしての練習を行う時間も十分ではなく、五輪では脆さを露呈しているように見えた。
経験不足も敗因ではあるが、それ以上に大きかったのは司令塔であるセッターがこの5年間定まらなかったという点である。
天才セッターと呼ばれた中田監督が誰をセッターにするのか、バレー界からの注目度は高かったが、毎年違うセッターが起用された。2017年のワールドグランドチャンピオンズカップでは富永こよみ、2018年の世界選手権では田代佳奈美、2019年のワールドカップでは佐藤美弥が選ばれた。
実は中田久美監督は佐藤美弥を東京五輪のセッターにしたかったのではないかという見方が強い。肩の怪我、アキレス腱損傷と怪我続きだった佐藤。まだ走れるようになったばかりでリハビリ中だった2021年、それでも中田監督は佐藤を日本代表メンバーに選出した。
そんな佐藤も東京五輪前に引退を決意した。そして正セッターに選ばれたのが籾井あき。まだ経験が不足している21歳には重責だったろう。苦渋の決断をした中田監督も、いきなりの大舞台で戦い抜いた籾井も、1年延期で引退を決意した選手も、誰も責めることはできない。
オリンピック予選敗退。これは日本女子バレー界にとってアトランタ大会以来2度目の屈辱である。
この重みを最も感じているのは選手たちだろう。しかし、ロンドン五輪で銅メダルを獲得したメンバーの竹下佳江 、木村沙織、佐野優子らもそれまでの五輪で悔しい思いを経験している。特に世界最小最強セッターと謳われた竹下は、初めて出場したシドニー五輪の最終予選で日本女子バレー初となる五輪出場を逃す経験をしている。
当時、身長159cmの竹下では通用しないと批判が殺到し、引退を本気で考えるほどの辛い日々を過ごした。だが、そこから這い上がり、ロンドンの銅メダルにつなげた。
今回苦い敗北を喫したメンバーはまだ若い選手が多い。次のパリ五輪でこの悔しさを晴らす試合を見せてくれることに期待しよう。
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