1年8カ月ぶりの復帰戦で優勝の快挙
日本の男子テニス界をけん引してきたエースにとって久しぶりに明るいニュースだった。
度重なる故障による長期離脱で苦しんできた元世界ランキング4位の33歳、錦織圭(ユニクロ)が1年8カ月ぶりの復帰戦で優勝する快挙を達成。6月18日、米自治領プエルトリコのパルマスデルマールで行われた下部ツアー大会、カリビアン・オープンのシングルス決勝で19歳のマイケル・ゼン(米国)に6―2、7―5でストレート勝ちし、カリブ海のリゾート地に降り注ぐ太陽の下で輝く笑顔を取り戻した。
2022年10月17日付から一時は世界ランク圏外となったが、今大会の優勝で75ポイントを獲得して492位に。それ以上に痛めていた右足首や股関節などの不安を感じさせないプレーで、1回戦から決勝まで5試合を勝ち抜いた質の高い内容に大きな価値があった。
試合後は多くの選手仲間も祝福。元世界ランク1位で錦織と同様に故障で苦しんだ経験があるアンディ・マリー(英国)はツイッターで「お見事! ケイ。復帰戦で優勝」とメッセージを発信。錦織もこれにすかさず応じ「ありがとうアンディ! あなたは自分にとって大きなインスピレーションだ」と感謝の思いを込めた。
ピラミッド構造の過酷なツアーの格付け
男子テニスは歴史のあるウィンブルドンや全米オープンなど四大大会が別格の位置付けで、それ以外の年間約60のツアー大会をATPが統括する。
年間上位8選手で行う最終戦のATPツアー・ファイナルを除き、マスターズ1000シリーズ、500シリーズ、250シリーズの3つにランク分けされ、例えばマスターズ大会は欧米を中心に年間9大会しか実施されていない。優勝者が獲得できる世界ランクのポイントも1000点と高い。
錦織が今回優勝した下部ツアー大会は「チャレンジャー・ツアー」と呼ばれ、最高峰の四大大会やATPツアーの下部大会に当たる。このピラミッド構造の下部から頂点を目指し、はい上がっていくのは過酷な環境であり、試練の道でもある。
8月28日開幕の全米オープンに照準
2022年1月に手術を受けた股関節、リハビリ中に痛めた右足首。世界ランク492位で帰ってきた錦織は、体のケアに細心の注意を払いつつ、トップ10入りへ再挑戦が始まる。
今後は下部ツアー大会2試合をこなし、7月下旬のアトランタ・オープンでツアーに復帰する予定。その先には2014年に準優勝した全米オープン(8月28日開幕)の出場に照準を定める。
かつて世界ランク上位でしのぎを削ったマリーはトップ50、スタン・バブリンカ(スイス)もトップ100までランクを戻してきた。30歳代のライバルたちの活躍も錦織の刺激になっているはずだ。
【関連記事】
・松岡修造が「世界」を追いつめた日……ウィンブルドンの記憶
・まだその姿を見ていたい アンディ・マリーの復活
・車いすテニス国枝慎吾、ウィンブルドン2冠でも賞金1000万円…ジョコと雲泥の差