パラ金と合わせ「生涯ゴールデンスラム」達成
車いすテニスの世界ランキング1位、国枝慎吾(ユニクロ)が7月10日、ウィンブルドン選手権の男子シングルス決勝でアルフィー・ヒューエット(英国)を4―6、7―5、7―6で破って初優勝し、男子初の四大大会全制覇となる偉業を遂げた。
今大会はダブルスとの2冠にも輝き、これで東京パラリンピックの金メダルと合わせ「生涯ゴールデンスラム」を達成。四大大会は2021年の全米オープンから4連勝となった。
シングルスの優勝賞金は2021年から6.3%増の5万1000ポンド(約830万円)。ダブルス優勝賞金はペア2万2000ポンド(約360万円)で、1人だとその半額の1万1000ポンド(約180万円)。単複2冠で賞金としては約1010万円を獲得した計算になる。
このプライスレスな偉業に世界のテニス界がこぞって祝福。自身のSNSでは会場に訪れた米俳優トム・クルーズとの写真も掲載して感謝した。
さらに所属先の「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングは四大大会全制覇と「生涯ゴールデンスラム」を達成した快挙をたたえ、報奨金2000万円を支払うと発表し、合わせて3000万円超の「特別ボーナス」となった。
ジョコビッチは優勝賞金3億3000万円
一方でウィンブルドン選手権の男子シングルス決勝で4連覇を達成したノバク・ジョコビッチ(セルビア)は優勝賞金200万ポンド(約3億3000万円)を獲得。
準優勝したニック・キリオス(オーストラリア)も105万ポンド(約1億7000万円)を獲得しており、女子シングルスも同額。1回戦負けでも5万ポンド(約816万円)に設定されており、車いすテニスの賞金額との差は依然として歴然としている。
テニスの四大大会は種目に応じて男女のダブルス優勝は54万ポンド(約8800万円)、混合ダブルス優勝は12万4000ポンド(約2025万円)と賞金額に傾斜があり、競技人口やスポンサーなど様々な背景もあるが、パラスポーツでも人気が高い車いすテニスへの評価はもっと上がってもいいだろう。
スポンサーは全日空など一流企業がずらり
それでも2009年に大学職員からプロに転向し、国際的なパラスポーツ界の「顔」として前例のない道を歩んできた38歳の国枝は「プライスレスな価値」がある。
「俺は最強だ!」を座右の銘にプロとして勝利に「強いこだわり」を持ち、スポンサーには現在、全日空やホンダ、NEC、ヨネックスなど一流企業が並ぶ。公式なデータは公表されていないものの、こうしたスポンサー収入を合わせれば健常者の一流アスリートと遜色ない金額を稼いでいることは推定できる。
輝かしい経歴の中で唯一手にしていなかったテニスの「聖地」での栄冠に輝き、四大大会のシングルス優勝回数は通算28度になった。
国枝の偉大さを語る上でよく引き合いに出されるテニス界の英雄ロジャー・フェデラー(スイス)のコメントがある。
「日本には国枝がいるじゃないか」
車いすテニス界で圧倒的なポジションを確立し、パラスポーツ全体のけん引役として今後も幅広い役割が期待されそうだ。
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