35年ぶりにラバーの色に関するルール改定
10月1日から卓球のラバーに新しい色が加わった。これまでは両面にラバーを貼る場合、片面を黒、もう片面は赤とする色の規定があったが、今回のルール改定で新たにピンク、バイオレット、グリーン、ブルーの4色を選ぶことができるようになった。
色の違いによる性能の違いはないそうだが、両面にラバーを貼る場合は片面を黒にしなければならない。そのため、赤とピンク、ブルーとグリーンと言った組み合わせはできない。ラバーの色に関するルール改定は、実に約35年ぶりのことである。
その中で今回、ピンクのラバーを実際に使ってみた。TIBHERのクァンタムXプロPINKだ。
蛍光色のピンクが何ともかわいく、卓球台の青との相性もよく映えている。一緒に試打した友人たちからも「ピンクいいな」「実際に見てみて、青よりピンクだな」と言った声が聞こえてきて、かなり好評だった。
ブルーやグリーンは写真でしか見ていないが、台の色と似てしまうので、ピンクが一番目立ちそうだ。ただ、ブルーやグリーンもさわやかな色なので、台とのコントラストがおしゃれかもしれない。
11月の世界選手権でお目見え?
黒と赤から、ピンクやブルーも選べるように…というと、ランドセルを想像した人も少なくないだろう。四半世紀以上前に筆者がランドセルを買ってもらった時は、男の子は黒、女の子は赤を選ぶのが暗黙の了解になっていた。
売り場にはピンクが1つだけあり筆者はそれを選ぼうとしたが、母親に「6年も使うんだから、お姉さんになったら幼く感じるかもよ」と言われて不安になり、結局赤を購入したのを覚えている。
しかしラバーの場合はランドセルとは違う。「この色は違うな」と思ったら元に戻せばいいのだ。ラバーは3~4か月ほどで変える人が多い消耗品であり、冒険しやすい。11月の世界選手権ではトップ選手の一部がプロモーションを兼ねてカラーラバーで登場するのではないかと期待している。
多くのメーカーは様子見
一方、ランドセルは様々な色を見かけるようになったが、卓球のラバーが多色化していくのは、今の市場規模では難しいだろうと思っている。卓球のラバーはあまりにも細分化されているからだ。
例えば今回試打したラバーには、1.8、2.0、maxと3種類の厚さがある。これが赤と黒ならばメーカーやショップは2色×3サイズの6種類の在庫を持っていればいいが、今回ピンクとブルーが出たことで、倍の12種類の在庫を持たなければならなくなった。
更に種類の多いラバーだとどうなるか。福原愛選手が使っていたアームストロングのアタック8は、今発売されているだけでラバーの種類が14種類(OXを同じラバーとして扱った場合)で、厚さの違いを入れると86種類ある。
黒・赤だけでも172種類のアタック8が存在しているのに更に別の色もとなると、アタック8だけで売り場の一角を占領してしまいそうだ。
実際、カラーラバーにどのくらいの需要があるのかまだ未知数な今は、様子見をしているメーカーの方が多い。張本智和選手や水谷隼選手が使っているバタフライのディグニクス、伊藤美誠選手が使っているニッタクのファスタークなど、国内屈指の人気ラバーでさえ、カラーラバーは発売されていない。
イメージ変わるきっかけに
ただ、VICTASは他の国内有力メーカーに先駆けてカラーラバー導入に踏み切った。「新しい取り組みは、まず私たちが挑戦することにこそ、意味があると信じている」とコメントし、その動機を「卓球を明るく元気にしたい。プレーヤーの選択肢を増やし、観る人にも楽しいと感じてほしい」としている。
既にオレンジやブルーといったカラフルなラケットを発売しているVICTASならではの視点と言えそうだ。
丹羽孝希選手も使用する大人気モデルV>15 Extraでブルーを出したほか、VENTUSのExtra、Stiff、Limberでピンクを出した。これらのラバーに興味を持っていた人は、思い切って変えてみるきっかけにしてもいいかもしれない。
かつては“根暗なオタクスポーツ”というイメージを持たれることもあった卓球だが、繰り返しのルール改正によるプレーの変化やスター選手の登場で、イメージは見違えるほど変わってきた。今回のカラーラバー登場で、卓球がもっとカラフルな世界になっていくことに期待している。
《ライタープロフィール》
福田由香
NHK岡山キャスター、テレビ愛知アナウンサーを経て「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)で現場リポーターとして活動した経歴を持つ異色のライター。卓球初段。全日本社会人選手権、全国インカレ出場。学生時代は全国国公立大学卓球大会で数々の賞状を手にした。
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