東京五輪日本代表は全員シェークハンド
東京五輪のメダルラッシュを受けて、ますます盛り上がる卓球人気。先日の記事(ブーム到来?気軽にできる卓球の始め方、ラケットなど用具の選び方)ではざっくりとした卓球の「はじめかた」を紹介したが、本気で卓球を始めるなら欠かせないのが「マイラケット」だ。
ラケットには大きく分けて、握手をするように持つシェークハンドとペンを持つように持つペンホルダーの2種類がある。「片面打ちがペンで両面打ちがシェーク」だと思っている方がたまにいるが、それは間違いである。正しくは“片面だけでも打てる”のがペンだ。
ラケット選びで最初に迷うのはここだと思うが、大きなこだわりがないならシェークにしよう。今回の五輪でも日本代表は全員シェークだし、中国も男子の許昕以外は全員シェークだ。ニッタクの公式ページでも、「まずはシェークの裏ソフトでラリーで勝負するタイプを目指そう」と紹介している。
ペンホルダーはマニュアル?
「最終的にはシェークを選ぶとしても、ペンの特徴を知ってからにしたい」という方もいるだろう。もちろんペンにしかないメリットはある。
まず一番は、手首のスナップが効きやすいことだ。これによってサーブやドライブの回転を強くかけやすいほか、横回転を入れるなどの変化もつけやすい。ラケットの面を細かく動かせるので台上プレーにも向いている。
今回の五輪中継でもよく出てきた、ミドルの処理がしやすいこともメリットだ。ミドルとは、ジャケットを着た時の利き腕側のポケットのあたりのコースのこと。フォアで打つかバックで打つか迷う場所でミスになりやすいが、ペンならばフォアもバックも同じ面で打てるので対応しやすい。
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一方でペンはこれまで、バックサイドがウイークポイントになりやすかった。ペンのバックで使うショート打法は、シェークのバックハンドよりも腕の届く範囲が限られてしまうためだ。
これを解消するために、現在ではペンラケットの両面にラバーを貼りシェークのバックハンドのように振る「裏面打法」を使う選手が増えている。これならばバックサイドはラケットのどちら側でも打つことが出来る。片面は表、片面は裏と異質のラバーを貼り、変化を織り交ぜてチャンスを作ることも可能だ。
長年日本リーグで活躍したペンホルダーの方は、「車で言えばペンはマニュアルでシェークはオートマだ」という。人とは違うプレーがしたいのであれば、あえてペンを選んでみるのも悪くはないと思う。
ペンを選ぶならおすすめは絶対に中国式だ。裏面打法に向いているし、シェーク持ちもできるので、「やっぱりシェークにすればよかった」と思った場合、ラケットを買い替えるまで代用できなくもない。
シェークのグリップもいろいろ
ここからは多くの人が選ぶシェークラケットについて紹介する。フォアバックの切り替えがしやすくラリーに向いているので、ラリーが長くなりやすい今のルールで卓球を始めるなら、絶対にシェークがおすすめだ。
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メーカーのページを見ていると、STとかFLといった表記が出てくるが、これはグリップの形状だ。一番人気はグリップの付け根から先端に向かって広がったフレアで、丹羽孝希ら多くのトップ選手が使っている。手にフィットしやすいので打球が安定するし、フォアバックの切り替えもしやすいからだ。手が小さな子どもや女性にも向いている。
一方で水谷隼はバタフライのホームページで、「細かく面を変えられるストレートが好き。台上プレーの微調整がしやすいし、サービスも出しやすい」と話している。ただ、これは言い換えれば不安定ということでもあるので、初心者の場合、難しく感じるかもしれない。
手のひらの窪みに合わせて凹凸をつけた、アナトミックというグリップもある。しっかり握りこめる形でフィット感が上記2つよりも増すので、ボールに力が伝わりやすいという。ただし、ANは人気モデルでも作られていないことが多いので注意が必要だ。
それぞれのグリップの特徴を紹介したが、一番大事なことは握りやすいことだ。ショップで実際に触れてみて、しっくりくるものを選ぶのもいいと思う。ラケットは安い買い物ではないし、ラバーと違って頻繁に交換するものでもない。焦らずじっくり選んでほしい。素敵なパートナーに出会えることを祈っている。
《ライタープロフィール》
福田由香
NHK岡山キャスター、テレビ愛知アナウンサーを経て「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)で現場リポーターとして活動した経歴を持つ異色のライター。卓球初段。全日本社会人選手権、全国インカレ出場。学生時代は全国国公立大学卓球大会で数々の賞状を手にした。
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