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石川佳純が古い?20年でここまで変わった卓球のルールと用具

2021 6/9 06:00福田由香
石川佳純Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

卓球人気を高めた「やりにくさ」

今年の全日本選手権で5年ぶり5回目の頂点に立った石川佳純。彼女が優勝後に話した中で「卓球が古いみたいに言われることもあった」という言葉があった。この大会で丹羽孝希は20歳の選手に敗れ、「若い選手は卓球が違う」と話した。

卓球のトレンドは急速に変化している。それは、この20年ほどでルールが何度も改正されたことによる。そして、その度にさまざまな技術がやりにくくなってきたのである。

他のスポーツであれば、科学や用具の進化に伴い、できなかったことができるようになっている。男子のフィギュアスケートは4回転ジャンプが当たり前になったし、体操競技でも新しい技がどんどん生まれているのに、卓球はやりづらくなった。

実は、それが卓球の人気を高めることに直結している。見応えのあるプレーが生まれやすくなっているのだ。

遅く、弱くのルール改正

石川が本格的にラケット握った2000年、ボールが直径38mm、重さ2.5gから40mm、2.7gになった。わずかに見えるが、大きさ5.3%、重さ8%のアップ。これにより、ボールに回転がかかりにくく、球速も遅くなった。

回転の強いサーブで得点することやスピードボールで打ち抜くことが難しくなり、ラリーが続きやすくなった。

改正の理由は「観戦しやすくするため」だ。ボールが大きく、遅くなることで観やすくなることを狙ったという。

テレビ東京が卓球中継を始めた2005年。この頃、多くの選手がスピードグルー(ラバーの弾みや回転、スピードなどを向上させる)を使い、ボールに威力を出していた。ボールが良く飛ぶので、構える位置は今の若手より遠め。フォアハンドをメインにする選手が多く、足腰を鍛えてどこに打たれてもフォアで返す、オールフォア卓球も珍しくなかった。

しかし、このグルーも有害性などの問題で禁止される。これでまたスピードや回転、威力が大きく落ちた。用具メーカーは知恵と技術を結集させ、ノングルーでも威力の出るラバーを開発。2008年発売のテナジー、2010年発売のファスタークなど、この頃発売されたラバーは現在も世界中で人気だ。

2014年、ボールの材質がセルロイドからプラスチックに変わった。これも安全性などを理由にした変更だが、ボールがわずかに大きくなり、重たくなった。またしても回転とスピードが出しにくく、ラリーが続きやすくなった。

こうしてルールが変わったことで、現在はダイナミックなラリーが何球も続くようになった。卓球の知識が少なくてサーブの球種などが分からない人でも、パワフルなラリーは観ていて楽しめるのではないだろうか。

進化するベテランと変化する卓球

アラサー以上の選手と若い選手のスタイルの違いは、自分の卓球が出来上がってきた時期のルールの違いによるところが大きい。若い世代は両ハンドともしっかり振る選手が多いし、ベテランにはフォアハンドを決定打として磨いてきた選手が多い。

石川が今回、全日本女王に返り咲いた要因の1つが、自粛期間中にバックハンドを強化したことだが、これは、コロナ禍で大会が少なくなったことをうまく活用した結果と言える。卓球の場合、普段は1年中大会があるため、これまで築いたものを崩して再構築するのが難しいからだ。

石川は、コロナ禍で進化した。今後も卓球は変化を続け、今では定番となったチキータのように、新たなトレンドが創造されていくだろう。

東京オリンピックでは40歳を超えた選手がメダルを狙っている。長年世界一に君臨し、四半世紀に渡って活躍している皇帝、ティモ・ボル(ドイツ)だ。世界ランクは、丹羽や水谷より上の11位。ボルは近年の試合でも、決定打に関してはバックに来たボールもフォアで打っている。

女子では、五輪を58歳で迎える世界選手権メダリストが出場予定。観戦する時には、年代ごとのプレースタイルの違いにも注目してみてほしい。

《ライタープロフィール》
福田由香
NHK岡山キャスター、テレビ愛知アナウンサーを経て「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)で現場リポーターとして活動した経歴を持つ異色のライター。卓球初段。全日本社会人選手権、全国インカレ出場。学生時代は全国国公立大学卓球大会で数々の賞状を手にした。

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