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石川佳純、東京五輪で卓球人生集大成のメダルへ「まだまだやれる」

2021 7/22 11:00福田由香
石川佳純,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

選手団副将の28歳、お姉さん的立場で臨む3度目の五輪

今年の全日本で5年ぶり5回目の頂点に立ち、3大会連続の五輪を迎える卓球の石川佳純。チームでは経験を活かして支える立場となり、日本選手団の副将にも選ばれた。

石川は五輪初出場のロンドンでシングルス4位、団体銀メダルと日本卓球史上初の偉業を2つも達成。団体では決勝で中国と戦うまで土がつくことはなかった。

それだけにリオのシングルスの結果は衝撃だった。北朝鮮のカットマンにゲームカウント3-1とリードするも、右足がつってしまった。治療のためのタイムも認められず、1時間以上に渡る長い戦いの末、初戦で散った。

ただ、団体戦では持ち直して全勝。チームが敗れた準決勝のドイツ戦でも2つの白星をあげ、3位決定のシンガポール戦ではロンドンのシングルスで負けた馮天薇にリベンジ。銅メダルに貢献した。個人戦での無念もあったが、団体戦での安定感は見事だった。

愛ちゃん2世から日本のエースになり、古いとも言われた

小さな頃から「愛ちゃん2世」として注目されてきた石川。「真面目そうなメガネっ子」だった彼女は、強く美しいアスリートへと成長した。元卓球選手の両親に育てられ、小学1年生で競技をスタート。全日本では小学6年生で3回戦に進出し、高校3年生で初制覇。21歳となった2015年には54大会ぶりの3冠を達成した。

その後リオ五輪を経て、2017年の世界選手権混合ダブルスでは、吉村真晴とともに日本勢48年ぶりの金メダルを獲得。涙を浮かべて駆け寄った石川を吉村がハグして頭をポンポンした映像も話題になった。

一方でこの頃、伊藤美誠、平野美宇、早田ひなの2000年生まれの「黄金世代3人組」が力を発揮し始めた。全日本では2016年に石川が3連覇を達成した後、17年は平野、18年と19年は伊藤、20年は早田が優勝。世代交代の波に襲われた石川は、4回とも3人のいずれかに敗れた。

「若い選手に勝てないんじゃないか」「卓球が古い」。そんな声も聞こえた。黄金世代と石川では卓球のスタイルが違い、その根底には2014年にボールの材質が変わったことがあった。

卓球はこの20年ほどで何度もルールが変わっていて、そのたびにトレンドも変化している。前のボールの時は、足を動かしてどこに来たボールもフォアハンドで打つという選手が多く、石川もある程度この傾向があった。しかし現在のボールはラリーが続きやすいため、若い選手の多くは左右に動かされても対応できる、両ハンドを振る選手として成長。

プラボール導入時、黄金世代は中学生。まだ粗削りな中学生が軌道修正するのと、既に日本のエースとして結果が求められていた石川がスタイルチェンジするのとは全く違い、これが石川が古いと言われる原因となった。

コロナ禍にバックハンド強化

石川はコロナ禍の自粛期間にバックハンドを強化した。普段は1年中大会があるため築いてきたものを崩して再構築するのが難しいが、試合が少ないことを前向きに活用したのだ。

今年の全日本の決勝では、決定打以外回り込みのフォアを使わず、バックハンドで対応した。伊藤との死闘を制し、「今までのプレースタイルでは難しかったと思う。チャレンジすることによってしか、こういう結果は得られないと改めて感じ、自信になった」と手応えを得た。

東京五輪で石川はシングルス第5シードとなった。シングルスの代表枠は各国2つで、中国からはメダルを狙える実力者が4人も落選。3位に入るには、中国の陳夢と孫穎莎のいずれかを倒すか、伊藤との日本人対決を制するかだ。

卓球メーカー・ニッタクは「バックハンドが振れなければ時代遅れ」とまで記載するが、石川にはもう当てはまらない。「まだまだやれる。まだまだやりたい」と話す石川。全日本で見せた勝負強さを出せば、集大成のメダル獲得の可能性は十分にあるはずだ。

《ライタープロフィール》
福田由香
NHK岡山キャスター、テレビ愛知アナウンサーを経て「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)で現場リポーターとして活動した経歴を持つ異色のライター。卓球初段。全日本社会人選手権、全国インカレ出場。学生時代は全国国公立大学卓球大会で数々の賞状を手にした。

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