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悲願の五輪へ!卓球女子平野美宇は団体戦で嵐を起こせるか

2021 7/17 11:00福田由香
女子卓球選手の平野美宇,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

第2シードで団体のメダルは“ほぼ確”!

五輪ではロンドン、リオと2大会連続でメダルを獲得している卓球女子団体。東京大会は第2シードで、中国とは決勝で激突する。3度目の正直で、今回こそ金メダルをと期待がかかる。

史上最強と言われる代表メンバーは、世界ランク2位の伊藤美誠をエースとし、同10位の石川佳純、12位の平野美宇の3人。団体戦は4シングルス1ダブルスの5本勝負で、エースがシングルスに2回、残りの2人がダブルスとシングルスに1回ずつ出るのが一般的なため、石川と平野がダブルスの練習を重ねている。

中国以外でライバルになる国は、宿敵ドイツだ。リオ大会の準決勝で敗れていて、先日、女子日本代表VS仮想ドイツの団体戦も行われた。

ドイツのメンバーは前回と全く同じ。ハン・インとシャン・シャオナの38歳の2人は、ともに出産で一度卓球を離れたママさんプレーヤーだが、侮ってはいけない。特にハン・インは世界で指折りのカットマンで、現在も世界ランク22位と早田ひなよりも上だ。

リオ大会の団体ではラストで福原愛と対戦し、フルゲームにもつれた試合を11-9で奪ってドイツの決勝進出を決めている。12月に石川と対戦した時もフルゲームデュースの大接戦を演じた。日本の戦力アップを考えればリベンジできる可能性が高いが、油断は大敵だ。

起こせハリケーン、平野美宇

日本の戦力も見てみよう。今回は平野美宇にフォーカスする。

3歳で卓球を始めた平野は、同学年の伊藤美誠と共に「みうみま」と呼ばれ、幼少期から注目されてきた。母親が指導する卓球教室で毎日ラケットを振り、4歳で全日本の小学2年生以下の部に出場。一般の部の最年少勝利記録は伊藤が持っているがこれは誕生日の差で、平野も同じ時に全日本一般の初勝利を収めている。

しかも、伊藤は2回戦負けだが平野は3回戦まで進んだ。ダブルスでもみうみまペアで全日本最年少勝利とワールドツアー最年少優勝を達成した。

しかし、2人が高校1年生の時のリオ五輪が明暗を分けた。3番手で代表入りした伊藤が卓球史上最年少の五輪メダリストになった時、4番手となった平野はブラジルで球拾いをしていた。

この悔しさが平野を変えた。攻撃力を強化し、五輪の2ヶ月後にはワールドカップで史上最年少優勝。中国勢以外で初めてタイトルを獲得した。翌年1月の全日本では、決勝で石川を倒して史上最年少優勝を果たす。

4月のアジア選手権では日本人としては21年ぶりの栄冠に輝いた。この試合で平野は、当時の絶対女王・丁寧をフルゲームデュースで破ると、世界2位の朱雨玲と現在は中国でエースとなった陳夢をストレートで撃破。この大活躍で「ハリケーンヒラノ」の異名がついた。

6月の世界卓球では、「中国全体が自分に勝つためにやってきていた感じ」と丁寧にリベンジされるが、日本勢48年ぶりとなる女子シングルスのメダルを獲得した。

嵐の前の静けさ

大ブレイクした平野だが、東京大会が目前に迫る2019年からは再び苦しむことになる。全日本では中学2年生の木原美悠の速攻に振り回され、2戦目で消えた。五輪代表になるのは、2020年1月世界ランキングの上位2人。伊藤が一抜けし、残り1枠は石川との一騎打ちだった。

平野がリードして迎えた12月、石川と対峙したのは北米オープンの決勝。ワールドツアーの格下大会だが、世界ランクを上げるために必要な遠征だった。「ちょっとの迷いが勝敗を分けてしまった。自分に自信が足りなかった」。この翌週、選考レースが終了。平野の手から代表の切符が滑り落ちた。

結局、平野は協会推薦によって団体戦の代表に選ばれた。選考基準は、シングルスの実力と石川とのダブルスの相性。日本人3位で、石川との「かすみう」ペアでアジア選手権3位、ワールドツアー準優勝の平野は誰もが納得の内定。シングルスで落選した悔しさは消えなかったが、やっと五輪選手になることができた。

2020年は腰痛のため、大会欠場が続いた平野。今年1月の全日本ではまたしても木原美悠に敗れ6回戦で消えた。Tリーグでもこの時期は負けが目立ったが、2月になると単複合わせて8戦全勝。3月には約1年ぶりに国際大会の舞台に立ち、かすみうペアで銀メダルを獲得した。

嵐の前の静けさ。いい意味のことわざではないが、あえて使いたい。平野の静けさが、ハリケーン再来の前触れとなるように願って。

《ライタープロフィール》
福田由香
NHK岡山キャスター、テレビ愛知アナウンサーを経て「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)で現場リポーターとして活動した経歴を持つ異色のライター。卓球初段。全日本社会人選手権、全国インカレ出場。学生時代は全国国公立大学卓球大会で数々の賞状を手にした。

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