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1位でも出場不可?オリンピック競泳の出場資格を徹底調査!

2016 10/27 18:11
競泳 五輪 選考
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Photo by Maxisport / Shutterstock.com

オリンピックは競泳の世界一を決める大会の一つですが、誰しもがオリンピックに出ることができるわけではありません。五輪に出場するための条件と歴史をまとめてみました。

リオオリンピック選考会で2位の北島康介選手は落選

アテネと北京五輪の男子100m、200m平泳ぎで金メダルを獲得した日本水泳界のレジェンド・北島康介選手が、リオ五輪出場をかけて臨んだ2016年4月の代表選考会男子100m平泳ぎで、59秒93のタイムを叩き出して2位に入ったにもかかわらず、五輪に出場できないという事態が物議を醸しました。
ちなみに、1位となった小関也朱篤選手も59秒66で出場権を獲得することはできませんでした。これは、日本水泳連盟が設定した五輪派遣標準記録の59秒63を超えていなかったためです。ただ、北島選手は準決勝では派遣標準記録を突破していたため、世論は日本水連に対する選考に異を唱えました。

オリンピックの派遣標準記録はシドニー選考がきっかけ

では、前述の五輪派遣標準記録とはいったい何なのでしょうか。派遣標準記録が生まれたきっかけは、2000年のシドニー五輪の選考会までさかのぼります。
同年に開催された日本選手権で女子200m自由形で優勝した千葉すず選手が、国際水泳連盟が定める五輪参加標準記録に達していたにもかかわらず、それを選考条件にしていた日本水泳連盟は代表に選ばなかったという経緯があります。これが問題となってから、より明確な選考基準を作る機運が高まり、派遣標準記録という概念が生まれました。

世界ランク16位程度の記録をオリンピック参加の目安に

競泳におけるシドニー五輪以降の代表選考は、開催年の前年の世界選手権優勝者か、国内の五輪選考レースでの一発勝負かの2通りとなります。それぞれの種目で設定された五輪派遣標準記録は、国際水連による五輪参加標準記録よりも厳しい日本水連の独自基準です。
近年の世界ランク16位程度の記録になるように設定されているため、これを突破できればほぼ入賞できるレベルであることを意味しています。競泳をお家芸としている日本だからこその厳しい基準であると言えるでしょう。

競泳男子100m自由形の派遣標準記録は日本記録より早い

国内の五輪選考レースではトップで通過できても、派遣標準記録には到達しなかったので落選してしまう。派遣標準記録を設定していると、このような事態は珍しいものではなくなるのです。
例えば、世界でもレベルの高い男子100m自由形が最たる例で、派遣標準記録となる48秒16は、日本記録の48秒41を大きく上回ります。一発勝負という緊張の舞台で臨んだリオ五輪選考会では、日本記録保持者の中村克選手が48秒25、塩浦慎理選手も48秒35とそれぞれこれまでの国内記録を更新しましたが、派遣標準記録は突破できませんでした。しかし、この2人を含む上位4人は4×100mフリーリレー代表に選ばれました。

競泳の厳しい派遣標準記録に異論&擁護の声

日本水連が独自に定めた派遣標準記録は、曖昧さを無くした明確な基準である一方で「タイム設定が厳しすぎる」との批判も噴出しています。日本水連側の言い分としては、五輪参加者全員が入賞以上の記録を狙えるように設定しているとのことですが、国内のチャンピオンが五輪に行けないのはおかしいという言い分にも一理あるでしょう。仮に伸び盛りの中高生であれば、たとえ数カ月の間で記録が伸びることもあり得ます。
ただ、派遣標準記録があるからこそ、五輪への参加を「記念」で終わらせず競技レベルをより高みへと伸ばすことができると捉える意見もあります。

まとめ

競泳五輪の選考会において切り離せない派遣標準記録。選考レースの度に議論が噴出する日本独自の基準をクリアした先には、本番での輝かしい成績が期待できそうです。