角界の一年を占う一月場所を知る
大相撲には本場所が6回あるが、一年のはじめに催されるのが一月場所、通称「初場所」だ。会場は相撲の聖地としても知られる東京の両国国技館。2018年の一月場所は初日が1月14日、そして28日に千秋楽を迎える。番付発表は12月26日だ。
長い一年の最初の本場所ということで、力士たちも気合をいれて臨む。一月場所は昇進を決める力士が多いことから「ご祝儀場所」との異名があるほか、初場所ならではのエピソードもある。今回はそんな一月場所について、そして2018年の一月場所について見てみよう。
“最初の本場所“一月場所
大相撲はまとまったオフシーズンが無く、年6回コンスタントに本場所が開催されるため“一年”という意味でのシーズンの印象が薄い。
そのため、一月場所から十一月場所までを1シーズンとして考えて問題ない。一年で最初の本場所ということでその年の展望を占う場所といわれ、力士たちも気が引き締まる。
また、他のスポーツと同様に一年を通じた成績を鑑みて年間最優秀力士が選出される。その表彰がこの一月場所の初日に行われ、勝ち星の数や優勝回数、そして相撲の内容などからその年に最も活躍した力士が選出される(報知新聞社主催)。
前年に一番輝いた選手を讃えるところから、大相撲の一年は本格的に始まるのだ。
別名は”祝儀場所”、両陛下ご観覧も
一月場所の特徴としては、初優勝を果たす力士や昇進を決定づける力士が多いことがあげられる。記憶に新しいところでは2017年の一月場所だ。久々に誕生した日本人横綱として大いに注目を浴びた稀勢の里関だが、幕内で優勝を果たしたのはこの一月場所が実は初めて。
そしてこの優勝が決定打になり、場所終了後の横綱審議委員会で稀勢の里関の横綱昇進が決まった。また1981年には、ウルフの愛称で親しまれた千代の富士さん(当時関脇)が優勝決定戦で北の湖さん(当時横綱)を下して初優勝を果たした。この優勝で千代の富士さんは大関昇進を果たした。
一月場所のもうひとつの特徴として、天覧相撲が多く行われる。天覧相撲とは天皇皇后両陛下が相撲を観戦されることだ。特に1月場所の中日(8日目)に行われることが多い。とはいえこの場所のこの日という決まりはなく、2017年は初日に天覧相撲が行われた。
2017年の一月場所を振り返る
前年の一月場所を振り返ってみよう。漫画「ベルサイユのばら」が、全日で懸賞を掲示したことでも話題になったこの場所では、直前の十一月場所で優勝した鶴竜関と日馬富士関の横綱2人が場所途中から休場。2016年年間最多勝の大関稀勢の里関と、横綱白鵬関が場所を引っ張る展開となった。
特に優勝次点が実に12回となる稀勢の里関はこの場所で優勝すれば綱取りとも言われ、それに突き進むように白星を重ねる。だが両関取とも中日と9日目に土がつき、貴ノ岩関、蒼国来関、逸ノ城関ら平幕力士3人をあわせた5人が、優勝の可能性を残したまま終盤に向かった。
平幕力士が黒星をつけるなか地力に勝る白鵬関と稀勢の里関は勝ちを重ね、結局は2人により優勝争いに。だが14日目、白鵬関が貴ノ岩関に金星を献上し勝負あり。直接対決が組まれていた千秋楽を待たずして、稀勢の里関の初優勝が決定した。
前述の通りこの優勝が決定打となり、稀勢の里関は横綱昇進を果たす。19年ぶりの日本人横綱誕生は、この初場所での優勝で起こった。
横綱、大関は安定した場所を過ごせるか
2017年、横綱、大関の力士たちは波乱の一年だったと言えるだろう。各場所の結果こそ横綱、大関が優勝を果たしているが、鶴竜関を筆頭に多くが負傷に苦しんでいる。
一方で稀勢の里関と高安関がそれぞれ横綱、大関に昇進。白鵬関も復活を印象付ける二場所連続優勝を果たすなど、飛躍と苦悩が共存した印象がある。
そんな横綱、大関勢に期待するとすれば、2018年を通して安定した活躍をしてもらうことだろう。そのためにもこの一月場所に万全の調子で臨んでほしいところだが、特に奮起が期待されるのは鶴竜関だ。
2017年は負傷が続いた影響から九月場所終了時点でまだ優勝がなく、休場による不戦敗は実に40を数える。一月場所では怪我を直して持ち味のスピードのある相撲を見せてほしいものだ。
注目力士1:照ノ富士
注目したい力士を2人紹介する。まずは九月場所で大関から陥落してしまった照ノ富士関だ。照ノ富士関は1991年生まれのモンゴル出身力士で、25歳ながら2015年七月場所以来大関に在位し続けてきた。(2017年10月現在)
モンゴル出身の力士としては重量級の体躯の持ち主で、得意とするのは右の四つ。上手を取ってからはそのパワーで寄り切る形が多い。力強い相撲が持ち味。だがその武器である体重のせいか長らく膝に怪我を抱えている。大関陥落も怪我による黒星先行からの途中休場で九月場所を負け越したことによるものだ。
負傷がちではあるが、怪我との付き合いかた次第ではまだまだ一戦で戦える力士。秋巡業では精力的に汗を流し巻き返しを誓っていた。2018年に飛躍するためにもまずこの一月場所での活躍を期待したい。
注目力士2:貴景勝
続いて紹介するのは、若干21歳(2017年10月現在)の貴景勝関。貴乃花部屋期待の若手力士だ。本名は「貴信」で、彼が生まれた頃に現役で大活躍していた師匠の貴乃花親方から一文字とって名付けられた。
2017年の一月場所で新入幕を果たすと三月場所では敢闘賞、九月場所ではこの場所優勝した日馬富士関を倒し金星をあげ、殊勲賞に選ばれるなど、1年目から大いに活躍を見せている。
身長は低いものの、それを活かした突き押しの相撲が得意。突き押しの勢いだけでなく、冷静さも併せ持っており、相手の特徴を見て考えて相撲ができる力士でもある。
幕内1年目だったこともあるのか、場所中に失速するなどスタミナ面の不安を指摘されることもあるが、それが改善されればより怖い力士に成長するだろう。幕内2年目となる2018年を通して期待の一人だ。
張り詰めた空気の両国で誰が勢いに乗れるか
大相撲の一年の幕開けを告げる一月場所。寒さの厳しい冬真っただ中のため体調管理も難しいが、ここで良いスタートを切って勢いに乗りたいのはどの力士も同じ。2017年に飛躍した力士も苦悩した力士も、新年の張り詰めた空気に満ちた両国で気持ちを新たに土俵に上がることだろう。
また、“ご祝儀場所”の異名のままに台頭してきた若手力士の初優勝や、昇進が見られるかもしれない。ベテランと若手双方の活躍で目が離せない大相撲。2018年のますますの盛り上がりに期待したい。
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