橋本聖子以来30年ぶり5種目出場の「日本の顔」
2月の北京冬季五輪で「日本の顔」として期待されるのがスピードスケート女子の中長距離エース高木美帆(日体大職)だ。
27歳のオールラウンダーは、世界記録を持つ前回2018年平昌五輪銀メダルの1500メートルや銅メダルの1000メートル、2連覇が懸かる団体追い抜きに加え、500、3000メートルと合わせて5種目で代表入り。今季のワールドカップ(W杯)では主戦場の1500メートルで開幕から3連勝し、1000メートルでも5年ぶりに優勝と追い風が吹く。五輪史上日本女子初の1大会3冠も視野に入れている。
「スーパー中学生」と呼ばれ、北海道・札内中3年生だった2010年にバンクーバー五輪に初出場。2014年のソチ五輪は代表入りを逃してしまったが、それでも挫折を力に変えて成長を続ける。
5種目出場は1988年カルガリー五輪、1992年アルベールビル五輪で当時の女子全種目(500、1000、1500、3000、5000メートル)を滑った橋本聖子に並ぶ30年ぶりの快挙だ。
オランダ流と探究心で進化した万能型
天賦の才を持つスケーター、高木美帆は短距離から長距離までの抜群の滑走技術と持久力、旺盛な探究心を武器にあらゆる距離で「進化」を続けている。
スケート王国オランダから招いたナショナルチームのヨハン・デビット・ヘッドコーチの指導で量より質の科学的な手法も取り入れ、体幹や下半身の筋力が大幅にアップして滑りが安定感を増した。「オールラウンドで戦うことに面白さ」を感じている。
複数レースで争う世界選手権では2018年に短距離から長距離の4種目で争う「オールラウンド」、2020年に500メートルと1000メートルを2度ずつ滑る「スプリント」で総合優勝を達成。2020年全日本選手権でも500、1000、1500、3000、5000メートルを制し、全5種目の離れ業で頂点に立った。
ジュニア時代はサッカーでも活躍
5歳からスケートを始め、その実力は当時から同じ学年の中では頭一つ抜けた存在だった。幼少期からスポーツ万能で、夏場に取り組んでいたサッカーでは、男子と一緒にプレーしても当たり負けせず、世代別の女子の北海道代表にも選ばれた逸材として知られる。
小学生から中学3年までFWだった中学時代は地区大会決勝戦で決勝点をマーク。日本サッカー協会が全国の有望選手を集めた「ナショナルトレセン女子U―15合宿」に招集された経験もあるという。
北京五輪は個人種目で初の金メダルへ
名実ともにトップスケーターとなった高木美帆は完全燃焼した前回の平昌大会で個人種目の金メダルに届かなかった悔しさもある。
自身3度目の五輪となる北京大会で照準に定めるのは個人種目の1500、そして1000での金メダル。そのためにはテーマである「攻めきる滑り」ができるかに懸かっている。
頂点だけを見据え、円熟期を迎えた強さとぶれない精神力で、その力強い歩みを止めることはない。
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