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ブッフォンのいないユヴェントス 起こりうる3つの改革

2018 5/28 17:00dai06
ジャンルイジ・ブッフォンⒸShutterstock.com
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涙のサポーター、ブッフォンが歩いたスタジアム

ジャンルイジ・ブッフォンにとって、セリエA第38節エラス・ヴェローナFC戦はユヴェントスでの最後の試合となった。
噛みしめるかのようにピッチに立ったブッフォン。彼がボールに触れると、ホームのサポーターが一斉にどよめく。ブッフォンもそれに応えるかのように好セーブを披露し、笑顔でプレーを続けた。
前半をスコアレスで折り返すと、49分にはパウロディバラが先制ゴール、直後にはピアニッチがFKを沈め2点をリードする。

60分頃にはブッフォンが交代へ動き出したため、セリエAを代表する選手がピッチから見送るべく試合は一時中断。チームメイトは勿論、対戦相手であるヴェローナの選手も彼を拍手で見送るという感動的な時間が流れた。
その後ブッフォンは一旦ベンチに座ったが、直ぐにピッチの外へ出てスタンドをぐるりと歩き始める。スタンド前列で賛辞を贈るサポーター1人1人に笑顔で応えてみせたのだ。

試合中に異例ともいえる形のファンサービスだが、それを咎めるものはいない。おそらくあらかじめ監督やフロントとは相談済みだったのだろう。
人として選手として多くの人が憧れるブッフォン。レジェンドの退団を心から惜しみ、憂いに満ちた表情をする人や、声を張り上げる人、中継で抜かれるサポーターは様々だった。

試合後の優勝セレモニーでは、トロフィーを掲げたブッフォンがユヴェントスでのキャリアに終わりを告げた。そしてユヴェントスは、ブッフォンのいない「これから」を考え始めなければならないだろう。

改革その1、ドンナルンマの獲得が現実的に

ブッフォンがいなくなることでその後釜の獲得は急務となるだろう。これまでは彼の控えだったヴォイチェフ・シュチェスニー。彼は決して悪いGKではないが、ブッフォンと比べればどうしても見劣りしてしまう。
前述の最終節でブッフォンと交代で入ったカルロ・ピンソーリョは、この試合が初めてのセリエAデビューだったため、リーグ8連覇・CL制覇を狙うためにはやはり心許ない。

そうなるとブッフォンと同じレベルにある即戦力のGKか、ブッフォンを超えるくらいの逸材が必要だ。この条件に最も合致する選手といえば、ACミランのレギュラーであるジャンルイジ・ドンナルンマだろう。

10代でありながら既に高いクオリティを発揮しているドンナルンマ。3シーズン連続で30試合を超える出場数を誇り、その反応速度は一流だ。これほどの実力者ならブッフォンの後を安心して任せられる。
また、今後10年以上にわたり自国の選手をレギュラー起用できるこということは、チームにとってもメリットになる。

以前からドンナルンマの去就は定まっておらず、ここにユヴェントスがつけ入る隙は十分にある。ブッフォンがいない今、ユヴェントスが獲得へ動く可能性は以前よりも高まった。

改革その2、守備陣の血の入れ替え時が迫る

メンバーの多くが30歳以上と平均年齢が高いユヴェントス。最近は若返りを果たしつつあるものの、2016年夏には平均年齢が29.7歳で、CL出場クラブのうち最も高齢であると話題になった。

守備陣の一角で主力のジョルジョ・キエッリーニは30代半ば、同じく主力のアンドレア・バルザーリも40代手前だ。どちらも優れたDFで、思考を変えれば「経験豊富なベテラン選手が揃っている」とも言える。しかし現実的に守備陣の高齢化は、非常に深刻だ。

この2人よりも少し若いレオナルド・ボヌッチはミランへ去り、彼ら3人と“最強の盾“となっていたブッフォンももういない。今後の移籍市場では、ブッフォンの後継者獲得同様に守備陣の入れ替えにも大きな動きがあると予測される。
ダニエレ・ルガーニという期待の若手が徐々に台頭してきてはいるが、他のビッグネームの獲得があっても不自然ではないだろう。

改革その3、キエッリーニが主将に、副主将にマルキージオか

主将を務めていたブッフォンが去ったことで、これまで副主将を務めていたキエッリーニがその立場に就くことが予想される。経験豊富で闘志あふれるプレーが持ち味のキエッリーニ。彼であればブッフォン同様、チームメイトを力強く引っ張っていけるはずだ。

新しい副主将には、クラウディオ・マルキージオが適役だろう。これまで第3主将を務め、生え抜き選手である彼が昇格するのは自然なことだ。
現在ユヴェントスの中盤は人材過多の傾向にある。リーグ出場試合はわずか15試合、負傷も多く厳しい状況が続いた2017-18シーズンのマルキージオ。しかしブッフォンやキエッリーニ同様にユヴェントスをよく知る男が果たす役割は、ピッチのなかだけに留まらない。

ユヴェントスはこの2人を新たなリーダーに据え、これまで以上の強さを発揮していきたい。

悲願のCL制覇 ユヴェントスが目指す新たなステージ

SSCナポリの追随に冷や汗をかくこともあったが、2017-18シーズンもユヴェントスがセリエAを制覇。自前のスタジアムを建てた2011-12シーズン以降は順調でリーグ連覇7にも到達。もはやリーグ制覇も”当たり前”といっても過言ではない。

しかし幾度となく上位へ進出しているCLでは、国外の強豪レアル・マドリードCFに敗れている。ユヴェントスが次に目指すのは、ブッフォンの悲願でもあったCL制覇だろう。

新しい時代はすでに動き出している。ブッフォンはユヴェントスから去ってしまったが、共に戦ったチームメイトやフロントが改革を行い、チームを新たなステージへ引き上げることで彼の夢を繋ぐことができるのだ。