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ジェットコースターのチェルシーFC、激動の4シーズンを解説

2017 8/17 16:20dada
chelsea
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Photo by Mitch Gunn / Shutterstock, Inc.

乱高下するチェルシーFCの成績

英国ロンドンのチェルシー地区を本拠地とするチェルシーFC(以下、チェルシー)は、プレミアリーグの中でも強豪として知られるクラブだ。
ビッグ5と呼ばれるようにはなったものの、その歴史はまだ浅く新興クラブだという見方も少なくない。
特に2000年代に入ってからは、度重なる監督の交代、定まらないストライカー問題に苦しみながらではあるが、多くのタイトルを獲得した。しかし、2015?16シーズンのようなリーグ10位という悲惨な結果があったことも事実だ。選手とサポーターは、ジェットコースターに乗っているかのようなシーズンを過ごしてきた。

モウリーニョとの再会は幸か不幸か

名将とされるモウリーニョ監督を招聘したのは、2013?14シーズンのことだった。同監督とは過去にも契約を結んでいたが、途中で解任していた。チェルシーの主将であるDFジョン・テリーは、恩師との久しぶりの再会をとても喜んだ。
このシーズンは他のビッグクラブには大勝をあげつつも、格下クラブから勝利を逃すシーズンとなった。しかし、チームの士気は格段に上がり翌シーズンに期待がもてたように思える。
「モウリーニョのクラブは2年目からが本番」と多くのメディアが報じたように、2014?15シーズンは快進撃を続ける。エデン・アザール選手やセスク・ファブレガス選手、ブラニスラヴ・イヴァノビッチ選手らがシーズンを通して好調を維持。見事リーグタイトルを獲得した。
そしてモウリーニョ指揮下翌3年目のシーズン、まさかの展開が起こる。開幕戦のスウォンジー・シティ相手に2?2のドローとなった。GKのクルトゥワが退場し、試合内容的にも満足いくものではなかった。2015?16シーズンは、昨シーズンにみられた好調が全くみられず、黒星を重ねていく。一時は降格圏内に入りかけるほどまで順位は落ち、12月にモウリーニョ監督は解任された。

△モウリーニョのクラブは、2年目で結果を出し3年目で終わる

「モウリーニョ監督のクラブは2年目で結果を出す」ということはすでにお話した。ただ、この言葉には「3年目で終わる」といった言葉も続く。チェルシーのように3年目で一気にクオリティが落ちてしまうのだ。
この原因には、「モウリーニョ監督が選手に求めるタスクが厳し過ぎる」といったことが挙げられている。攻撃陣にも守備貢献を求め、前後半常に走り続けることを同監督は求める。少しでも守備をさぼると、叱責が飛んできる。さらには医療スタッフと裁判沙汰になるほどの衝突も起きていた。モウリーニョ監督自身も思うようにいかない結果に辟易していたのだろう。
選手たちは精神的にもたなくなった。1年目で高めた士気は、2年目でその結果を出す。しかし、3年目はそのモチベーションが続かなくなる。モウリーニョ監督の解任直前には、「選手と言い争いがあった」、「選手から匿名での非難があった」などの噂も飛び交った。

コンテ監督の就任で復活!一躍優勝候補の筆頭へ

モウリーニョ監督の解任後は、引き継ぎの名人とされるフース・ヒディンクが約半年間チェルシーを率いた。彼は2008?09シーズンにも途中からチェルシーを率いたことがあり、疲れ果てた選手たちのパフォーマンスの向上に努めている。
そして、2016?17シーズンにはアントニオ・コンテ監督を招聘。ユヴェントスFC、イタリア代表の監督で鳴らした彼は、大きな期待の下、チェルシーサポーターに迎えられた。
シーズン開始当初は基本の4バックを使っていたが、5,6節とリヴァプールとアーセナルに連敗する。ライバルチーム相手に計5失点での敗北は非常に痛い結果であり、一時は解任説も流れた。「昨シーズンから続く、チェルシーの不調は治りづらい難病のようなもの」といった表現も見受けられたほどだ。
しかし、コンテ監督は自身の持ち味である3バックにシステムを変更。そこからチェルシーは13連勝を重ねリーグ首位に立つ。コンテ監督の3バックは3?4?3の構成で、中盤委はWBを置くことで知られている。このWB常に上下動を繰り返し、攻守で顔を出す。その分、さらに上のポジションに居る10番アザール選手やペドロ・ロドリゲス選手には自由が生まれる。守備へのタスクが減る分、より攻撃に動けるようになったのだ。エースストライカーであるジエゴ・コスタ選手も好調で、19試合で14得点を獲得している。コンテ監督の就任で、終わらないように思えたチェルシーの不調は一気に吹き飛び、一躍優勝候補の筆頭に躍り出た。

戻った笑顔!コンテと選手の絆

コンテ監督が就任してからは、チェルシーの選手に笑顔が戻った。試合の練習前にも、試合終了直後にも笑顔で顔を合わせる姿が報じられ、確かな絆ができていることをうかがわせる。昨シーズン、モウリーニョ監督との間にフラストレーションを感じていた選手は大勢いた。気難しいことで知られるジエゴ・コスタ選手は、先発を外された時にビブスを放り投げたほどだ。
また、コンテ監督は試合後に、1杯のビールを公に認めているようだ。これは疲労回復に効くからとの理由で、公に認めていることだそうだ。普通飲酒を奨励する監督は少なく、コンテ監督ほどの名将であればなおさら許可するようなことではない。ただ、これも好調が維持できている余裕であり、コンテ監督の人柄でもある。ちなみにコンテ監督はイタリア製の蜂蜜のキャンディーをなめることを好んでおり、このキャンディーがないと大声が出せないのだそうだ。こういった些細な情報が報じられるのも、監督の人柄と好調に因るものだろう。
こういったことからもコンテ監督とモウリーニョ監督には、選手の扱い方や監督としての人柄に大きな違いがある。どちらが良いか悪いかと一概に判断することはできないが、チェルシーの場合は、シーズンの結果がすべてを物語っている。2016?17シーズンはCL出場権を奪還するだけでなく、リーグタイトルの獲得も狙えるだろう。