オイルマネーで車8台、25部屋以上の自宅も用意
サッカーのブラジル代表で栄光の10番を背負う31歳のネイマールが、フランス1部リーグの名門パリ・サンジェルマンからサウジアラビア1部のアルヒラルに電撃移籍した。
英BBC放送によると、8月15日に両クラブが合意した内容は推定年俸1億5000万ユーロ(約240億円)の2年契約。単純比較はできないが、米大リーグの大谷翔平(エンゼルス)の今季年俸3000万ドル(約43億5000万円)の5倍以上となる超大型契約である。
潤沢なオイルマネーを背景に移籍金は9000万ユーロ(約142億円)に出来高も加わるとされており、このほか英メディアは車8台の貸与、移動のプライベートジェット、25部屋以上の自宅やプールの付帯条件を報じた。
米経済誌フォーブス(電子版)は3月、米大リーグ選手の今季の総収入ランキングで大谷翔平が6500万ドル(約94億円)で1位になったと公表しているが、そんな年俸を含めた数字をはるかに上回る破格契約だ。
2017年にバルセロナ(スペイン)からパリ・サンジェルマン入りし、公式戦173試合で118得点をマークしたネイマールは「サウジアラビアのプロリーグには今、とてつもないエネルギーと質の高い選手がいる。常にグローバルな選手でありたいと思っていたし、新しい場所で自分を試したい」と満面の笑顔で決意表明した。
クリスティアーノ・ロナウド、ベンゼマら大物もサウジ入り
中東のサウジで働くスポーツコンサルタントの関係者が今春、筆者に「2030年までに石油大国サウジはスポーツの超大国になる。それが国家戦略でもある」と予言していた言葉が印象深い。
サウジのサッカー界は今、プロリーグに世界的なスター選手が続々と集結している。1月にポルトガル代表の世界的FWクリスティアーノ・ロナウドが推定年俸300億円超でアルナスルに加入したのを皮切りに、元フランス代表のバロンドール受賞者カリム・ベンゼマや守備職人のエンゴロ・カンテ、セネガル代表の点取り屋マネら大物選手がサウジに相次いで移籍。
この背景にはサウジの政府系ファンドが数十兆円規模の潤沢な資金をベースに強豪4クラブを買収し、国を挙げてスポーツ立国に乗り出した事情がある。
ネイマールが移籍したアルヒラルは今春のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)決勝でJ1浦和に敗れて連覇を逃したが、世界トップクラブを目指す強豪でもある。「ネイマールは国際的なアイコン」と呼んで多方面の影響力に期待を込める。
2029年冬季アジア大会決定、目指すはサッカーW杯や中東初の五輪開催
サウジが国家戦力としてスポーツに投資する対象はサッカーだけでなく、政府系ファンドの支援を受けてスタートした超高額賞金ツアー「LIVゴルフ」、自動車F1レース、ボクシングのメガマッチ、eスポーツ国際大会など目白押しだ。
中東で初めてとなる2029年冬季アジア大会のサウジ開催も決定しており、会場はイスラエルやエジプトに近い北西部で開発が進む未来都市「NEOM(ネオム)」の山岳リゾート、トロヘナ地区を活用。中東で雪のイメージは薄いが、標高2000メートル前後の数少ない降雪地で、人工雪も用いる計画という。2034年の夏季アジア大会はリヤド(サウジアラビア)での開催が決まっている。
さらにサッカーのワールドカップ(W杯)や五輪招致も見据えている。サッカーW杯は2022年に隣国カタールで開催されており、現実的な目標ともいえる。これまで人権問題などで国際的な批判を浴びることも少なくなかったが、サウジが国家として目指すのは石油依存の経済からの脱却であり、多角化の一環でスポーツや観光産業への投資を進める。
こうしたビジネスの活性化で国全体のブランド力を高め、国際的な影響力を拡大していく狙いがあり、前出のスポーツコンサル関係者は「サッカーはその第一歩。集大成として中東初の五輪開催も視野に入れている」と説明した。
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