アトレチコ・カンベ移籍のため9月中旬にブラジルへ
これまで海外7カ国でサッカー選手としてプレーし、麻雀のプロとしても活動する異色の「二刀流プロ」田島翔(40)がブラジルのサッカーチームに移籍することになった。
移籍先はブラジル・パラナ州の3部リーグ、カンピオナート・パラナエンセに所属するアトレチコ・カンベ。チャンピオンシップ(予選リーグ5試合+決勝トーナメント)に出場するため9月中旬にブラジルに渡り、12月までの短期契約だが、小学校の卒業文集に「ブラジルでプロサッカー選手になる」としたためていた田島は「40歳で夢が叶った」と目を輝かせている。
田島は函館工業高を卒業後、シンガポール、クロアチア、スペイン、ニュージーランド、アメリカ、韓国、サンマリノ共和国と7か国の海外リーグをわたり歩き、日本でもFC琉球やロアッソ熊本などでプレーしてきた。今回はアメリカのラスベガス・シティ時代のブラジル人監督が現在はブラジルで代理人をしており、5月にオファーを受けたのがきっかけ。一度は断ったが、「幼い頃からの憧れだったので行かないと後悔する」と翻意し、移籍を決断した。
「韓国やサンマリノでコロナ禍に直面したこともあって、海外での生活は厳しいと思っていたんです。ブラジルへの思いもなくなりつつあったんですが、こんなチャンスは断ると二度とないと思って決断しました」
昨年まで神奈川県サッカーリーグ3部の江の島FCでプレーしていたものの、現在は実戦から遠ざかっている。それでも「40歳でヨーロッパの組織的なサッカーはきついですが、ブラジルは個人技で魅了するスタイルなのでやりやすいと思います」と前向きに捉える。ラスベガス時代に中盤でゲームメイクしていたプレーを、代理人を通じて調査したアトレチコ・カンベ側も高評価しているという。
現在は瞬発系トレーニングや心肺機能を上げるトレーニングを積んでいる。「サッカーの技術は衰えませんが、体力が落ちたり、次の日に疲れが残りますね」と年齢的な衰えを吐露しながらも、夢に向かう表情には充実感が漂う。
「永遠の憧れ」三浦知良の“聖地巡礼”も計画
田島がブラジルに憧れを抱いたのは小学5年生の頃。三浦知良がブラジルでプロとして活躍していたことを知って、ブラジルでのプレーを夢見た。ただ、これまで海外7カ国でプレーしてきたが、不思議とブラジルには行ったことすらなかった。40歳にして、諦めかけていた幼い頃からの夢が実現するとは誰よりも本人が一番驚いているだろう。
「実戦から離れていますが、やれば馴染めるでしょう。ポルトガル語は話せませんが、スペイン語と似ているのでなんとかなると思います。あとはこれまで同様、辞書を持ち歩きます」
楽観的にそう話せるのもこれまでの経験があるからだ。アメリカの留置場で勾留されたり、反日感情が高まっていた韓国で風当たりの強さを痛感したり、コロナ禍でロックダウンしていたサンマリノの小さなカフェで独りクリスマスにサンドイッチをつまんだり…。
今となっては、掛け替えのない経験が全てがブラジルにつながっていたのかと思えるほどだ。固定給に加え、試合給は1試合約20万円、住居と食事は提供されるが、お金には代えられない夢が目の前にある。
オファーを受けた当初はカズがかつてプレーしたキンゼ・デ・ジャウーへの移籍を希望したが、現在は23歳以下のチームとなっていたため断念。それでも「ジャウーにはカズさんの記念碑があるそうなので行ってみたい。(カズがプレーした)サントスにも行きたいですね」と“聖地巡礼計画”を明かす表情はサッカー少年そのものだ。
麻雀リーグ戦は休節、現地で日系人の麻雀大会参加にも意欲
田島は2022年7月に麻雀のプロ団体「RMU」のプロ試験に合格し、プロ雀士となった。これまでもサッカーをやりながら麻雀のリーグ戦に出場し、麻雀教室の講師なども努めてきたが、ブラジル渡航後、半年間のリーグ戦は「休節」が認められた。
「麻雀界にサッカー選手としてブラジルに行く人はいないので応援してもらっています。ブラジルでは日系人の麻雀大会があるので参加したいですね。インターネットでも麻雀はできるし、腕が落ちないように工夫します」と雀士としてのプライドものぞかせる。
自身が日本で経営している子供向けサッカースクール「フットライズサッカーアカデミー」とアトレチコ・カンベが提携することも決定。今後はブラジルからコーチを招いたり、逆に子供たちをブラジルに派遣したり、交流を深めていくつもりだが、カリキュラムの中に麻雀も加えたいという。
「サッカーはミスをしても助けてくれる仲間がいますが、麻雀は一人です。僕は麻雀をすることでサッカーでもミスを恐れずにプレーできるようになりました。麻雀はコミュニケーション力がつくし、サッカーにも活きるんで、子供たちにも教えたいですね」
選手としての契約は年内までだが、「まだ辞めるつもりはない」と断言する田島。チャンピオンシップでアピールすれば契約延長や他クラブへの移籍話が浮上する可能性もゼロではない。今回の移籍によって関係性を強化できれば、様々な可能性が膨らむ。
いずれはブラジルと日本の子供がサッカーを楽しんだ後、麻雀卓を囲むなど、今までは想像もつかなかったような交流が生まれるかも知れない。自身の夢と麻雀界の期待も背負い、田島は8カ国目となるブラジルへ向かう。
【関連記事】
・サッカーと麻雀の超異色二刀流プロ、ラスベガスでの珍体験と今後の夢
・三浦知良55歳、現役にこだわるキングカズが放った唯一の「怒声」
・日本サッカー界7つのギネス記録、三浦知良、中山雅史、中村憲剛、澤穂希らが保持