連帯貢献金とは、どういう制度?
サッカー界でよく耳にする「移籍金」。所属クラブとの契約期間が残っている状況で、他クラブに移籍する場合に発生する違約金のようなものだ。そのため、契約期間が終了するタイミングの移籍では発生しない。
移籍金のある移籍で、かつ国外のクラブに移籍をした際には「連帯貢献金」が発生する。連帯貢献金はFIFAが定める国際ルールで、所属元クラブに支払われる移籍金のうち5%を、12~23歳を過ごしたクラブが請求できる制度のこと。国内移籍では発生しないため、Jリーグ間やプレミアリーグ間など、同一リーグでの移籍には適用されない。
連帯貢献金には、国際的な移籍をする優秀な選手を育てたクラブが対価を得られたり、国を越えた青田買いに対し育成したクラブを金銭的に保護したりという目的がある。
具体的な金額は、12~23歳のうち所属していた年数で決定される。算出方法は2つ。
12~15歳の所属:移籍金の0.25%×在籍年数(最大4年)=移籍金の最大1%
16~23歳の所属:移籍金の0.5%×在籍年数(最大8年)=移籍金の最大4%
12~23歳まで1つのクラブに所属していた場合は、移籍金の5%がそのまま分配される。また連帯貢献金は1度きりではなく、選手が国外へ移籍金の発生する移籍をするたびに請求できる。ただし申請をしなければ受け取れず、公立中学・高校などは申請をしないケースもあるようだ。
日本代表クラスの選手を育てたクラブには億を超える収入も!?
移籍金の5%といえど、日本代表など評価の高い選手では連帯貢献金が億を超える金額になることもある。
近年では、冨安健洋(アーセナルFC=イングランド)の例が挙げられる。2021年9月にボローニャFC(イタリア)からアーセナルへ移籍した際、移籍金は総額30億円と報道された。その金額が正しければ、アーセナルからボローニャへ支払われる移籍金の5%、1億5,000万円が連帯貢献金となる。
冨安は13~19歳の間、アビスパ福岡の下部組織とトップチームで過ごした。そのため移籍金の2.75%(8,250万円)をアビスパ福岡が受け取ったことになる。冨安は2018年1月にも、シント=トロイデンVV(ベルギー)からボローニャへ約10億円といわれる移籍金で移籍しており、この時にもアビスパ福岡は推定2,750万円を得ている。
2回の移籍を合計すると1億円を超え、冨安が今後国外のクラブへ移籍金の発生する移籍をすれば、さらに連帯貢献金を得られることとなる。
連帯貢献金が生み出す好循環
連帯貢献金は、優れた選手を育成することで、冨安の例のようにクラブに大きな利益をもたらす。各クラブが、選手育成に尽力する要因の1つとなる。
また12歳の所属クラブから請求できるため、冨安の場合は12歳までを過ごした三筑キッカーズ(福岡県)にも合計1,000万円ほどをもたらしたはず。町クラブにとって、極めて大きな金額だろう。
元日本代表の香川真司(シント=トロイデンVV)は、2012年にボルシア・ドルトムント(ドイツ)からマンチェスター・ユナイテッドFC(イングランド)へ、2014年には反対にマンチェスター・ユナイテッドFCからボルシア・ドルトムントへと移籍した。
2度の移籍で、香川が中学1年生から高校2年生の途中までを過ごしたFCみやぎバルセロナ(宮城県)は、合計で約5,000万円ほどの連帯貢献金を得た。クラブはこの一部を使用し、老朽化した人工芝の全面張り替えを行っている。
優秀な選手を育てることが連帯貢献金につながり、それを次世代の選手育成に還元していく。連帯貢献金は、サッカー界の好循環を生み出している。
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