古橋亨梧、旗手怜央、前田大然、井手口陽介の4人衆で王座奪回
サッカーのスコットランド・プレミアリーグの名門セルティックといえば、元日本代表MF中村俊輔が「伝説のレフティー」として今も語り継がれている。筆者もセルティックの地元グラスゴーに足を運ぶ度に、タクシーの運転手やサポーターから「ナカムラは元気か? 今、どうしてるんだ?」と聞かれたものだ。
そんな1887年創設のセルティックが5月11日、アウェーでダンディー・ユナイテッドと1―1で引き分け、2季ぶり52度目の制覇を決めた。
昨季レンジャーズに勝ち点25の大差で10連覇を逃したクラブは今季、異色の「日本化」を推進して王座奪回に成功。スコットランドの枠組みを飛び越え、オーストラリア代表を率いた実績もあるアンジェ・ポステコグルー監督をJ1横浜FMから引き抜き、昨夏にJ1神戸から加入したエース古橋亨梧が世界クラスの瞬発力を生かした動き出しや多彩なシュートを武器に今季リーグ戦で12ゴール、公式戦通算20得点と才能を開花させてチームをけん引した。
冬の移籍期間には圧倒的なスピードと決定力を持つ前田大然がJ1横浜FM、攻守のバランス能力に優れた旗手怜央がJ1川崎F、ボール奪取能力の高い井手口陽介がG大阪からそれぞれ新戦力として補強され、日本4人衆がチームの快進撃を支えた形だ。
1年目のシーズンを終えた古橋は負傷で合計約4カ月離脱した時期もあったが、スコットランド・リーグ杯と合わせた2冠達成にSNSで「最高にハッピー。このチームの一員であることを誇りに思う」と喜びのメッセージを投稿した。
SNSに日本語アカウント、攻撃的戦術が浸透
セルティックのツイッターには公式日本語アカウントも作成され、クラブの「日本化」がSNSでも進む。ホーム最終戦を勝利で有終の美を飾ると、前田は「優勝って最高だ!!!」とコメント。旗手は「日本の皆さん、やりました」と動画で絶叫し喜びをかみしめた。
今季のチームは序盤で3勝3敗ともたついたものの、攻撃的な戦術が浸透するとリーグ31戦無敗(25勝6分け)と勢いが止まらなかった。J1横浜FMでも優勝を経験しているポステコグルー監督の構想に合わせて補強し、的を射た「日本化」によるテンポの速いパスサッカー革命が奏功した。
ウクライナに侵攻したロシアのクラブが欧州チャンピオンズリーグ(CL)から除外されたため、来季は繰り上がりでCL本戦から出場することも決まっている。
英メディアも驚き、日本路線の新たな風
これまで欧州サッカー界では日本企業が経営権を握るベルギーのシントトロイデンや、経営陣と日本との関係が深いポルティモネンセ(ポルトガル)などで複数の日本選手が同一チームに複数在籍してきた例はある。
ただJ1で実績を積んだ外国人監督が引き抜かれ、その指揮官の構想でJリーグから日本選手も戦略的に複数補強して新たな風を吹き込む例はまれだ。
当初はアテネ出身のポステコグルー監督も欧州での実績や知名度に乏しく、就任当初はサポーターから不安視もされたという。日本選手を獲得のターゲットにしたのは技術的な高さも背景にあるが、英メディアも「日本選手のタレントや努力は信じられないもので、大きな役割を果たしている」と日本路線の成功について驚きを持って称賛している。
旗手は2月の宿敵レンジャーズ戦で2得点1アシストと活躍してチームを首位に押し上げ、前田も公式戦8得点で異国の地で地歩を固めた。
かつて中村俊輔が欧州サッカー界で一世を風靡し、クラブの象徴となったチーム。MF水野晃樹も輝きを放った。その系譜を受け継いだ古橋、旗手らはセルティックと長期契約を結んでおり、前田も完全移籍のオプションが行使されることが確実とされている。加入1年目からリーグ優勝に貢献した「日本カルテット」は、来季も欧州で活躍が期待されそうだ。
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