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冨安健洋がアーセナルでこなすマルチタスク、移籍金30億円は安い?

2021 9/25 11:00桜井恒ニ
アーセナルの冨安健洋,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

プレミア2試合でデュエル勝率82%!守備崩壊したアーセナルの立て直しに大貢献

欧州の移籍市場最終日にセリエAボローニャからプレミアリーグのアーセナルに4年契約で移籍したDF冨安健洋が、大活躍を見せている。

代表ウィークを終えてチームに正式合流した冨安は、9月11日のノリッジ戦と同月18日のバーンリー戦に右SBとして先発出場。ボローニャでレギュラーとして活躍していたが現地ではまだ認知度が低く、下馬評も控えめだった。

しかし、2戦で出色のパフォーマンスを披露。いずれも1-0の無失点勝利に貢献した。

プレイの数字も目を引く。スポーツ統計サイト「FBref.com」および「SofaScore」によれば、冨安のプレミア2試合のパス成功率は78.3%。空中戦の勝率は91%、地上戦の勝率は67%で、合算してデュエル勝率は82%という高い数字をマークしている。

冨安加入前のアーセナルは3試合9失点。戦列復帰したCBガブリエウ・マガリャンイスや新加入したGKアーロン・ラブズデールの存在も大きいが、冨安効果に異論を挟む者は少ないだろう。

ちなみにバーンリー戦に先発した守備陣の4人全員が東京五輪世代。冨安は22歳、右CBのベン・ホワイトは23歳、左CBのガブリエウは23歳、左CBのキーラン・ティアニーは24歳。ラムズデールも23歳で、平均年齢23歳だ。誰かが移籍さえしなければ、この5人が3〜4年以上にわたってアーセナルの守備を支えるかもしれない。

冨安の強みはインテリジェンスと勘の鋭さ

アーセナルで冨安がこなすタスクは多い。

右外に張り、サイドから組み立てに参加したり、ライン際を駆け上がったりするSBの基本の働きがまずある。

2つ目は偽サイドバックのように内へ絞り、中盤ボランチの位置で組み立てに参加する(というより、隣のホワイトは大外に開く右SBにパスしない癖があり、ボールをもらうには内に絞るしかない)。時にはそのままペナルティエリア近くまで顔を出し、攻撃参加する。

3つ目は、空中戦が苦手なホワイトのケアだ。相手に攻められている際はサイドを調整しつつ内側に絞り、ホワイトにかなり近い位置で守備に奔走することもある。バーンリー戦でもボールがホワイトの頭上を超えるが、ガブリエウと一緒になってピンチを回避する好守備を見せている。

一対一の対応も見事だ。対峙する敵と絶妙な距離感で接し、駆け引きに長けている。デュエル勝率の高さにもその成果が如実に表れている。まるでベテランのようなプレイぶりは、アーセナルのサポーターを納得させるに十分だ。

また冨安はSB、CBなどポジションでくくるのがナンセンスに感じるほどピッチ上を幅広く動く。ミケル・アルテタ監督が要求する複雑なタスクもよく理解し、状況に応じて最適解のプレイを実行できるインテリジェンスと勘の鋭さがある。おまけにどのプレイも高水準。ここまでの働きを見るかぎり、最大30億円と言われる移籍金は安いくらいだ。

上位勢との対戦で問われる真価、レギュラーは不動か

ただし冨安が先発した2試合は、リーグ下位のクラブとの試合だった。評価を下すのは時期尚早だ。

次節9月27日のトッテナム戦、ノース・ロンドン・ダービーではソン・フンミンやハリー・ケインら世界的FWとの対戦が控えている。

その後もサディオ・マネ、モハメド・サラー、ロベルト・フィルミーノの強力3トップが集うリヴァプール、クリスティアーノ・ロナウドが復帰したマンチェスターU、ジョゼップ・グアルディオラ率いるマンチェスターC、CL覇者にしてロメル・ルカクを擁するチェルシーとの対戦も待っている。

冨安の真の評価が定まってくるのは、これら強豪との試合を一巡りしてからだろう。

とはいえ、アーセナルの台所事情をかんがみて、冨安はもうチームの守備戦術に欠かせない選手と言って過言ではない。よほどパフォーマンスが低下しないかぎり、たとえソン・フンミンやロナウドに遅れをとっても、冨安がレギュラーポジションを奪われる可能性は低いだろう。

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