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サッカーJ1の大量得点試合ランキング、W杯やギネス記録は?

2022 9/3 06:00小林智明
横浜F・マリノスのレオ・セアラ,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

怒涛のゴールショーに沸いた柏vsFC東京

8月27日のJ1リーグ27節・柏レイソル対FC東京戦は、6-3と激しい乱打戦をFC東京が制した。サッカーでは「ウノゼロ(1対0)」「クリーンシート(無失点)」といった守備を称える用語が頻繁に使われ、大量点が入る試合は比較的珍しい。ミドルゾーンでのジリジリとした攻防が続き、苦心の末にゴールが生まれ、プレーヤーもファンも感情が爆発するのがサッカーの醍醐味だ。

一方で、ゴールラッシュや手に汗握るシーソーゲームなど大量点が入る試合に時々、出くわすことも。そういった試合は内容面で大抵「大味」と呼ばれ、賛否両論ある。それでも多くの得点シーンを目の当たりにできるのは、見る側にとって普段のゲームよりお得感があるのは確かだろう。

今季J1でもここまで1ゲームの中で計6回以上もゴールネットを揺らした“お得な試合”が13試合あった。それらを得点が多い試合順にランキング形式にして紹介したい。

J1大量得点試合ランキング


第1位は、冒頭の柏vsFC東京。両チーム合計で9得点を積み上げ、「約10分間に1点」を挙げた計算になる。

試合は常にFC東京がリードする展開。2-1、3-2、4-3とスコアは推移し、柏は追いすがるも、81分にDF上島拓巳が2枚目のイエローカードをもらい、痛恨の退場…。ほころびができた守備網を途中出場のアダイウトンらがいとも簡単に破り、84分、89分に加点したFC東京が、今季チーム最多得点の大勝を飾った。

FC東京は、今季より就任のアルベル監督の攻撃サッカーを推し進める過程で、11節・対アビスパ福岡に1-5、18節・対サガン鳥栖に0-5と九州勢に惨敗し、生みの苦しみも味わった。シーズン後半に入り、志向するポジショナルプレーがこなれて、攻撃力が開花したといえる。

柏は15節に北海道コンサドーレ札幌相手に6-1で圧勝した試合もあったが、時折ディフェンスラインが決壊。10節の鳥栖戦(1-4)、18節の横浜F・マリノス戦(0-4)などでも多くの失点を許し、敗れている。

鹿島vs鳥栖は名勝負、横浜FMは今季J1最多得点の実力発揮

ランキング2位は、計8得点の2試合。まず15節の鹿島アントラーズ対鳥栖、この一戦はまさに死闘だった。49分までに0-3と大きなビハインドを負った鹿島が諦めずに怒涛の攻撃を繰り広げ形勢逆転、92分に同点とする。

さらに、94分にFW染野唯月の一撃で逆転に成功。これで勝負ありと思いきやラストワンプレーの鳥栖のCK、DF田代雅也がゴール前に詰めて、この日2点目となる同点弾を決めたのだ。アデショナルタイムに3点が入る異例のゴールショーは、今季指折りの名勝負である。

鹿島は、やはりホームでの20節・C大阪戦でも3-3の激闘ドロー劇を演じている。鳥栖も23節の清水エスパルス戦で同じく3-3、加えて7節・札幌戦(5-0)、10節・柏戦(4-1)、18節・FC東京戦(5-0)と3つの爆勝を収め、勢いに乗ると止まらない。

2位のもう一試合は、国立競技場が会場となった清水のクラブ創設30周年記念マッチ(19節)。相手は4連勝中で当時首位の横浜FM、同17位の清水はゼ・リカルド新監督体制になって3戦目と分が悪かった。戦前の予想通り「点を取られたらそれ以上の点を取る」横浜FMらしさが炸裂。レオ・セアラのハットトリックもあり、前半2-1、後半3-2と真っ向勝負の打ち合いで競り勝った。

今季J1最多総得点「51」を稼ぐ横浜FMにとって、大量得点はそれほど珍しい事象ではないのかもしれない。昨季35節では8-0でFC東京を粉砕、今季も9節の対川崎フロンターレ(4-2)をはじめ、13節の対湘南ベルマーレ(4-1)、18節の対柏(4-0)でも自慢の連射砲が発動している。

ただ唯一、乱打戦で引き分けに終わったのが11節の浦和レッズ戦。前半は3-0で圧倒しながら、後半は大反攻に転じた浦和に、キャスパー・ユンカーのハットトリックで巻き返されてしまった。

その浦和は、ジュビロ磐田が大のお得意様。ホーム&アウェイでそれぞれ4-1(5節)、6-0(25節)と大勝。敵地でダヴィド・モーベルグ、小泉佳穂の各2点を含む破竹の6ゴールを奪ったゲームが、現状では今季J1最多得点差記録になっている。

ギネス記録はなんと149対0!

J1歴代の最多得点差試合は先に触れた2021年の横浜FM8-0FC東京と、1998年1stステージ6節・磐田9-1セレッソ大阪の8点差がタイ記録。互いが点を奪い合った最多得点試合は、同じく1998年の1stステージ17節・柏7-5セレッソ大阪の計12点だ。

J2はそれを上回る。2019年シーズン42節の柏13-1京都サンガF.C.が点差も含めて最多得点記録で、当時エースのオルンガが一人で驚異の8得点を挙げた。

世界に目を向けると、FIFAワールドカップ本大会史上の最多得点差試合は1982年スペイン大会のハンガリー10-1エルサルバドル、1974年西ドイツ大会ユーゴスラビア対ザイールと1954年スイス大会ハンガリー対韓国の各9-0が並ぶ。また、同スイス大会の準々決勝では、オーストリアが地元スイスを7-5で破る最多得点記録も生まれた。

記憶に新しいのは、2014年ブラジル大会のドイツvsブラジル。スコアは7-1、王国ブラジルがホームで次々とゴールを割られた無残な姿は、世界中に衝撃を与えた。

ちなみにギネス記録は、ラグビーやバスケの大差のスコアかと見紛う149対0。嘘のような本当の出来事は、2002年10月のマダガスカルリーグのASアデマ対SOレミルヌで起きた。レミルヌはその前節に、審判の疑惑の判定による失点が響いて優勝の可能性が消滅。消化試合となったこのゲームで、前節の判定への抗議を目的に149点すべてをオウンゴールで献上したのだという…。

閑話休題。昨季20チームが参戦したJ1では、1試合計6点以上の大量得点ゲームが最終的には18試合あった。2チーム減った今季は昨年より試合数が減るものの、現時点での大量得点試合(6点以上)の数は、昨年の同時期と比べほぼ変わらない(昨年は8月終了時点で12試合)。リーグ戦も終盤戦に突入するが、たくさんのゴールが詰まったバリュー感の高い試合に、まだ遭遇するに違いない。

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