降格争うクラブの動きが活発に
J1で17位に低迷していたガンバ大阪は8月17日、片野坂知宏監督の解任と、今月コーチに就任したばかりだった松田浩氏の新監督就任を発表した。今季招聘した片野坂知宏氏のもと攻撃的なサッカーを目指していたガンバ大阪は、ゾーンディフェンスの申し子である松田浩氏のもと、残留を目指す。
また元スペイン代表のアンドレス・イニエスタらを擁しながら現在16位のヴィッセル神戸は、今季監督交代を3度敢行。夏の移籍市場でDFマテウス・トゥーレルを獲得するなど、なりふり構わず残留を目指している。
低迷していた清水エスパルスも、6月に平岡宏章氏からゼ・リカルド氏へと監督を交代。夏の移籍市場では元日本代表の乾貴士と北川航也、ヤゴ・ピカチュウと次々に獲得。そこから調子を上げ、現在12位まで順位を上げてきた。
この他にも残留争いに巻き込まれている各クラブは夏の移籍市場で即戦力の確保に動き、残留へ必死だ。それほどまでに残留したいJ1と、降格した場合に戦うこととなるJ2とはどれほど異なるのだろうか。
J1とJ2では何が違うのか?営業収益・観客動員数を比較
実際にここ数年で昇格や降格を経験し、J1とJ2を経験したクラブのそれぞれのカテゴリーでの営業収益、平均観客動員数を比較する。
2020年度と2021年度の営業収益を比べると、J2からJ1に昇格した徳島ヴォルティスは16億7200万円から27億4500万円へと10億円以上もの大幅アップ。アビスパ福岡も15億3800万円から21億3200万円へと、約6億円アップしている。
2019年度と2020年度の比較では、J2からJ1に昇格した柏レイソルは31億4000万円から46億1300万円と実に15億円近くアップ。横浜FCは18億4100万円から21億6500万円へと、こちらも3億円以上アップしている。
反対にJ1からJ2へと降格した松本山雅FCは、27億1100万円から19億2800万円へと約8億円のダウン。ジュビロ磐田は38億1300万円から28億6700万円へと約10億円のダウンとなっている。たった1年でこれほど上下動するとクラブ全体に大きな影響を与え、それぞれの待遇面に大きな変化が生じることになる。
観客動員数については、コロナ禍の入場制限などでリーグ全体が大きな影響を受けているため、コロナ禍以前の2018年と2019年を比較した。
1試合平均入場者数を比べると、J2からJ1に昇格した松本山雅FCは13,283人から17,416人へと4000人以上のアップ。大分トリニータは8,907人から15,347人へと6000人以上アップしている。
反対にJ1からJ2に降格した柏レイソルは、11,402人から9,471人へ約2000人ダウン。V・ファーレン長崎は11,225人から7,737人へと、3000人以上のダウンとなっている。
これらのデータから、J1とJ2では営業収益も観客動員数も大きな差が生じることがよくわかる。
資金力があっても長年J1復帰できないクラブも
応援するチームの調子が上がらない際、サポーターからは「落ちても上がればいい」「J1で勝てないよりJ2で勝つほうがいい」という意見が多少なりとも出る。だがJリーグには、J2で優位に立てるだけの資金力がありながら、J1復帰を達成できていない例が複数ある。
2009年にJ2へ降格したジェフユナイテッド千葉は、降格から10年以上経過した2021年度でもJ2で3番目の営業収益を維持。ところが、1度もJ1に戻れていない。2021年度の営業収益がJ2で5番目のアルビレックス新潟も、2017年にJ2に降格して以降J1に戻れていない。今季はここまで2位につけており、大きなチャンスを迎えている。
また2017年までのうち多くをJ1で過ごしていた大宮アルディージャは、2021年度の営業収益がJ2でトップながら2018年から5年連続でJ2に所属。それどころか、今季はJ2の残留争いに巻き込まれている。
J1とJ2は天と地ほどの差があり、資金力があるクラブであっても復帰するのは簡単ではない。だからこそ各クラブは、短期的な視点を優先してでも残留を目指すのだ。
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