松田体制初戦は2-5の敗戦
ガンバ大阪は8月17日に片野坂知宏監督との契約解除、後任には松田浩コーチが就任することを発表した。攻撃時と守備時で形を変え主導権を握ろうする「カタノサッカー」は完成形を見ぬまま、クラブは大幅なスタイル変更を選択した。
松田浩新監督は、日本サッカー界における「ゾーンディフェンスの申し子」だ。持ち味は、非常にコンパクトな4-4-2の形を維持しつつ、堅守から素早い攻撃を狙うサッカー。片野坂氏がある程度浸透させたスタイルを捨ててでも、「強いガンバ大阪」という目標を1度中断してでも、クラブはJ1残留を最優先に掲げたことになる。
注目の松田浩体制初戦は、20日に行われた第26節のサンフレッチェ広島戦。ガンバ大阪のシステムはやはり、4-4-2。開始早々、レアンドロ・ペレイラの得点で好スタートを切る。追い付かれても齊藤未月が勝ち越しゴールを決め、前半をリードして終えることに成功。ここまでは狙い通りだった。
しかし後半、時間の経過とともに運動量が低下する。終盤、立て続けに失点を喫し、最終スコアは2-5。監督交代という劇薬の効能を、初戦から示すことはできなかった。
それでも見えた「松田スタイル」
それでも短い準備期間だったにもかかわらず、ピッチには松田浩監督らしさがいくつか表現されていた。
縦横にコンパクトな4-4-2が描かれ、守備時にはレアンドロ・ペレイラとパトリックの2トップも自陣でスペースを消す。スタッツを見るとボール支配率は29%、被シュートは27と極めて多くの攻撃を浴びたように感じるが、試合からは数字ほどの差は感じられなかった。
次節は第27節の名古屋グランパス戦(27日・豊田スタジアム)。監督就任から広島戦を迎えるまでよりははるかに長い、6日間の準備期間がある。前線の選手だけでもゴールに迫れる攻撃陣を有してもいる。これまでヴィッセル神戸、アビスパ福岡、栃木SC、V・ファーレン長崎と率いてきた百戦錬磨の新監督は、まず守備の改善に力を尽くすだろう。
課題は90分間の戦い方とSBの背後のスペースのケア
サンフレッチェ広島戦からは、明確な課題も見えた。1つめは90分間を通しての戦い方。前述したように、松田監督のサッカーはコンパクトなゾーンディフェンスが軸だ。相手がボールを保持している際は、ボールの位置を基準にチーム全体が動くことになる。
そのため広島のように両サイドを巧みに使うチームが相手だと左右に振り回され、終盤には疲労から全体のスライドが遅れ、少しずつ穴ができてしまう。松田監督が過去に率いたチームでも、同様の現象は時折見られた。今回も90分間を通した戦い方が、カギとなるだろう。
2つめは、広島戦の失点の多くがそうであったように、サイドバックの背後のスペースをどのようにケアするか。相手のフォワードがサイドに流れて受けたり、サイドバックがオーバーラップして受けるなど、サイドの深い位置へと侵入された際に後手に回るケースが散見された。
サイドハーフのトランジション(攻守の切り替え)が遅れた際は特に顕著であり、その際にセンターバックが引き出されるとより中央の守備が不安定になってしまう。
広島戦に向けては、とにかく時間がなさすぎた。守備の整備にかけては実績豊富な監督であるため、修正を施せば一定のペースで勝ち点を稼ぐ可能性は十分にあるだろう。夏の移籍市場で補強した選手たちも続々と出場機会を得ている。
鹿島アントラーズに次ぐタイトル獲得数を誇る西の雄・ガンバ大阪は来季以降の復権のため、総力戦で残留を掴み取ろうとしている。
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