片野坂知宏氏を新監督に招聘
昨季リーグ13位と低迷したガンバ大阪は、今季から片野坂知宏監督を新指揮官に招聘して巻き返しを図る。片野坂監督は大分トリニータで6年間指揮を執り、チームをJ3→J2→J1へと導いた。昨季はJ1リーグ18位で降格してしまったが、限られた戦力で魅力的なサッカーを展開した片野坂監督の評価は高い。
15年の天皇杯を最後に7年間タイトルから見放されているガンバ大阪の復活は為るのかー。昨年のガンバ大阪と大分トリニータのデータを検証しながら、改善すべき点と期待できる点を探りたい。
攻撃の狙いが曖昧だった昨年のガンバ大阪
まずはガンバ大阪の昨季状況から。『ガンバ大阪=攻撃サッカー』。西野朗氏が率いていたときに定着したワードだが、近年はその幻影に苦しめられ続けた。
特に昨年はパス本数18005本(11位)にワンタッチパス本数6245本(10位)、シュート数311本(16位)でJ1中位から下位。空中戦回数J1個人トップ300回で、敵陣での空中戦勝率65.7%を誇ったFWパトリックに助けられた部分が大きかったが、そのクロス自体も431本(18位)と少ない。
またボールゲインからシュートに至るまでの平均時間は18.4秒(9位)、そこに掛ける人数は4.6人(9位タイ)。一見パスをつなごうとしているのは見えるが、敵陣ペナルティーエリア侵入回数も507回(14位)。
シュートチャンスに至るまでの回数が少なく、パスサッカーにしろ、サイド攻撃にしろ、どっちつかずの状況だった。
GK東口の存在感とギリギリの守備力
そのガンバ大阪が残留を果たしたのは、GK東口順昭と中盤のフィルターと土壇場の頑張りが効いていたからだ。
フィールドを三分割してミドルサード(ピッチ中央部分)と呼ばれるエリアでのタックルによるボール奪取率は66.2%(2位)。逆にディフェンシブサードでのタックル奪取率は、全体最下位の58.8%となっている。つまり中盤で回収できなければ、そのまま押し込まれる時間が長くなる傾向にあった(ボールロストからの5秒以内のボールリゲイン率は14.4%で19位。同10秒以内も29%の19位)。
そこを何とか凌いでいたのは、昨年10月の浦和戦で至近距離でのシュートをストップしたプレーに代表されるように、シュートセーブ回数J1トップの122回を計測した東口の安定感と、守備陣の体を張ったギリギリの守備(CBIは1681回で5位)といえよう。
大分の人数を掛けたパス回しと目を引くチーム平均走行距離
研究し尽くされ、選手層も薄い大分トリニータも昨季データは全体的に芳しくない。だが明確な方針は打ち出されている。
まずディフェンシブサードでのパス本数はJ1トップの8999回。自陣からのパス本数も11517本(5位)と多く、やはり最終ラインからのビルドアップは大事にしているのがうかがえる。さらにボールゲインからシュートに至るまでの平均時間は全体トップの22.6秒。ボールゲインから攻撃に関わる人数(5.3人)もプレー数(8.7回)もJ1トップで、奪った後に丁寧に相手を動かそうとしている。
また、チーム平均走行距離119.966キロメートル(3位)、平均スプリント回数169回(10位)。特に走行距離が伸びるのは、単純な運動量だけではなく個々がどこに動くべきかが攻守で整理されているからでもある。昨年チーム平均走行距離113.709キロメートル(15位)、チーム平均スプリント回数156回(19位)のガンバ大阪にとっては目指すべき数値だ。
組織力と個人力の融合が高まれば…
データからも分かるように昨年のガンバ大阪は決まり事が少ない。また片野坂監督が就任会見時に口にしたように「全体の強度」も低い。
複数の新型コロナ陽性者が発生し、1週間の活動休止というアクシデントはあったが、それでも攻守のデザインは徐々に出来つつあるという。パスをつなぐだけではなく、ゴールを奪うためのパス回しができれば自ずと運動量も上がってくるだろうし、スプリント回数も増える。そうなればゴール前でのエキサイティングなプレーも増えてくる。
片野坂監督の「組織力」とガンバ大阪が持つ「個人力」の融合が高まれば、今季目標の3位以内も見えてくる。
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