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出来の悪い2時間ドラマの結末を観ているようだった。物語の途中で展開が読め、視聴者が想像した通りのフィナーレが訪れる。J1開幕から7戦を消化して未勝利（4分け3敗）。神戸を待っていたのは、もはやサプライズとは呼べない監督解任劇だった。
「志半ばでチームを離れる形になり残念です」
今回の悲劇で「主演」を務めた三浦淳寛前監督は20日、クラブを通じてコメントを残した。2020年9月にスポーツダイレクターから監督就任。昨年はクラブ史上最高成績のリーグ3位に食い込み、ACL（アジア・チャンピオンズリーグ）出場権も手にした。
「アジアNo.1」がスローガンでなく、具体的な目標となった2022年シーズン。FW武藤嘉紀（29）、FW大迫勇也（31）と主力選手に故障が相次いだ事情を勘案しても、やはりJ1最速の「決断」は拙速に思えた。
三浦前監督はクラブにとって功労者の一人といってもいい。日本代表でもレギュラーだった現役バリバリの2005年に東京Vから完全移籍。東京都内でセッティングされた入団会見には、三木谷浩史会長（当時社長）も同席し、自らアプローチして獲得した秘話などを明かしていた。
当時の神戸では、三浦知良（現JFL鈴鹿）が象徴的存在。同じ姓の大先輩を立てながら、持ち前のキャプテンシーを発揮して、ピッチの内外で中心になるまで時間を必要としなかった。
その年、チームは初めてのJ2降格。翌年にドイツW杯が控えていることを考えれば、J1の他クラブへ移籍する選択肢が確実と目されていた。だから、寒空の練習場で聞いた言葉が忘れられない。
「プロだから他人のせいにするのが一番いけない。現実から逃げたくなかった」。エースの宣言で、迷っていた大半の選手も残留を決意。男気が1年でのJ1返り咲きを可能にしたのだ。
「熱さ」が空回りして、2007年のシーズン中に松田浩監督（当時）と衝突して退団。2011年に引退後も、三木谷会長と良好な関係を保っていたのは、18年にスポーツダイレクターとして招聘されたことからもうかがえる。幅広い人脈を駆使して、陰から支え、フィンク元監督の解任後は現場の最高責任者として奮闘。残した功績は決して小さくない。
「泣いて馬謖を斬る」という諺がある。もともとは、全体の規律を保つためには、どんなに有能な部下でも、私情を捨てて、違反者は切り捨てるという意味で、根底には上司の深い愛情と、言いようのない無念、辛さが潜んで然るべきだ。
果たして、三浦前監督は馬謖として任を解かれたのか。いや、今回に限らず、本人、周囲が納得する形のラストはあったのか。
それを検証するには、Jリーグでダントツに多い監督解任劇を振り返らなければいけない。楽天体制になって以降、シーズン途中の監督交代は19年間で11度目。シーズン中に2度交代した年も3回（2005、12、19年）ある。
先に触れた05年は、開幕わずか6試合で松永英機監督を解任。チーム統括部長だった三浦泰年氏が暫定で2試合指揮を執り、エメルソン・レオン監督を招いた。ブラジル代表監督も務めた名将は切り札と目されながら、たった8試合で非情通告。2004年に途中解任されたイワン・ハシェック監督と一緒に来日し、「閑職」にいたパベル・ジェハーク氏が現場のトップに返り咲く、まさにカオスの人事がJ2降格の象徴となった。
降格がすでに決まっていたホーム最終戦の試合前、パベル監督に呼ばれて、関係者しか入れないスタジアムの通路に通された。「これを見てください」。敗軍の将が指したのは、選手がシーズン前に書いたメッセージ。「絶対優勝!」「タイトルを獲る」と威勢のいい言葉が並んでいた。
「チームとしてビジョンがないのに、選手は大きな夢ばかり見ている。降格は当たり前の結果です」。関係者でもないのに、胸に突き刺さる一言だった。そしてレオン氏も神戸を去る直前の会見で、同じことを言っていたのを思い出した。
結果が出なければ、責任を問われるのがプロ。スピード感が何よりも求められる本業で成功を収めた三木谷会長の手法もある部分で理解できる。
ただ、目指すサッカーのスタイルがいつまでも経っても定まらず、監督の首だけすげ替えて常勝軍団が作れるとは、とても思えない。真のビッグクラブになれる可能性を秘めるからこそ、指導者が地に足をつけて戦える環境が求められている。
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