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Jリーグで「レジェンド背番号」を受け継ぐ鈴木優磨、杉本健勇、乾貴士ら7人の矜持

2022 3/19 06:00小林智明
鹿島アントラーズの鈴木優磨,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

浦和・柴戸海と川崎F脇坂泰斗はバンディエラの残像に悩む?

30年目を迎えたJリーグで「レジェンド」と呼ばれる名手たちの背番号は脈々と受け継がれている。そこで今季より“レジェンド背番号”を継承したJ1の日本人選手をピックアップ。彼ら7人はクラブの新たな象徴になれるだろうか。

Jリーグで今季からレジェンド背番号を背負う日本人選手


昨年、浦和レッズで現役を引退した阿部勇樹から背番号22を託されたのが、プロ5年目のボランチ・柴戸海だ。浦和で計14年にわたり中軸を担った大先輩の背中を見てきた柴戸は、昨シーズン急成長。チーム内トップのタックル成功率64%、インターセプト数11本の数字が示すように、デュエルやポジショニングを磨きながら、自己最多の30試合に出場した。そして22番を志願し、「『浦和の22番は柴戸海』と覚えてもらえるように活躍したい」と誓った。

開幕後、第9節(開幕2戦目)のヴィッセル神戸戦でCKからゴールするなど、攻撃意識も上昇。ただ、肝心の守備では現状タックル成功率53.3%とまだ本調子に至っていない。また、徳島ヴォルティス時代にリカルド・ロドリゲス監督の薫陶を受けたプレーメーカー、岩尾憲の加入も影響し、柴戸の先発出場は全6戦中3試合にとどまっている。

阿部の現役時代が記憶に新しいだけに、ファンの見る目も厳しくなりがち。22番が馴染むまで、もう少し時間がかかるかもしれない。

同じく現役時代のレジェンドの残像が残り、重圧がかかると思われるのが、川崎フロンターレの脇坂泰斗。20年に引退した中村憲剛が17年間背負い、昨年は空き番号だった14を引き継いだ。昨季、自身初のベストイレブンに選出され、A代表デビューも飾った26歳は「プレッシャーも大きいと思うけど、それを跳ねのけることで大きく成長すると思っている」とプラスに捉える。

だが、実際に14番を背負うと重かった。チームプレーを意識するあまり、序盤の数試合は思うようなプレーできず。それでも鬼木達監督から「お前はお前だから」と声をかけられ、吹っ切れる。

開幕4戦目の10節・浦和戦では、CKのキッカーとして先制点、得意のターンから決勝弾をもたらし、2アシスト。ラストパス数は計9本とリーグ全体で5位につけ、本来の姿を取り戻しつつある。

鹿島の貴公子と野獣がレジェンド背番号を志願

脇坂と並ぶラストパス数9本(J1全体5位)を記録しているのが、鹿島アントラーズの若鹿、荒木遼太郎だ。昨季は94年の城彰二以来、史上2人目となる10代での2ケタ得点(10点)を達成。元日本代表FW柳沢敦が付けたレジェンド番号13を背負うに相応しい飛躍を遂げたものの、わずか1年で13番を手放し、自らエースナンバー10をクラブに希望したという。

理由は東福岡高の先輩でもある希代のテクニシャン、本山雅志に特別な感情を抱いており「同じ10番を付けて戦いたい」と思ったから。

新10番は自身初の開幕スタメンを務め、バイタルエリアでパスを引き出し、一瞬のひらめきで勝負。現在まで挙げた1ゴール1アシストも、共にボックス付近中央から生まれている。公言した目標は「10得点10得点アシスト」。昨季はチーム1位のアシスト7も挙げており、十分に達成可能な数字だろう。

鹿島の「40」もレジェンド番号。小笠原満男がイタリアでのプレー後、鹿島に復帰した07年から引退した18年まで12年間、背負ったナンバーだ。それを受け継ぐのが今季、ベルギーから電撃復帰したストライカー・鈴木優磨である。

小学校1年から鹿島のアカデミー育ちの鈴木は、常勝軍団で先頭に立って戦った小笠原をリスペクト。「40番を付けた人が、チームを勝たせられる選手だという番号にしていきたい」と抱負を語り、自身3年ぶりのJリーグを迎えた。

今季の鈴木は左サイドでもプレー。タメをつくり攻撃の潤滑油になるなど「チームが勝つために何が必要か」という小笠原の精神を随所に見せる。一方、4節・神戸戦では、自身のJ1通算100試合目を豪快ミドル弾で自ら祝福。まだ25歳で当然、ゴールゲッターとしての能力は健在だ。ここまで新相棒・上田綺世と各2得点を挙げており、荒木を含めたトライアングルは、間違いなく脅威だ。

北嶋秀朗、ゴン中山の「9」を継承した点取り屋候補

浦和で6年間、9番を付けた武藤雄樹は昨夏より柏レイソルへ完全移籍。19番のユニフォームを着てプレーしたが、無念の0得点に終わる。それでも今季の爆発を期待され、J2 のV・ファーレン長崎に移籍したクリスティアーノより背番号9を譲り受けた。

柏の9番といえば、2度にわたる約13年間の所属で精神的支柱にもなった北嶋秀朗を想起するオールドファンが多いだろう。武藤も北嶋の系譜を継ぐ「熱いプレーを見せたい」と意気込んでいたが、開幕直後の練習中に右膝半月板損傷の大ケガを負い、全治約2カ月の見込み。まずは順調な回復が待たれる。

杉本健勇も9番の後継者。ジュビロ磐田の黄金期のストライカーで、98年と00年の2度得点王に輝いた中山雅史が着ていたサックスブルーの「9」を新天地で背負い、目標ゴール数は「15点」。しかし、いまだ一度もゴールネットを揺らしていない…。

それでも被ファウル数は11でランキング1位。相手DFが反則を犯してでも止めたくなるほど、良い意味での危険なプレーはできている。また、ポストプレーも安定しており、1トップとしてシャドーFW2枚を生かす動き出しも巧みだ。

あとは昨季よりコーチを務める中山の熱血指導でゴールを取るコツさえ掴めば、たとえでよく使われる“ケチャップ、ドバドバ”のようなゴール量産が見られるに違いない。

33歳の乾貴士が5代目ミスターセレッソに

最後にセレッソ大阪の象徴、ナンバー8。初代ミスターセレッソの森島寛晃を筆頭に、そうそうたる面々が背中の8番を揺らして躍動していきたが、昨年から空き番号に。それを昨夏にスペインから復帰した乾貴士が志願し、23番から変更した。

「誰でも付けられる背番号ではないので、責任感を持って。それを自分に言い聞かせてやっていきたい」と乾。3節の京都サンガF.C.戦では今季初得点をマーク。開幕の横浜F・マリノス戦では華麗な3人抜きドリブルを披露するなど、パフォーマンスは良好だった。ところが3月8日の練習で人生初の肉離れを起こし、全治2週間のリタイア。新ミスターセレッソの早期復帰を願う。

ここで挙げた7人は各チームのキーマンであると同時に、重みのある番号を背負う気概を持ち、周囲に影響をもたらす言動も興味深い。レジェンド戦士に思いを馳せながら、彼らのプレーや振る舞いを見るのも、30年目のJリーグの楽しみ方だ。

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