川崎フロンターレの33歳・小林悠の目を見張る決定力
最近はJリーガーの選手寿命が延びているのか、高齢選手の活躍が目立つ。横浜FCの三浦知良(53歳)は別格として、チームメイトの中村俊輔(42歳)や今季途中にガンバ大阪からJ2・ジュビロ磐田へ期限付き移籍した遠藤保仁(40歳)ら、アラフォー・Jリーガーも珍しくなくなった。
ひと昔前ならアラサーの選手は「ベテラン」と呼ばれ、キャリアの晩年を迎えていたが、今は「中堅」と言ったほうがいいのかもしれない。今季J1のスタッツを見ても、30歳前後の日本人選手が上位にいる。
オフェンスで目に留まるのが、J1史上最速Vを決めた川崎フロンターレのFW小林悠(33歳)だ。現在、得点数13と得点ランク4位。上位には1位オルンガ(柏レイソル)、2位エヴェラウド(鹿島アントラーズ)、3位レアンドロ ペレイラ(サンフレッチェ広島)と助っ人アタッカーが名を連ねており、トップ5の中で唯一の日本人選手だ。
特筆すべきは出場時間に対しての決定力の高さ。ベンチスタートが多い小林の先発出場は12試合のみ、総出場時間は1224分と他の上位選手に比べて少ない中で、得点を積み重ねている(オルンガ2564分=26点、エヴェラウド2557分=17点、レアンドロ ペレイラ1832分=15点)。
J1最多の82得点を稼ぐフロンターレだけに、ゴールチャンスは多いとはいえ、同僚のFWで先発出場21試合(1697分)のレアンドロ ダミアンが12得点であることを考えると、小林の決定力の高さがより浮き彫りになる。
最少失点数に貢献する名古屋グランパスの31歳・丸山祐市
続いてDFに注目。ここまで全33試合フルタイム出場(2970分)を続ける、唯一のアラサー・フィールドプレーヤーが、名古屋グランパスの主将・丸山祐市(31歳)である。
元日本代表の左利きのセンターバックは、2018年にグランパスへ移籍して円熟味を増し、守備の大黒柱として不可欠な存在に。そして今季は、前所属のFC東京時代から指導を受けるフィッカデンティ監督の下、相手チームの特長を消す対応力に磨きがかかり、失点数28はフロンターレと並びリーグ最少の数字を誇る。
グランパスでは、若手CB中谷進之介と守護神ランゲラックも同じく全試合フルタイム出場を続け、“鉄壁トライアングル”を形成。12月12日の横浜FC戦(0-0)では、クラブ記録を塗り替える今季16度目の無失点試合も樹立し、来季ACL出場圏内の暫定3位に位置する。
コロナ禍の影響による過密日程の中、ケガなく33戦に出場し続けるだけでもタフで素晴らしい。特に最終ラインを支えてきた丸山は、もっと評価されるべき選手ではないだろうか。
運動量の多い中盤で活躍するヴィッセル神戸の30歳・山口蛍
出場試合数のスタッツで丸山以外に、上位に名前が挙がっているアラサーも紹介しよう。ヴィッセル神戸の山口蛍(30歳)は30戦に先発出場し、計33戦に出場中。しかも、昨季天皇杯王者のヴィッセルはACL出場のために、よりハードな試合スケジュールをこなす必要があったにもかかわらず、運動量が求められる中盤のポジションで高いパフォーマンスを維持している。
また、サンフレッチェの日本代表経験者・DF佐々木翔(31歳)も、出場した30戦はすべてフルタイム出場中だ。
ガンバのMF倉田秋(32歳)も32試合(先発25試合)出場中と、出場試合数で上位にランクイン。 持ち前のテクニックと運動量で躍動、現在2位につけるガンバ躍進の原動力になっている。
同じくガンバのストライカー渡邉千真(34歳)は、交代出場試合数ランキングで現在1位。21試合に途中出場し、6ゴールをマークしている。10月7日のサガン鳥栖戦では2得点を挙げて、史上15人目のJ1通算100得点の快挙を達成した。
また、鹿島アントラーズのMF遠藤康(32歳)も渡邉と同数の21試合に交代出場。11月3日の横浜F・マリノス戦では、完璧なボレーで決勝ゴールを奪ったのをはじめ、攻撃の流れを変える切り札として重宝されている。
20代の実力ある選手が、すぐに欧州をはじめとする海外リーグに挑戦するのが当たり前になった時代。必然的に外国籍プレーヤーと共に各チームをけん引しているのは、30歳前後の経験値を高めた“中堅”選手たちである。データで振り返ると、彼らの貢献度をより強く感じられるはずだ。
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