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組織力の欠如が目立つ日本代表、森保監督のチーム作りは間に合うのか

2019 6/29 07:00橘ナオヤ
サッカー日本代表の森保監督Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

この大会に臨む意義は「五輪優勝に向けたもの」だったが……

日本時間6月25日、南米選手権(コパ・アメリカ)のグループステージ第3戦が行われ、グループCの日本はエクアドルと1-1で引き分け。この結果、日本は0勝1敗2分で大会を後にすることとなった。初戦のチリ戦は0-4の大敗が響き、その後の2試合では強豪ウルグアイ、そしてエクアドル相手に得点し引き分けたものの、初の決勝トーナメント進出はかなわなかった。

今大会に参加する日本代表の目的は、2020年東京五輪を見据えた選手の強化とチーム作りにあった。そのため23人中17人が五輪世代。多くがフル代表初選出だった。同時に、コパ・アメリカ参加にあたって招集に拘束力がなかったため、残る5枠にはレスターを退団する岡崎慎司、ヘタフェの柴崎岳をはじめ、川島永嗣、植田直通、中島翔哉が招集された。

多くの五輪代表を呼びたい監督の思惑があった一方で、招集を拒否するクラブもあったという問題から、こうしたメンバー構成になった。とはいえ、南米大陸王者を決める真剣勝負の場に若手中心で臨む姿勢は、東京五輪の踏み台としか見ていないと批判の対象となった。

個は光った、組織はどうか

こうした状況ながら、フルメンバーの南米勢と戦った日本代表。選手個々は得難い経験を積めたことだろう。また中島(五輪世代ではない)や久保建英はそのクオリティの高さを見せ、杉岡大暉や三好康児などは大会を通じて成長し、アピールした。

だがチームとしての完成度の低さが致命的だった。攻撃面では中盤から柴崎が、前線で中島、久保、三好がチャンスを創出したが、結局はそうした選手たちの個人の力に依存していたということだ。チームとしての攻撃が機能しなかったため、久保や中島は個人技で打開しようとするか、下がってゲームメイクに参加するしかなかった。

また大学生フォワード上田絢世やバルサが関心を示していると報じられた前田大然などは、今後の可能性は感じさせたものの経験不足は明らか。連携が活きた攻撃は数えるほどで、パスはたびたびカットされるか、通っても受け手とビジョンが合致せず機能しなかった。

守備面ではルールを選手全員が同じレベルで共有できていたのか疑問だ。前線の選手は守備意識の低さが目立ったが、それを改める指導はなかったのか。あるいは守備意識の低さをチーム戦術に織り込んで、周囲の選手がカバーに行く意識が徹底できていたか。それがクリアできていれば、少なくともチリ戦の4失点は無かっただろう。この組織力では、五輪優勝を目指すどころか1次ラウンドですら危うい。

ふたつのチームをひとつにするミッション

残された時間はあと1年。森保監督はここから五輪優勝に向けたチーム作りを急がなければならない。組織力は伝統的に日本代表の強みだった。日本はこれまで、国際大会で優れた個人の能力を持つ強豪相手に組織力で対抗してきた。過去、五輪やW杯、そしてアジアカップでも、献身的な守備とコレクティブなプレーを土台に組織的なプレーで戦ってきた。

いまの五輪代表は、要となる組織力が築けていないことがはっきりした。コパ・アメリカに参戦したメンバーがそのまま五輪代表なら、この経験を礎に選手間の理解と連携を高めていけばいい。だがそうはいかない。

6月の時点で日本には五輪代表チームが2つあるからだ。日本の男子代表チームはこの2カ月、U-20W杯、トゥーロン国際、コパ・アメリカと3つの国際大会を戦い、五輪代表候補の選手たちをフランス南部とブラジルに分散させた。現時点では指揮官が直接率いたチームと、準優勝という結果を出したチーム、ふたつの五輪代表チームがあり、森保監督はここから23人のチームを作らなければいけない。

何を軸にチームにしていくのか

ブラジルで自ら指揮したチームと、フランスで準優勝と結果を残したチーム。この約40人からどのようにしてひとつのチームを作るのか。それにはふたつの考え方がある。

ひとつは、森保監督自身が指揮を執ったコパ・アメリカのメンバーをベースとするチーム。直接指揮したことで、監督が描くチームの青写真に近づいている可能性が高い。

もうひとつが、各世代からの継続性を重視するというものだ。東京五輪代表世代は、2017年にU-20W杯韓国大会を戦った世代でもある。コパ・アメリカ組では久保や三好、冨安、杉岡、板倉、中山ら、そしてトゥーロン組では小島、小川、舩木らがこの韓国大会に参加した。ともにプレーした経験があるため、彼らを軸にチームを作ればフィーリングは合いやすいだろう。

何を軸にチームを作るのか。どれを選んでももう時間が無い。ここから1年で「優勝メンバー」にまで束ねあげることができるか、森保監督の手腕が問われる。

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