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戦渦のパレスチナ、サッカーアジアカップ決勝T進出でガザ地区の希望の光に

2024 2/2 06:00堺俊輔
サッカーパレスチナ代表,GettyImages
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Ⓒゲッティイメージズ

3度目出場で歴史的初勝利、試合前は犠牲者に黙とう

カタールで開催されているサッカーのアジアカップで、戦渦に苦しむパレスチナが3度目の出場で歴史的な初勝利を挙げ、史上初の決勝トーナメント進出となる16強入りの快挙を達成した。

パレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスとイスラエル軍との激しい戦闘が続き、人道危機が深刻化する中での参戦。チームは親族や友人を失った選手やガザ地区出身の選手も抱えていた。

試合開始前には犠牲者を悼んで黙とうし、パレスチナの旗も多く掲げられたスタンドからは観客が「パレスチナに自由を」と連呼する。

そんな応援も力に変え、1次リーグC組に入ったパレスチナは初戦でイランに1―4と黒星を喫しながらも、第2戦のアラブ首長国連邦(UAE)には1―1と引き分ける粘りを見せて勝ち点1を獲得。そして香港との第3戦にサイド攻撃からゴールを量産して3―0で快勝し、大会初白星を挙げると、1勝1分け1敗の勝ち点4の同組3位で殊勲の1次リーグ突破を決めた。

1月29日の決勝トーナメント1回戦では前回覇者の開催国カタールに1―2で惜敗し、ベスト8進出はならなかったものの、6万超の観客が集まったスタジアムはパレスチナの旗も多く掲げられ、熱狂の渦と化した。

フランスメディアによると、マクラム・ダブーブ監督は選手を「チャンピオン」と呼んで「このチャンピオンをとても誇りに思う。非常に困難な状況にもかかわらず、選手たちはすべてを捧げてくれた。これ以上のことは望めない。彼らはパレスチナのサッカーに名誉を与えてくれた」とコメント。代表チームの勇敢なまでの奮闘ぶりは先が見えない暗闇の中でも祖国に届ける希望の光になった。

ガザ地区ではサッカー指導者も犠牲者に

イスラエル軍とイスラム組織ハマスのパレスチナ自治区ガザでの戦闘を巡り、ガザ保健当局によると、ガザ地区での死者は2万人を超える。

パレスチナ・サッカー協会の公式サイトを見ると、イスラエル軍の爆撃でガザ地区では多くのトップ指導者やスポーツ関係者も悲劇に見舞われたニュースを掲載され、スポーツ施設も破壊されている。

米メディアによると、U―23(23歳以下)パレスチナ代表アシスタントコーチも空爆で死亡。ガザ地区のスタジアムがイスラエル軍によるパレスチナ人拘束施設になったとも報道された。

国際サッカー連盟(FIFA)ランキング99位の代表チームは、26人中約半数がパレスチナのクラブに所属。2015年大会と2019年大会では6試合で1ゴールしか挙げられなかったが、苦境を抱えるチームは結束して勇敢な闘いを世界にアピールし、スポーツ界から「平和」へのメッセージを発信した。

パレスチナ・サッカー協会の公式サイトによると、ダブーブ監督は決勝トーナメント1回戦で敗れた試合後に「次のラウンドへの進むことで、パレスチナの人々を幸せにし続けることを望んでいた」と落胆のコメント。

それでも「アジア王者のカタールに対して英雄的な試合をした。われわれが見せた内容を誇りに思っている。今後のさらなる努力を約束する。選手たちはこの大会で求められるすべてを出してくれたと信じている」と選手たちの奮闘をたたえることも忘れなかった。

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