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サッカー日本代表、元日タイ戦で生き残りかける9人のJリーガー 今季結果残した実力者は

2023 12/30 11:00小林智明
細谷真大と毎熊晟矢,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

“J1デビュー10戦”の野澤大志ブランドンが異例の抜擢

24年元日、国立競技場にて行われるサッカー国際親善試合タイ戦に日本代表が臨む。今回選出された24人のうち、Jリーグ勢は第2次森保ジャパン発足後最多の9人が選ばれた(メンバー発表後に海外移籍が決定した選手も含む)。そこで、彼らの活躍ぶりを23年リーグ戦でのデータを交えて振り返る。

日本代表に招集されたJリーガー9人


GKは2人、前川黛也と野澤大志ブランドンだ。W杯2次予選ミャンマー戦で途中出場ながらA代表デビューを果たした前川は、リーグ初優勝を遂げた神戸の中で唯一、全34試合フルタイム出場。ライバルだった飯倉大樹(横浜FM)の移籍もあり、22年の18試合から大幅に出番が増えた。

リーグ3位の失点数に抑えた神戸の守護神の防御率は0.85で、浦和の西川周作(0.79)、広島の大迫敬介(0.83)に次いで3位。完封試合も両者に1試合及ばず14試合の3位に。プレーでは、クロスパンチング率が17.5 %でリーグ5位と、キャッチも含めハイボールの処理が安定していた。1試合平均ロングパス数14.5本(リーグ2位)の数字は、チーム戦術が速攻主体に方向転換した表れだ。

野澤は22年まで2年間、期限付き移籍先の岩手で武者修行した21歳。FC東京に復帰した今季は正守護神ヤクブ・スウォビィクの体調不良もあり、8月6日のC大阪戦でJ1デビューを飾り、無失点勝利に貢献。次節の京都戦でも完封と、2試合連続でクリーンシートを達成した。

23年リーグ戦は計10試合に出場、経験値の少なさを193㎝・体重90kgという米国人の父親譲りの恵まれた体格と身体能力でカバーした。1試合平均セーブ数は4.2回、ペナルティエリア内のセーブ率は78.4 %で、ともにリーグ2位の成績を残している。

J2から約4年ぶり招集の三浦颯太の縦突破&クロスは見もの

DFは藤井陽也と森下龍矢の名古屋コンビ、C大阪の毎熊晟矢、そしてJ2クラブから19年のFW小川航基(当時水戸)以来の初招集となった三浦颯太の4人だ。

藤井は23年3月に代表初招集されたものの、出番は訪れなかった。リーグ戦では3バックの一角として全34戦に先発出場。空中戦勝率74.1 %、タックル成功率75.3 %(平均2.1回)の数値で、デュエルの強さを証明した。

攻撃参加も得意で、走行距離ではチーム内3位(平均9.5km)にランクイン。攻撃面ではアシスト数は0→3、シュート数は10→21本(得点2)と伸長した。攻守ともに高いレベルに達した23歳は、ベルギー1部アンデルレヒトへの移籍が噂されている。

レギア・ワルシャワ(ポーランド1部)への期限付き移籍で基本合意したSB森下は、今季33試合出場(先発30試合)とシーズンを通して左ワイドを主戦場に躍動した。走行距離ではチーム内2位の平均10.2kmを走り、スプリント数でもチーム平均1位の名古屋をけん引。32節・対湘南の34回(リーグ試合別5位)をはじめ、30回以上が計3試合あり、自慢の脚力を見せつけた。

4得点4アシストの両結果もキャリアハイ。クロスも平均2.9本と多く、シュート数は22年の15本から29本へ倍近くアップ。前へのアグレッシブさが増した。

同じく攻撃的SBの毎熊は、コンバートで開花。22年は右SBでの出場は1試合のみで右MFの任を果たしたが、23年途中から右SBに固定され、A代表まで駆け上がる。J1ベストイレブンにも初選出された。

一つポジションが下がったにもかかわらず、シュート数は24→34、ラストパス数は17→29と上昇。クロス数も平均1.5本→2.4本に増加。また、被ファウル数60はリーグ6番目の多さで、相手にとって危険な“偽SB”へと進化した。

23年シーズン後、川崎Fへの移籍が発表されたシンデレラボーイの三浦は、大卒1年目の左SB。22年は甲府の特別指定選手として、リーグ戦で5試合プレーした。23年は頭部負傷、左ヒザのケガで離脱期間が長く、8月からスタメンに定着。そのため出場はJ2リーグ戦の半分となる21試合にとどまり、プロの水に慣れたばかりといえる。3試合出場し、1アシストを挙げたACLでの活躍も評価されたに違いない。

彼の武器は、止まった状態から一気に加速する縦ドリブルと、左利きらしいDFを抜き切らない状態で上げるクロス。23年J2での平均クロス数は2.9本と多い。また、身長178㎝ながら空中戦勝率は68.8%と、ステージこそ違うが、同じSBの毎熊(52.2%)、森下(38.1%)と比べると数値は高い。

和製ベリンガム? 川村拓夢の豪快な推進力に期待

MFは、ボランチを主戦場とする川村拓夢と佐野海舟の2人。川村が広島の主力になったのは今季から。先発出場数は昨季の7に対し、今季は32まで伸ばした。その分、攻撃のスタッツが急上昇。シュート数は18本から約4倍の73本へ、ラストパス数も昨季の倍以上の計18本を送った。

ただし、ゴール数は昨季と同じ3、シュート決定率は4.1%と課題が残る。それでも16節・京都戦で決めた約50mの推進力あふれるドリブルシュートは、圧巻の一言。加えて、平均走行距離は11.4kmでチームトップに立つ。

守備ではタックル成功率81.4%(平均1.8回)を誇り、ボール奪取指数もリーグ全体で9位に入る。6月に日本代表に初選出された際には体調不良で途中離脱しただけに、その悔しさを晴らしたい。

前川と同じく、11月のミャンマー戦で代表戦初出場を飾ったのが佐野海舟。昨季まで4年間J2町田で過ごし、J1デビューは今季開幕戦だった。鋭敏な危機察知力に長けたボール奪取を武器に、シーズン序盤から脚光を浴びたが、4月に負った全治4か月の左ヒザの負傷により、1か月ほどゲームから離れた。それから完全復活まで時間を要すも、7月中旬から最終節まで14連続先発出場を果たす。

特筆すべきスタッツは「まず相手にボールを触れさせないことが第一」と、本人が自覚するインターセプト。平均値はリーグ2位の0.6回を記録した。176㎝の上背ながら当たりも強く、空中戦勝率は64.8 %。走行距離はチーム内2位の平均10kmで、黒子に徹して走った。

パリ五輪世代の星・細谷真大はA代表でも爆発?

FWでは唯一、細谷真大が選ばれた。W杯2次予選のシリア戦に途中出場し、代表初得点を挙げた若きストライカーは、23年は前年の自己最多8得点を更新する14得点を挙げ、鈴木優磨と並び得点ランク5位タイに入った。

ダイナミックな動き出しに磨きがかかり、カウンターの起点となるパスレシーブのポイントは、リーグ上位の10位(昨年は15位)。その相乗効果からシュート数は昨季51本から74本へ。さらに、シュート成功率が15.7%から18.9%に増したことが、得点力アップに結び付く。加えて、チーム3位の平均走行距離9.6kmの走力で守備にも貢献。残留争いで苦しんだ柏を救ったのは、間違いなく22歳の絶対エースだ。

24年1月12日に開幕するアジアカップには、タイ戦に不参加の久保建英や遠藤航らの主力が合流するだろう。果たしてこの9人のうち、何人がA代表に生き残ることができるだろうか。

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