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データで振り返るヴィッセル神戸のJ1初優勝 勝因はカウンター指数とシュート成功率の飛躍的上昇

2023 12/18 07:00小林智明
ヴィッセル神戸の大迫勇也,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

「ボールを握らない戦術」を標ぼう

2023年J1リーグで悲願の初優勝を遂げたヴィッセル神戸。改めて今シーズンのデータを抽出し、その要因を検証したい。

下記は2022年と2023年の主要データを比較した表になるが、ボール保持率以外はどの指標も順位を上げている。ボール保持率が下がったのは、アンドレス・イニエスタを軸とするポゼッションサッカーから、「ハードワーク」「ハイプレス」「堅守&カウンター」を3本柱とし、“ボール保持にこだわらない”戦術に方向転換したからに他ならない。

ヴィッセル神戸・22年と23年の主要データ比較


好守を土台としたカウンター炸裂

3本柱を象徴するスタッツは、ショート&ロングのカウンター指数だろう。昨季と比べるとショートは11位→3位、ロングは17位→8位と大幅に上昇した。

まずそれを下支えしていたのは、守から攻へ切り替えるための走力。「相手との移動距離差」は22年が-0.042kmで10位だったのに対し、23年は1.582kmで5位に。「相手とのスプリント差」も昨年は-2.7回(11位)だったのが、今年は5回(4位)と走り負けないハードワークが見て取れた。

カウンターを発動させるための大前提となる、守備力も向上。ゴール前付近でのディフェンスのプレーに付与される守備ポイントにおいて、昨年は15位に留まったが、今年は5位へ上昇した。

守備の内訳を見るとタックル数が少なく、インターセプト数が多いのが特徴。タックルは1試合平均15.2回の16位で、インターセプト数は同2.2回でリーグトップに立つ。タックルは基本的に守りの最終手段であり、インターセプトは逆に未然に防ぐ前向きの守備ができている証し。特にMF山口蛍は個人のインターセプト数でリーグ1位に輝き、貢献度が高かった。

また昨年に比べると、1試合平均19.1回(12位)から25.5回(3位)へとクリア数が増加。昨季だったらボールを横につないでビルドアップした場面でも、あえてシンプルに縦に蹴って被攻撃を逃れた。そのボールが偶発的に最前線の大迫勇也に渡って、巧みなポストワークから速攻を仕掛ける場面も。クリアもカウンター指数アップの遠因に違いない。

大迫勇也のデータがハンパない!

カウンター指数が飛躍的に伸びたとはいえ、それだけでは優勝には手は届かなかった。攻撃回数5位、シュート数7位にもかかわらず、初戴冠に至ったのは昨季8.2%(15位)に甘んじたシュート成功率で、リーグ最高の14%をはじき出したからである。

その要因をチームデータから探ってみると、枠内シュートとクロスの増加が大きい。前者は昨季の1試合平均3.8本(11位)から今季は4.2本(5位)へ、後者は14.2本(9位)から19.3本(2位)に向上した。

クロスは今季神戸の一番の得点源で、そこから生まれたゴールは、横浜FMの19点に次ぐ17点。チームの得点割合の28.3%を占めた。それに比べて昨年は8点で、セットプレーから奪った10点にも及ばなかった。これは今季の神戸が流れの中からゴールが奪えるクロスという武器を生み、練度を高めたことを意味する。

選手個人を見れば当然、得点王&MVP受賞の大迫の功績は計り知れない。キャリアハイの22得点はチーム全得点の36.7%を占め、同じくダブル得点王となった横浜FMアンデルソン・ロペスの34.9%を上回る。シュート決定率も大迫はA・ロペスの24.7%を抜く25%、4本中1本はネットを揺らしたのだ。また、今季チームが獲得したPK6本をすべて蹴り、100%成功。言うまでもなく、チームのシュート成功率を確実に高めた。

右ウイング武藤嘉紀はリーグ4位タイの10アシストを記録。サイド攻撃の急先鋒となり、ゴールを演出し、時には自らフィニッシャーと化して10ゴールを沈めた。今季10アシスト以上挙げた5人の中で、2ケタ得点をマークしたのは武藤のみだ。

そして、ゲームのほとんどの時間で背番号10と11の元日本代表がピッチに立ったこと自体が、高いシュート成功率につながったはず。昨季はともに26試合出場(先発数は大迫16、武藤25)だったが、今季はそろって全34戦に出場(先発数は大迫32、武藤33)。相手にとって危険な存在2人が前線に張ることでマークが分散し、得点効率がアップしたと思われる。

著しく上昇したカウンター指数とシュート成功率によって、昨季13位から一気に頂点まで到達した神戸。来季はこの2つのデータが、連覇達成への調子のバロメーターになるのではないか。

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