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熱狂の2002年W杯サッカーから20年、トルシエジャパンの現在地

2022 7/11 06:00田村崇仁
中田英寿氏,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

W杯初の勝ち点に初勝利で初の1次L突破

2002年に日本と韓国で共催されたサッカーのワールドカップ(W杯)から20年。フランス人のトルシエ監督に率いられた日本代表は大黒柱の中田英寿(パルマ)を軸に、小野伸二(フェイエノールト)や稲本潤一(アーセナル)ら「黄金世代」の若手も奮闘してW杯初の勝ち点に初勝利、初の1次リーグ突破を決めて日本を熱狂させた。

初戦のベルギー戦は鈴木隆行(鹿島)と稲本の得点で引き分け、第2戦のロシア戦は稲本が決めてW杯初勝利をつかむと、チュニジアにも勝って1次リーグH組1位で16強入り。決勝トーナメント1回戦でトルコに0―1で屈したが、母国開催で大きな足跡を残したトルシエジャパンの現在地を探った。

チュニジア戦ゴールの森島寛晃はC大阪社長に

地元・長居で行われたチュニジア戦で電光石火のゴールを決めた森島寛晃(C大阪)はメンバー23人の中で唯一、JクラブのトップであるC大阪の社長を務めている。

前身のヤンマー時代から2008年の引退までC大阪一筋でプレーして「ミスターセレッソ」と呼ばれ「日本一腰の低い代表選手」とも言われたのが懐かしいが、引退後は強化部長などを経て2018年12月に社長就任。Jクラブ社長に日本代表でW杯出場経験者がなるのは初めてだった。

中田英寿は世界に日本の伝統文化や酒を発信

欧州サッカーで日本の名を知らしめた先駆者的な存在だった中田英寿は2006年W杯直後に現役を引退し、観光庁やお菓子メーカーの仕事など活躍の幅を広げながら、現在は国際サッカー評議会(IFAB)諮問委員も務める。

その足跡は引退後も異彩を放ち、特に力を入れてきたのが「旅人」として世界を回り、日本の伝統文化や工芸、日本酒など食を世界に発信するプロジェクトだ。

2016年から全国各地で開催している人気の日本酒イベントでは、2018年に国際PRアワードの最高峰「ゴールデン・ワールド・アワーズ」で最優秀賞を獲得するなど、業界発展のために活躍している。

赤モヒカンの戸田和幸は渋谷シティFCコーチ

守備的MFとして赤毛のトサカのようなモヒカン姿でトルコ戦までフル出場した戸田和幸(清水)は引退後、分析力の高いサッカー解説者として活躍。サッカーに対する知識の深さは随一との評判だ。

今年から渋谷区を拠点とする「渋谷シティFC」のテクニカルディレクター兼コーチにも就任し、指導者としての幅も広げている。

東京都社会人リーグ1部(都1部)の所属で、J1から数えて7つ目の「J7」に当たる。W杯後はイングランド・プレミアリーグのトットナムなどでもプレーし、昨季は一橋大で監督を務めた。

バットマン宮本恒靖は会長補佐役の日本協会理事に

W杯初戦のベルギー戦でキャプテン森岡隆三(清水)の負傷交代という大ピンチから「フラット3」の統率を任されたのはDF宮本恒靖(G大阪)だった。鼻骨を折って黒いフェースガードを付けていたことから、黒マスクの“バットマン”とも呼ばれたが、熱狂の中心に冷静沈着なリーダーとしていたのは間違いない。

現役引退後は、解説者として活躍する一方で、FIFAマスターを取得。G大阪の育成からユース監督、U-23監督を経て、トップチームでも指揮を執った。現在は日本サッカー協会(JFA)の新理事を務め、新設の会長補佐と国際委員長を兼務する。

後進育成へ指導者の道、GK楢崎正剛や川口能活も

W杯で全4試合に出場し、2018シーズンで現役を引退したGK楢崎正剛(名古屋)は名古屋クラブスペシャルフェロー(CFS)に就任した。日本のGKがさらに世界で認められる手助けをし、日本のサッカー界の発展に貢献したいという楢﨑氏の想いにクラブが賛同、新設したものだ。

楢崎とライバルで定位置を争ったGK川口能活(ポーツマス)も指導者として東京五輪でサッカー男子日本代表のGKコーチを務めるなど後進の育成に尽力している。

稲本潤一や小野伸二らは40代で今も現役

40代に入って現役を続ける選手もまだいる。W杯で「ワンダーボーイ」と呼ばれた稲本潤一は関東リーグ1部の南葛SCに加入。南葛SCは人気サッカー漫画「キャプテン翼」の作者、高橋陽一氏が代表を務めるチームで日本フットボールリーグ(JFL)昇格を目標に掲げる。

「天才」との呼び名をほしいままにしてきたJ1札幌のMF小野伸二はプロ25年目のシーズンを迎えており、42歳で今季のJ1最年長。今なお輝きを放っている。

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