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森保ジャパンの最大勢力は神奈川県出身、久保建英ら天才が生まれるのは川崎市?

2022 6/14 06:00小林智明
久保建英,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

遠藤航は横浜FMアカデミーで2度落選

サッカー日本代表メンバーの出身地で、最も多い都道府県は神奈川県だ。下記一覧表の7人がおり、2位・大阪の3人(MF南野拓実、MF守田英正、FW前田大然)に大差をつけている。

顔ぶれを見ても「デュエル王」遠藤航、「稲妻」伊東純也をはじめ、森保ジャパンの主要キャストを多く輩出。近年のJ1では川崎フロンターレと横浜F・マリノスが優勝を争い、「新サッカー王国」とも呼べる神奈川出身の“七人のSUMURI BLUE”に焦点を当てたい。

神奈川県出身のサッカー日本代表選手


7人のうち大都市・横浜市出身はSB山根視来、CB板倉滉、ボランチ遠藤の3人、いずれも守備的な選手である。彼らの経歴を紐解くと、挫折や下積み時代があるのも共通項。山根は小学生から東京ヴェルディの育成組織でプレーしたものの、ユースチームには昇格できず、茨城のウィザス高校(現第一学院高校)へ越境入学した。

遠藤は小学生時に横浜FMのプライマリー、中学入学前に同ジュニアユースのセレクションを受けたが、共に落選…。地元の市立南戸塚中学校でサッカーを続け、湘南ベルマーレユースに拾われた。また、遠藤は11、12、14年の3年間、山根は17年の1年間、湘南の選手としてJ2の舞台で戦っている。

板倉は幼少期からファンだった川崎Fのアカデミーに小学生から通い、U-15、U-18を経てトップまで順調に昇進。しかし、プロ3年目まではリーグ戦7試合出場に留まり、18年にベガルタ仙台へ期限付き移籍、1年間武者修行した。

その年の開幕戦で板倉はJ1初得点を決め、レギュラーに定着するかと思われたが、YBCルヴァンカップのグループステージ対横浜FM戦で、タックルによる危険行為で一発退場。しかもその際、自身が右足首の靭帯損傷の大ケガを負い、長く戦列を離れる憂き目に遭う。

川崎Fの傑作、三笘薫と田中碧は小中学校が同じ

一方、川崎市出身の3選手、攻撃的ボランチ田中碧、ウインガー三笘薫、司令塔・久保建英は、どちらかといえば天才肌。もちろん彼らも努力を重ね、細かい節々では挫折を味わっているかもしれないが、傍目にはエリートコースを歩んできたように見える。

田中と三笘は2人そろって、同市宮前区内の鷺沼小学校、有馬中学校の卒業生。田中より1学年上の三笘は川崎FのU-12、U-15、U-18と進むも、高校卒業後は筑波大学へ進学。ただ、プロに昇格できず、仕方なく大学を選んだわけではない。トップチーム入りの打診を蹴って、自身の成長のために、あえて筑波大入学を決めたのだ。そこで大学No.1ドリブラーとなり、20年のプロ1年目からのブレイクにつながった。

田中は三笘の後を追い、川崎Fのアカデミーで小学3年から10年間を過ごした。高校の最終学年では10番を背負った逸材は、そのままトップチームに昇格。プロ1、2年目はリーグ連覇を遂げた17、18年シーズンだったため出番は限られたが、3年目には24試合に出場し、一気に頭角を現した。

久保も同じく小学3年の時に川崎Fの育成組織に属し、11年にFCバルセロナのカンテラ(育成組織)の入団テストに合格したため、渡欧した。15年の帰国後はFC東京のアカデミーに加入し、16年11月にはFC東京U-23のメンバーとしてJ3・AC長野パルセイロ戦に途中出場。当時15歳5か月でJリーグ史上最年少記録を塗り替えるなど、数々の“飛び級”伝説をつくる。

神奈川大で覚醒、伊東純也の下剋上

横浜、川崎以外で唯一選出されているのが、横須賀市出身の伊東。今でこそ金髪をなびかせ、代表の得点源として不動のアタッカーになったが、若かりし頃は「苦労人」だった。

遠藤と伊東は同い年、前記の横浜FMジュニアユースの入団セレクションを実は伊東も受けていたのだが不合格に。中学時代の横須賀の街クラブ、逗葉高校でも好成績を残せず無名だったものの、関東大学サッカー2部リーグ所属の神奈川大学で奮起。自慢のスピードがスカウトの目に留まり、当時J1のヴァンフォーレ甲府でプロデビューを果たすことができた。

神奈川出身のA代表選手の揺籃期は、板倉、三笘、田中、久保が巣立った川崎Fのアカデミーなしには語れない。また、世代別チームにおいてもライバル関係にある横浜FMの育成組織のセレクションに落選した遠藤と伊東、川崎市に隣接する東京・稲城市の東京Vユースの昇格が叶わなかった山根は、悔しさを糧に捲土重来を果たし、A代表まで上り詰めた。

そういったレベルの高いアカデミーが集うのが、川崎、横浜を軸とした神奈川県。この他に類を見ない土壌が、日本代表選手という“逸品”を生むのに適しているのかもしれない。

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