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サッカー日本代表W杯スタメンの最適解は?6月連戦で噴出した課題

2022 6/15 11:00桜井恒ニ
チュニジア戦の吉田麻也,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

サイドバック:多タスクをこなせる現代型SBが必要

6月2日のパラグアイ戦を皮切りに、ブラジル、ガーナ、チュニジアと連戦に臨んだサッカー日本代表。W杯アジア予選では見えなかったことが浮き彫りになり、11月にカタールで開催される本戦に向けて、先発するフィールドプレイヤーの最適解が少しずつ見えてきた一方、課題も噴出してしまった。まずはサイドバックから見ていこう。

・先発候補:冨安建洋
・次点候補:山根視来・中山雄太・酒井宏樹・伊藤洋輝
・バックアッパー候補:長友佑都
・未出場:菅原由勢

ブラジル、チュニジアとの対戦で痛感させられたのは、多くのタスクをしっかりこなせる現代型SBの必要性だ。ハイプレスで中央ラインの攻防が激しい最中には、サイドから局面を打開する必要がある。

ブラジル戦で左SBに入った中山は、攻守で一定のパフォーマンスを示したものの、冨安建洋がアーセナルで封じ込めたFWラフィーニャに幾度もボールキープされ、攻撃の起点を作られてしまった。

右の長友は、5月29日の鹿島アントラーズ戦から丸一週間試合に出ず、たっぷり英気を養ってブラジル戦に臨んだ。守備で貢献したものの、ゴール前のチャンスを二、三度ふいにしている。実直なフィジカル重視のDFである長友は、アジア予選でも敵陣でフリーになるビッグチャンスを迎えたが得点に結びつけられなかった。

残念ながら、長友はロシアW杯以前と比較してクロスやシュートの精度が落ちている。ゴール前に顔を出して活躍しているように見えるが、手詰まりになって攻撃を終わらせる場面が多い。確実性ではガーナ戦でもゴールを決めた山根視来に軍配が上がる。

長短織り交ぜて高精度の縦パスも出せないため、ブラジル戦では右ウイングに入った伊東純也が良い形でボールを持つシーンが減った(長友が左SBに入ったときにも言える)。伊藤は追いかけっこの展開に持っていかないと、良さが出ない。チュニジア戦ではビルドアップに失敗して危ないシーンもつくり出してしまっていた。

テクニックとフィジカルに優れ、かつビルドアップの起点になる。そんなスペックが高く多数の仕事をこなす現代型SBの役割を期待すると、冨安や酒井宏樹らが先発筆頭になりそうだ。

時折、経験不足を露呈する山根と伊藤洋輝、中山雄太は6月連戦を経て残り5ヵ月間での伸びしろを期待して次点。長友は、バックアッパーとして試合を締める役割、ムードメーカーとしてすばらしい働きをするはずだ。招集されるも負傷離脱した菅原由勢は、少しでも早くテスト先発が求められる。

センターバック:一から見直しか…吉田麻也の悪癖が再発の恐れ

・先発候補:板倉滉・冨安建洋
・次点候補:伊藤洋輝・谷口彰悟・吉田麻也

冨安をサイドバックで起用しやすくなった理由の一つが、板倉滉の台頭にある。ブラジル戦でネイマールを中心にブラジル攻撃陣をシャットアウトし、存在感を見せた。

谷口彰悟も悪くないが、パラグアイ戦の得点シーンでは相手のドリブルに惑わされて体勢を崩されて失点を招いた(もちろんその前の伊藤のパスミスも責められるべきだが)。

Jリーグのペナルティエリア内でしばしば見られる“相手の攻撃を遅らせ、かつシュートコースを消す守備”をすると、FWは目の前に小さなスペースができる。ブラジルの選手たちが見せたように、世界トップクラスの選手は狭いスペースがあれば決定的な仕事ができる。

そのため、ゴール前でも距離を詰める守備が求められる。しかし詰め過ぎればドリブルで抜かれる。相手につかず離れず、いざというタイミングでパスもシュートも出させないゼロ距離に迫らないといけない。この絶妙な距離感は、日々海外で各国代表レベルの選手とやり合わないと経験値を積み重ねにくい。

とはいえ、吉田と冨安以外に頼れるCBが長く不在だった中、谷口・板倉・伊藤の台頭は日本の守備の新たなオプションをもたらしたのは間違いない。

他方、吉田には難しい問題も生まれた。ここ数年改善されていた、ゴール前でポカをする悪癖をチュニジア戦で再発。これにより吉田の信頼度が落ちたことは否めない。所属するサンプドリアで出場機会が激減したのは、決して運や偶然ではないと証明する格好となった。一度、キャプテン交代させて自身のプレイに集中させるなど、何らかの対応が必要かもしれない。

W杯直前の今、CB2枚の組み合わせはゼロから見直す必要があるだろう。

中盤:“個で負ける”が前提、カギは数的優位を生む走力・持久力

先発候補:遠藤航・田中碧・守田英正
バックアッパー候補:久保建英・堂安律・原口元気・柴崎岳・鎌田大地

ブラジル戦では、W杯アジア予選やパラグアイ戦で活躍した遠藤航、田中碧が圧倒された。CL上位常連のクラブで活躍する選手が揃うブラジルに、世界水準の実力をまざまざと見せつけられた格好だ。

遠藤は幾度も突破を許し、ファウルでしか相手を止められない場面もあった。チュニジア戦では中盤で相手のターゲットにされ、チーム全体のリズムを崩した。

同様に、パラグアイ戦で活躍した原口元気も前線になかなか良い形でボールを供給できなかった。鎌田大地が後半頭から出てきて少し攻め上がれるようになったが、最後のペナルティエリアはがっちり守られ、ブラジルにはほとんど隙がなかった。

世界トップレベルのチームが相手となれば、たとえ遠藤であっても一対一の局面で競り負ける。残念ながら、日本は世界レベルでは個で負けることを前提にすると、多くの守備局面で二対一の数的優位の状況を作りだしたいところ。そのためにまず長い距離を走れる選手が求められる。

一つの提言は、遠藤・田中・ブラジル戦で負傷欠場した守田英正が揃った3ボランチの前に、鎌田らがトップ下のポジションで入る中盤4人の構成だ。FW陣の火力が小さく、ブラジル戦やチュニジア戦のように押し込まれる状況を考えると、中盤の厚みを増して対抗するのも一つの手ではないだろうか。

ただし、中盤はメンバーを固定すると、東京オリンピックのようにガス欠する者が出てくる。ターンオーバーや臨機応変なフォーメーション変更がカギを握りそうだ。

3トップなら左は三笘薫、右は伊東純也

先発候補:三笘薫・伊東純也(※3トップの場合)
次点候補:古橋亨梧・南野拓実・浅野拓磨・大迫勇也・前田大然・上田綺世・堂安律・久保建英
未招集:鈴木優磨

FW陣は残念ながら強力なセンターFWが今のところ不在で、チョイスが難しい。中盤選手との噛み合わせを考えるべきだろう。

前述の中盤4人構成なら、2トップで古橋亨梧や南野拓実、前田大然、伊東純也、浅野拓磨が候補に上がるだろう。加えてミドルレンジ、ロングレンジから得点を狙える上田綺世、ブラジル戦のような展開を想定してゲームメイクもできる万能型の鈴木優磨も推したい。

3トップにした場合、左ウイングは6月の連戦でも存在感を見せる三笘薫一択だ。レアル・マドリードでプレイするブラジルのミリトンに完封されはしたものの、三苫のドリブルはタイミングと駆け引きがポイント。世界トップレベルのDFとW杯本番の5カ月前に対戦した(学習した)ことはかえってプラスにつながるはずだ。

南野はより中央でプレイすべきであり、ペナルティ・エリア内にいないと良さが出ない。本人もそれを分かっているのか、左ウイングで出場しても中央に近づく傾向が強い。それならば三苫が左からえぐって、中央に南野がいたほうが得点確率が高まる。

鎌田や久保建英らパサーがトップ下で出るなら2トップで古橋や南野を、トップ下を置かない3ボランチ体制なら伊東や三苫をサイドで起用するなど、そろそろ中盤・前線の選手の特徴の噛み合わせを考えて仕上げる時期に来ているはずだ。

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