日本は豪州に執念の勝利もB組4位
サッカーの2022年ワールドカップ(W杯)カタール大会アジア最終予選で森保一監督率いる崖っぷちの日本代表が窮地で執念の勝利をもぎ取り、首の皮一枚つながった。
10月12日、B組の日本は埼玉スタジアムでの第4戦でオーストラリア代表と対戦。前半に23歳で最終予選初出場の田中碧(デュッセルドルフ)のゴールで先制すると、後半に追い付かれたが、その後に勝ち越して2―1で競り勝った。
これで2勝2敗の勝ち点6とし、自動的に出場権を得る2位以内にも望みをつないだ形で踏みとどまった。
一方、サウジアラビアはホームで中国を3―2で退け、無傷の4連勝で勝ち点を12に伸ばして単独首位。オーストラリアは3勝1敗で勝ち点9の2位につけた。
オマーンはホームでベトナムを3―1で下し、勝ち点6とした。日本は同6ながら総得点でオマーンを2点下回っており、4位と依然として厳しい状況だ。残り6試合。どんなドラマが待ち受けているのか、激動の戦いが続く。
アジア最終予選は12チームが2組に分かれ、ホームアンドアウェー方式で実施。各組の3位同士の勝者は大陸間プレーオフに回る。
W杯予選中の解任は加茂周監督1人だけ
これまでW杯アジア最終予選では数々のドラマが繰り広げられてきた。
W杯予選中の電撃的な監督解任として語り継がれるのは、1998年フランス大会アジア最終予選だ。日本は1勝1分け1敗で迎えた4戦目でカザフスタンと引き分け、加茂周監督が更迭された。日本は秋田豊のゴールで先制しながら、後半ロスタイムに失点。「アルマトイの衝撃」だった。
5戦目からはコーチだった岡田武史氏が昇格して指揮を執り、日本はB組2位でアジア第3代表決定戦に進出。マレーシア・ジョホールバルで難敵イランに勝利して悲願のW杯初出場を決めた試合は日本列島が沸いた「ジョホールバルの歓喜」として完結した。
岡田監督は5試合で3勝2分けと結果的に盛り返した。
2006年ドイツ大会のジーコ監督も序盤苦戦
2002年W杯日韓大会で初の決勝トーナメント進出を果たし、日本を快挙に導いたトルシエ監督の後任に就いたのが元ブラジル代表のレジェンド、ジーコ監督だった。
中田英寿、中村俊輔、小野伸二、稲本潤一という豪華絢爛なMF陣は「黄金のカルテット」と呼ばれ、攻撃的なサッカーで2006年ドイツ大会W杯での進化を目指した。
だがジーコ・ジャパンも序盤は苦戦。最終予選の初戦はホームでの北朝鮮戦で1―1の後半ロスタイムにFW大黒将志の劇的なゴールで辛勝したが、第2戦はアウェーでのイラン戦で1-2と痛恨の敗北を喫した。
続くバーレーンとの2連戦の間に、チームが空中分解しかねない危機もあったが、三浦淳宏らベテランが音頭を取った「アブダビの夜」と呼ばれるチームミーティングを経て再び結束。バーレーンに連勝して優位に立つと、無観客試合として行われた第5戦の北朝鮮戦に2-0と快勝し、1試合を残して3大会連続の出場を決めた。
2010年南ア大会はオシム氏倒れて岡田監督
日本代表の世代交代を図り「考えて走るサッカー」を浸透させたオシム監督が病で突然倒れる緊急事態。白羽の矢が立ったのが岡田監督の再登板だった。
MF中村俊輔、MF遠藤保仁、DF中澤佑二ら経験豊富なベテラン勢に、MF本田圭佑やDF長友佑都ら北京五輪世代の若手が融合。初戦の敵地でのバーレーン戦を3-2で制した日本は、第2戦でウズベキスタンとドロー。第3戦ではカタールに快勝したものの、最大のライバルとみられたオーストラリアとは引き分け、前半戦を2勝2分けで折り返した。
それでもホームでの第5戦でバーレーンを撃破すると、その後も危なげない戦いぶりで4大会連続となるW杯出場を決めた。
2014年ブラジル大会はザック・ジャパンの攻撃サッカー
イタリアで数々のビッククラブを率いた名将ザッケローニ監督はイタリア人指揮官ながら攻撃的なサッカーを志向した。
MF本田圭佑、MF香川真司、FW岡崎慎司ら海外組が主軸となり、序盤戦はオマーン、ヨルダンに連勝する好スタート。続くオーストラリアには引き分けたが、第4戦でジーコ元監督が率いるイラクに勝利し、第5戦でもオマーンを下して順風満帆の戦いぶりであっという間に王手をかけた。
敵地でのヨルダン戦で敗戦という思わぬ落とし穴があったものの、ホームでのオーストラリア戦を本田圭佑のPKで引き分けに持ち込み、5大会連続のW杯出場が決定した。
2018年ロシア大会は波乱のスタート
知将と呼ばれたハリルホジッチ監督が率いた日本は初戦のUAE戦に敗れ、まさかの黒星スタート。初戦で黒星のチームは「W杯出場確率0%」とも騒がれたが、続く第2戦は敵地でのタイ戦に勝ち、ホームでのイラク戦はMF山口蛍が劇的な決勝ゴールを決めて勢いを取り戻した。
MF原口元気が4試合連続ゴールを決めるなど「新戦力」も台頭し、勝てばW杯出場が決まるホームでのオーストラリア戦では浅野拓磨のゴールで先制すると、井手口陽介が鮮やかなシュートで追加点を決め、危なげない戦いでライバルを撃破。1試合を残して6大会連続でのW杯出場を決めた。
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