圧倒されたファーストレグ
11月10日に行われたアウェイでのファーストレグは非常に厳しい試合だった。
ボール支配で圧倒され、シュート数もアル・ヒラルの22本に対して浦和はわずか2本。アル・ヒラルの圧力の前に浦和は完全に押し込まれ、敵陣にボールを運ぶこともままならず。ロングカウンターを狙おうにも興梠慎三は前線で孤立した。
ポジティブな要素があるとすれば、そのような状況で1失点に抑えたこと。アウェイで0-1であれば、ホームでのセカンドレグ2-0の勝利で優勝。1-0でもそのままホームで延長に突入することができる。
ファーストレグは守護神西川周作が出場停止となり経験の浅い福島春樹がゴールマウスを守るという難しい試合だったが、その福島は前半にあったCKからの決定機をスーパーセーブ。もしここで失点していればそのまま大量失点の可能性もあっただけに、大きな価値があるスーパーセーブだった。
セカンドレグに挑む浦和のゲームプラン
迎えたセカンドレグ。ファーストレグの内容を見る限りセカンドレグも厳しい試合になるだろうことは十分予想できた。
浦和のセカンドレグのゲームプランで最も優先されることは無失点で抑えることだった。たとえ1点であっても失点してしまうとアウェイゴールの関係で3得点以上が必要になる。これだけは絶対に避けなければならない。
その上で90分のどこかで1点を奪うこと。もちろん2得点を奪い90分で試合を決めることができれば最高だが1-0でも悪くない。チームを後押ししてくれる埼玉スタジアム2002の大観衆の前で延長を戦うことができることは十分ストロングポイントになるからだ。
これらを踏まえると浦和がこの試合で最も警戒しなければいけないのがアル・ヒラルのカウンター。ホームで勝利しているアル・ヒラルはリスクを負ってまで攻める必要はない。そのため浦和はボールの失い方には注意する必要があった。
サイドの勝負で上回ったアル・ヒラル
立ち上がりの浦和はファーストレグに比べると積極的な姿勢をみせた。青木拓矢とエヴェルトンの守備的MF2人はアル・ヒラルの守備的MFに対しても激しく圧力をかけデュエルでも互角以上の戦いを見せていた。
そして攻撃で勝負するのは、関根貴大と橋岡大樹の両サイド。この2人はドリブルで仕掛けることができる。さらにこの2人を前に出すことができれば、例えここでボールを失ったとしてもカウンターを受けるリスクは少なくなる。
しかし、この浦和の戦い方に対して、アル・ヒラルはお見通しと言わんばかりの万全の対応を見せる。関根と橋岡に対してSHとSBで挟み込むように対応することでフタをし、さらにカウンターで背後を狙うことで前に出させないようにしてきたのだ。関根と橋岡は次第に高い位置でプレーする回数が少なくなり何度もボールを失った。そしてここからアル・ヒラルがカウンターを繰り出す回数が増えていった。
試合終盤には1点が必要な浦和はリスクを承知で柏木陽介、杉本健勇と攻撃的な選手を投入し、興梠が中盤に下がり起点となるプレーを見せるものの、試合を決定づけたのはやはりアル・ヒラルのカウンターだった。
アンドレ・カリージョが起点となりサレム・アルドサリのゴールで74分に先制すると、アディショナルタイムにもカリージョからバフェティンビ・ゴミスが決めて0-2として試合終了。
浦和レッズはアル・ヒラルに敗れ3度目のアジア制覇はならなかった。
これまでのACLでは中国のチームを中心に、強力な外国人選手数人とそれを支えるその他の選手という比較的役割分担がはっきりとしたチームが多かった。しかし、今回優勝したアル・ヒラルはアンドレ・カリージョ、セバスティアン・ジョビンコ、バフェティンビ・ゴミスの3人がチームのタスクをしっかりと受け持ち、その中で違いを見せることでプレーの幅を広げていた。
2年前の2017年に決勝でアル・ヒラルを破り2度目の頂点に立った浦和。3度目のアジア王座に迫ったが、再び立ちふさがったアル・ヒラルのチームとしての質、完成度の高さを前にあえなく屈する結果となってしまった。