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サッカーYouTuberのLeo the football氏が著書出版、情熱を助ける理屈のサッカー論

Leo the football,KADOKAWA提供
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KADOKAWA提供

6月2日に「蹴球学」発売

サッカーYouTuberとして活躍しているLeo the football氏(36)が著書「蹴球学 名将だけが実践している8つの真理」を6月2日に株式会社KADOKAWAより発売する。チャンネル登録者数は22万人を超え、日本代表選手や現役Jリーガーも出演するほど、そのサッカー理論は一目置かれており、東京都リーグ4部「シュワーボ東京」の代表兼監督も務めている。

「正対理論」や「サイドバックは低い位置で張るな論」など独自の理論を凝縮した著書を出版するにあたり、その苦労やサッカーへの情熱、将来の夢などを聞いた。

――サッカーを好きになったきっかけはあったんですか?

Leo the football(以下Leo):高校の時にWWEというプロレスを見たくてスポーツ専門チャンネルのJ sportsに入ったらラ・リーガ(スペインリーグ)の中継をやっていて興味を持ちました。ルイス・エンリケとかカルレス・プジョルとか、魂を出しながら戦うみたいな選手たちがいて。一人一人のキャラが立ってるというか、サビオラとかクライファートも好きでしたね。

――実際にサッカーをされたご経験はないんですか?

Leo:サッカーはこの仕事を始めてから、30歳ぐらいからやってます。学生時代はバスケでしたね。

――そこからどんな経緯でYouTuberに至るんでしょうか?

Leo:福島県の高校を卒業後に上京して「バウンサー」というコンビで芸人をやってました。28歳くらいまでやってたんですが、友達のちゃまくんというゲームYouTuberのチャンネルでサッカーゲームの「ウイニングイレブン」を取り上げたら、リアルなサッカーの質問が来るから僕が代わりに答えるという企画をやっているうちに、僕のファンも増え始めて独立することになりました。

――実際にYouTuberとして生計を立てていこうと考えるきっかけは?

Leo:コンビニのバイトの休憩中にユーロ2016だったかな、試合を観て分析して自分のチャンネルで喋ってたんですけど、いっぱい試合を観たいんで3時間ぐらい休憩を取って、監視カメラの死角になるところでずっとサッカーを観てたのがバレてクビになったんです。その頃はYouTubeを毎日1本上げていて、生活費の半分くらいをバイト代で賄ってたんですけど、クビになって新しいバイトを探すよりも毎日2本ずつ上げようってなったのがYouTubeだけでご飯を食べるようになったきっかけですね。

――お笑いでの経験もYouTuberとしては活きてますか?

Leo:学生の頃から弁論大会とかプレゼンの授業とか得意で、人前で喋ることに緊張がなくて、プレッシャーを感じないタイプなんですよね。YouTuberは本来ならうまく喋れてるか大丈夫かなと思う仕事ですけど、僕の場合は自分が大丈夫かどうかより伝わってるかどうか。僕がかっこよく見えてるかどうかは正直どうでもよくて、伝わってるかどうかが大事なんです。メンタルが培われたというより、お笑いと今の職業、両方に向いてた感じですね。

夢は「シュワーボ東京」でクラブワールドカップ制覇

――著書執筆にあたって一番苦労した点は?

Leo:スポーツライターの木崎伸也さんという僕がすごく信頼してる方に構成をやっていただいたんで、本になった時に分かりやすくなってたのと、木崎さんにも伝え切れてない部分はさらにブラッシュアップしたんで苦労しました。木崎さんとだからできた共同作業って感じがしています。

――著書で一番訴えたかったことは何かあるんですか?

Leo:合理的に結果から逆算したり、過程をちゃんと突き詰めるみたいな指導ってあまりないんですね。 部活の罰走とか、体育会系の悪いところみたいな指導をされてる人が9割9分くらいの感じで。サッカーって、これがこうなるからこういう風になるんだよっていうのが詰め込まれてるスポーツなんですよ。なので、情熱は日本でサッカーを続けてる人みんなにあると思うんですけど、その情熱の歯車が噛み合うには理屈が必要なんで、情熱を助ける理屈の大事さを伝えたかったです。

――なるほど。

Leo:技術論で言うと、日本では正対という理論がおろそかにされてるんです。ボールを持ってる人が一番近い相手にへそを向けて、選択肢を多く確保するっていう。メッシだったり、ベルナルド・シウバだったり、イニエスタだったり、うまい選手はみんな使ってる技術です。

日本だと技術的な指導に長けてる人でもそれを指導しないせいで、ボールを持ってる選手がパスの出し先がバレてるとか、ドリブルの速い選手が寄せられて失うみたいになるんですよね。日本人が損してる部分って技術面や戦術面でめちゃくちゃあるんですよ。日本人は頭いいけど、それを使い切れてない。日本人のポテンシャルをもっと引き出せるような、理屈でみんなの上限値を上げるような本になってます。

――こういう人に読んで欲しいとかターゲットはあるんですか?

Leo:本気でサッカーをうまくなりたい人、うまくさせたい人、良いサッカーを見抜きたい人ですかね。

――影響を受けた人はいるんですか?

Leo:オシムさんとか、グアルディオラですね。あと、野球だと落合さんとか、やっぱり情熱と理屈をくっつける人たちには影響を受けてますね。結局、組織ってリーダーの質で全部決まると思うんですよ。落合さんは自分の仕事で一番大事だったのはコーチ選びだって言ってるんですよね。コーチたちが仕事するわけだから、その人選を重要視して、コーチの年俸も上げて、仕事のモチベーションを上げてみたいな。

戦術論以上の戦略論というか、オシムさんもペップも落合さんもそういうリーダーとしての振る舞いが一流だと思います。組織を成長させてきた人って、どのビジネスの業界でもそうですけど、すごく学ぶところがあります。

――その辺はシュワーボ東京で実践されているわけですね?

Leo:そうです。最初は監督9:オーナー1くらいのイメージだったんですけど、今はもう監督のテンションでオーナーもやるみたいな感じで、選手獲得だったり、スポンサー獲得だったり、環境の改善とか。選手一人一人に情熱的に指導するってことだけじゃない方に自分のベクトルを振ろうとしています。

――シュワーボ東京としての目標は?

Leo:掲げてるのはJリーグ参入ですね。1シーズンに1カテゴリーの昇格を目指して戦力を集めてるんですけど、弊害になるのはスタジアムです。収容人数とか規定があってそれを満たすには僕だけの力じゃどう考えても無理なんで。お金も必要ですし、地方自治体の協力も必要ですし、選手を育てるだけじゃ到達できない目標なんで、それをどう解決していくかですね。それらを解決した上で最終的にはクラブワールドカップが目標です。

プライドの高さと低さを併せ持つタイプ

――YouTubeでいろんな選手とコラボもされていますが、プロサッカー選手とお話しすると新たな気付きはありますか?

Leo:上のカテゴリーに行く人ほど、もしかしたら日本人の特徴なのかもしれないですけど、謙虚で自分に矢印を向ける人が多いですね。うちのチームでもそうなんですけど、本当にうまい子だったり、チームを引っ張る子は自分の改善点に自分で気付いて向き合うんですよ。

やっぱり日本人で海外まで行って、代表に入って活躍する人って乗り越えてきた壁の数が異常だと思います。何回でも諦められたと思うんですけど、そこを乗り越えられるのは自分と相手の長所、短所を分かった上で、どこで勝負するか、そこを磨き続けてきた方なんで。やっぱり結果を残し続ける人間はそうなんだろうなと思いますね。

――サッカーからそういうことを学ばれたと思いますが、他に教えてもらった方はいるんですか?

Leo:僕自身がプライドの高さと低さ、両方持ってるタイプなんです。プライドの高さで言うと、失敗した状態で自分を人に見せ続けるのが嫌なんですよ。常に悪いところを直して、次の良くなった自分を見せたいみたいな。逆にプライドの低さというのは、書いている人の顔が見えないYouTubeのコメントや、初めて会った年下の方に言われたことも、確かに! って思ったときは取り入れて修正します。誰が言ってんだっていう気持ちが僕の中に全然なくて、むしろ有益なアドバイスをありがとうって思うのが元々の性格なんですよね。

芸人やってた頃も お笑いライブに出てお客さんにアンケートをお願いすると、つまらないとか、ひどいことを書かれるじゃないですか。素人が何言ってんだって思う芸人がほとんどなんですけど、お金を払って見てくれるのはその素人と言われる一般の方なんで、確かにそうだなと思うものは取り入れてネタ作りに活かしました。プライドの高さと低さが相まって、今の自分ができてるのかなと思います。

――根底には日本のサッカー界を思う気持ちがあるわけですね。

Leo:それは意識してるというより自然とつながるって感じですね。僕の場合は日本代表の選手と繋がりたいとか、本を出したいとか、チームを作りたいというのは別になかったんです。別に僕の情熱じゃなくて、世界は数字や論理でできてたりするんで、その論理と違ってないことを喋ってるだけでそれが刺さった方々からの支援や応援があって遠心力のようなものが生まれているんです。

そうすると賢い人、ちゃんと考えてる人は気付くんですよ。それによってこれからの日本代表が強くなったり、日本サッカーが変わるんだったらそういうものだったと思いますし、変わんないんだったら僕の活動はそれくらいのパワーしかないものだと思うんで。芯はブレずに微調整と進化を繰り返してやってきたら思ってもなかった状況になってるんで、今後それが日本代表とか日本サッカー全体に波及するか、自分の能力を信じてるって感じです。

《プロフィール》
Leo the football(レオザフットボール)本名・名久井麗雄。1986年11月18日、福島県出身。登録者数22万人を超えるサッカー戦術分析YouTuber。日本代表やプレミアリーグを中心とした欧州サッカーリーグの試合分析が目の肥えたサッカーファンたちから人気を博す。サッカー未経験ながら独自の合理的な戦術学を築き上げ、自身で立ち上げた東京都社会人サッカーチーム「シュワーボ東京」の代表兼監督を務める。

蹴球学

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