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サッカーにおける飛び道具とは
日本サッカー界で、主に高校サッカーとJリーグで「飛び道具」の重要性が増している。
飛び道具とは一般的に、遠方からの射出によって目標を攻撃する武器のことを指す。サッカーにおいてはロングスローで一気にゴール前へ相手ゴールに迫ったり、直接FKやミドルシュートなどでゴールを陥れること、また直接ゴールに迫らなくとも圧倒的な武器を表すこともある。
これらのうち高校サッカーではロングスローが、Jリーグになるとより幅広い範囲のものが存在感を高めつつある。
高校サッカーにおけるロングスローの増加
高校サッカーにおいてロングスローが話題となったのは、2015年度の第94回全国高校サッカー選手権だった。3位となった青森山田高校が、計12ゴールのうち実に5つを原山海里のロングスローから生んでみせたのだ。
さらに翌年、2016年度のこの大会では郷家友太（現ヴィッセル神戸）のロングスローから計3得点に繋がり、青森山田は初優勝を飾った。ここから高校サッカー界で、ロングスローの存在感は急激に高まっていく。
2020年度、第99回全国高校サッカー選手権で準決勝まで勝ち抜いた4チームに至っては、その全てがロングスローを試みていた。そして潮流を生んだ青森山田はこの大会でも、3回戦の帝京大可児戦でロングスローから3得点を決めている。
なぜこれほどまでに流行しているのか。これが有効だからというのはもちろんだが、高校サッカーならではの理由がある。
高校生であるためプロに比べるとGKやDFの身長が低い。GKでいえば2021年度のJ1リーグの平均身長は187.0cm、第100回全国高校サッカー選手権大会の平均身長は177.8cmと10cm近い差がある。
プロと比べるとスキルも低い。守備側が大きくクリアできない場面が多く、攻撃側が体格や身体能力で上回って混戦を作りさえすれば大きなチャンスに繋がりやすいのだ。
青森山田の場合は高身長の選手が多く、コーナーキックやフリーキックと同じように形をしっかり作り上げているため余計に得点に繋がっている。
Jリーグで飛び道具が必要な理由と実例
Jリーグにおいてもロングスローが話題になることがある。2011年、ジェフユナイテッド千葉はマーク・ミリガンが投げたボールを204cmを誇るトル・ホグネ・オーロイに合わせる形を積極的に狙い、第8節のFC東京戦では実際に得点に繋がっている。
直近では昨年11月21日、J2リーグ第40節の愛媛FC対SC相模原戦では相模原の梅井大輝が投げたボールがゴールキーパーのオウンゴールを誘い、驚きの声が上がった。また藤田直之（サガン鳥栖）、片山瑛一（清水エスパルス）らはロングスローの使い手として有名だ。
年々少しずつ競技レベルが上がっているJリーグでは守備面での安易なミスが減少している。攻撃側のスキルや連携によって守備網を崩すことを強いられるが簡単なことではなく、様々な飛び道具が必要となってきている。
拮抗した試合こそ、良い意味で「試合を壊す」武器の有無が勝敗を分けることになるのだ。つまり飛び道具とは「ほとんどの選手が得点できない局面で、得点に繋げられる力」ということになる。
昨年でいうと、第4節のヴィッセル神戸戦や第6節の鹿島アントラーズ戦で強烈なシュートによって決勝ゴールを決めた稲垣祥（名古屋グランパス）。
第21節の柏レイソル戦で猛烈なスプリントによってGKのミスを誘い、第35節のFC東京戦では独力で持ち込み決めた前田大然（現セルティックFC=スコットランド）。
第26節で川崎フロンターレにシーズン初黒星を付ける一撃を放ち、第37節のベガルタ仙台戦では先制点を決めたジョルディ・クルークス（アビスパ福岡）などが当てはまる。
こういった武器がないチームは得点数が増えにくくなり、不確実なものに頼る必要が出てくる。2021年のJ1リーグで得点数の多かった3チーム（横浜FM、川崎F、神戸）と、少なかった3チーム（横浜FC、仙台、大分）の得点数におけるこぼれ球から生まれた割合を比較すると、多かった3チームでは約7.2％、少なかった3チームは約13.8％と大きな差となっている。
紙一重の試合の決着を付けられる選手を有しているかどうか、に着目するとサッカーの楽しみ方が1つ増えるのではないだろうか。高校サッカーにおいてもJリーグにおいても、競技レベルが上がるに比例して今後さらに重要性を増していくに違いない。
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