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サッカー「ハンド」の解釈変更、故意かどうか主審が判断

2021 6/4 06:00梶井誠
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Jリーグでは6月19日から適用

サッカーのルールは、競技規則を統括する国際サッカー評議会(IFAB)が決定し、全世界で適用されるが、2021-22シーズンの競技規則改正で、「ハンド」の反則の解釈が変更になった。サッカーに熱いサポーターなら、またハンドの規則が変更?と思うはずだ。

今回のハンドの改正の一番のポイントは、「手や腕にボールが当たったとしても、その全てが反則になるわけではない」という原則が明示されていること。つまり、手に触れても得点となるケースが出てくるわけで、選手がボールに触れたのが意図的なのか、偶然なのかを主審の判断にゆだねるという、難しいジャッジのシーンを目にすることとなる。

ただ、意図せずボールに触れた場合でも、攻撃している選手が自分の手や腕に当たって直接得点した場合や、攻撃している選手が自分の手や腕に触れた直後に得点した場合はハンドの反則を取られることがある。

この改正は、Jリーグでは6月19日(土)から、今月のU-24日本代表となでしこジャパンの国際親善試合でも適用される。

そもそも「ハンド」はなぜ反則なのか?

「手に触れても得点となるケース」というと、アルゼンチン代表のディエゴ・マラドーナによる、1986年ワールドカップ・メキシコ大会準々決勝の「神の手」ゴールを思い出さずにはいられない。ゴールシーンばかり切り取られて有名だが、実は相手のイングランドの選手が酷いラフプレーを続けていて、それが爆発して神の手ゴールになり、2対1で勝利したというのも今ではサッカー史に残る伝説のようになっている。

マラドーナの例を出すまでもなく、サッカーで「なぜ手を使ってはダメなのか?」という問いに正確に答えられる人は少ないだろう。サッカーのルールは19世紀に英国で定められ、ルールに「ボールを手に持って運んではいけない」「ボールを投げたりパスしてはいけない」「試合中にグラウンドからボールを拾い上げてはいけない」と明記された。

つまり、手を使ったら反則となるが、このルールの真逆のスポーツがラグビーというのも面白い。サッカーとラグビーが兄弟スポーツといわれる由縁だ。

手や腕が肩の位置以上の高さにあった場合は反則

今回のハンドのルール改定をみると、「手や腕を用いて競技者の体を不自然に大きくすること」「競技者の手や腕が肩の位置以上の高さにあった」場合に反則とするという条文が新設。ハンドかどうかを判定する基準の一つとして、選手の動きと手や腕の位置との関係性を重視し、主審が状況に応じてその妥当性を判断することとなった。

要するに、ボールが手や腕に触れたことが“故意かどうか?”を瞬時にジャッジするわけで、これはVAR(ビデオアシスタントレフェリー)をもってしても判断は至難。試合の流れを常につかみ、これから起こるであろうプレーを先読みすることに長けた審判団に委ねるという、VAR化=テクノロジーとは逆行するエモーショナルな復権ともいえよう。

たとえば0-0の後半40分、相手FWのシュートを味方DFがブロックし、そのリフレクションが相手選手の手や腕に触れた後のこぼれ球を相手FWが押し込んだ場合は、ハンドの反則は取られない可能性がある。サポーターの心情としては、相手選手の手や腕に触れたシーンで「ハンド!」と叫びたいが、ルール改定後は得点を認めざるを得ないかも知れない。これまでの観戦常識で見ていると、しばらくモヤモヤが増えそうだ。

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